2年前に母を看取り、今度は父の「延命措置」の選択を迫られる娘… 一人っ子が抱える「親の介護と死」の現実【作者に聞く】
東京ウォーカー(全国版)
右耳難聴や子宮内膜症など、自身の体験をコミカルな漫画で描くキクチさん(@kkc_ayn)。彼女の作品のなかでも、母親の自宅介護と看取りをテーマにしたコミックエッセイ『20代、親を看取る。』は、自宅介護の現実や、親との死別と向き合う中で揺れ動く感情が描かれ、大きな反響を集めた。
母を看取ってから約2年後、今度は父が病に倒れてしまう話だ。母の介護・看取りを経たことで落ち着いて対応できることは増えたものの、あのときとは違い、一人っ子として頼れる家族がいないなかで、さまざまな決断を迫られることになるキクチさん。今回は、今後の延命措置という重い選択に、彼女がどう向き合ったかを描いたエピソードを紹介する。
「生きる」と「生かす」の違い…延命措置という重い選択
病院から延命措置をするかどうか、意思確認の電話を受けたキクチさん。過去に父と交わした会話が頭をよぎるが、その重い決断を父の代わりにする精神的な負荷は大きかった。
「まず、延命措置が何なのか全くわからないですよね。延命=生きるってことだから、そりゃ生きてほしい。でも医師と電話で話していくうちに、延命措置というのは『生きる』というよりは『生かす』に近いのかもと感じ始めました。このあたりの認識は人によって価値観が異なるので、何が正解という訳ではないことは前置きしますが、どこからが『生きる』でどこからが『生かす』なのか、私にはわからなくて混乱しました」と、キクチさんは当時の心境を語った。
「植物状態」や「医療殺人」といったセンシティブな言葉が続く。命を預かる病院側は日常的な確認作業だと理解はできるが、もう少しこの選択の難しさに寄り添ってほしいと感じる部分もあった。「『延命についての意思』を電話や書面でサラッと確認されることが驚きでした。こちらとしては時間をかけて考えたいのに、『とりあえずでよいんで』みたいな軽いテンションで答えを催促されてしまって(実際はそんなつもり無いのでしょうけど)、そんな簡単なことなのかと病院側との温度差を感じました。ビジネスの場ですら、悩むような議題があれば『一旦持ち帰らせてください』って言うのに」と、病院との価値観のずれに戸惑った。
「でも、いつ急変するかわからないから『返事は1週間にします』が、まかり通らない世界なんですよね。それはそれで理解できる事情なので、複雑な心情でした」
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