【連載/ウワサの映画 Vol.11】傑作ミステリーを映画化。新生・名探偵ポアロVS豪華な容疑者たち!
東海ウォーカー
小説発行部数は全世界で20億冊以上!という「ミステリーの女王」アガサ・クリスティの代表作が、1974年に続き2度目の映画化となります。”スベらない人”として個人的に信頼を寄せるケネス・ブラナーが監督・主演、さらにジョニー・デップら豪華共演陣にも期待がふくらむエンターテインメント大作です!

ケネス・ブラナーといえば、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーなどの舞台で活躍し、映画でも「ヘンリー五世」「ハムレット」などを手掛け、監督・俳優としてキャリアを積んできたイギリスが誇る逸材です。近年監督した「マイティ・ソー」や「シンデレラ」といった米国産娯楽作品も、”Sir(サー)”の称号を持ち、古典のいろはが染み付いた彼の手にかかって、そこはかとない重厚感をまとっていましたね。商業映画化を嫌っていたというアガサがご存命なら、ケネスによる映画化を許可したんじゃないかな~、と勝手に推測。

ストーリーをざっくり言いますと…。トルコ発フランス行きの寝台列車・オリエント急行の客室で、富豪・ラチェット(ジョニー・デップ)が刺殺されます。そこに居合わせのは、国籍も身分もさまざまな乗客13名と、“世界一の探偵”エルキュール・ポアロ。大雪により橋の上で立ち往生した列車の中で、ポアロは容疑者となった乗客全員と対峙し、衝撃の真相を導き出します…。

ジョニー・デップが被害者としてあっさりと殺されてしまうのも、配役の妙ですねぇ。下品で狡猾な成金ヤロー(言い過ぎ?)を実にいや~らしく演じるデップですが、やっぱりねぇ、彼はこういうクセ者役でこそ光るんです!

容疑者役の豪華キャストVSケネスのタイマン事情聴取も緊迫感満点。「スター・ウォーズ」新シリーズのヒロイン役で注目されるデイジー・リドリー&ジュディ・デンチの新旧イギリス女優をはじめ、ミシェル・ファイファー、ペネロペ・クルス、ウィレム・デフォーらがウソつき放題!、静かな闘志を燃やしてポアロを揺さぶります。モノクロでつづられるクライマックスの哀しくも美しい犯行シーンに、誰がどんな風に登場するのかは…、お楽しみ!

1974年のアルバート・フィニー版ポアロは、”鼻持ちならない”という設定を通り越して、変人感が強すぎた印象でした。代わってケネスは、愛嬌もある、人間味の増したポアロ像に仕上げています。ネクタイの歪みや朝食の玉子のサイズにケチをつける神経症的・偏執的な変人っぽさも忘れてません。”抜群の推理力と引き換えに人間性をある程度犠牲にしている”のがポアロというキャラ。でも今作では「白か黒で、中間はない」という確固たる指針が、正義と悪の狭間で揺れ動いていくさまを描き深みを持たせました。”列車”という舞台にも通じる限定空間も、まさにケネスの独壇場!真相に迫るにつれて彼の”威厳”が濃厚に充満していきます。特大サイズの口ヒゲもなかなか付けこなせるもんじゃないですよ(笑)。あのヒゲ面でジョニー・デップが泣かせる演説をしたら…、笑いをこらえられませんからねぇ。

エルサレムの嘆きの壁に始まる”旅の興奮”も本作の醍醐味です。ベルギー人であるポアロをはじめ、各国出身者による訛った英語が飛び交い、イスタンブールの駅では、豪奢な列車に乗り込んだ客を窓越しに追うカメラワークが旅立ちの高揚感をあおります。失われた1930年代の景色に迷い込み、一生乗れないかもしれない夢のオリエント急行に同乗しているようで、気分がアガっちゃいますよ。そしてラストでは「ナイル殺人事件」の勃発をにおわせています!続・ポアロの推理旅行に期待です。【東海ウォーカー】

【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします! 最近のお気に入りは上記「オリエント急行殺人事件」のトム・ベイトマン!
おおまえ
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