まだまだ知られていない新ジャンル、シンクロナイズドスケーティングの魅力に迫る!

東海ウォーカー

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シンクロナイズドスケーティング、という競技をご存じだろうか。ドリーム・オン・アイスなどのアイスショーをご覧になった方ならば、演技を観たこともあるだろう。また最近では、世界選手権のエキジビションなどで、世界トップレベルのチームが出演しているのをご存知の方もいるかもしれない。ただ一般的なフィギュアスケートファンの間ではまだまだ未知の競技といった印象だと思われる。だが北米、ヨーロッパを中心とした海外、特に強豪国であるカナダ、フィンランドなどではポピュラーな競技として人気を博し、近い将来、オリンピック正式種目への採用を目指している注目の競技でもある。今回はこの連載では初めて、シンクロナイズドスケーティングを取り上げたい。

シンクロナイズドスケーティングの魅力とは?


都民体育大会にて、神宮Ice Messengersの演技


11月26日、ダイドードリンコアイスアリーナ(東京、東伏見)にて開催された都民体育大会において、シンクロナイズドスケーティングの競技も開催された。今回のシンクロ競技はオープン大会として開催され、従って人数が規定に達していないジュベナイル(ノービスよりも下の年代)のチームも参加しており、神宮Ice Messengersのジュベナイル、ノービス、そしてシニアと、3世代のチームの演技を拝見することができた。試合後、貸切練習を見学させていただき、志尾佳津子ヘッドコーチ、関口知代コーチにお話を伺った。まずはシンクロナイズドスケーティングならではの魅力を、ファンに伝えるにはどう説明すれば良いだろうか?

志尾先生:「シングルと違って人数が多いことから、迫力、スピード感があります。それが大きな魅力です。シンクロナイズドスイミング、新体操の団体演技、それをスケートで行うもの、とも言えます」

オリンピック正式種目を目指して


現在、ISUはシンクロナイズドスケーティングをオリンピックの正式種目にしたい、との考えから活動を続けており、IOCから認められるためにはよりレベルの高い競技にしなければならないため、年々、その内容はハイレベルになってきている。以前は、選手同士が手をつないで円を作る、列を作る、車輪のように回転する、選手と選手の間をすり抜ける、などの要素が主だったのだが、現在はフィギュアスケートのペア、アイスダンス、そしてシングルのエレメンツも要求されるようになってきている。四人一組でのリフト、ペアのデススパイラル、アイスダンスのステップ。そして“クリエイティブ”というエレメンツには、ジャンプ、スピンも含まれる。一昔前とは別物とも言えるほど、より競技性の高いものに変貌を遂げつつある最中だ。しかし前述の通り、2022年、北京オリンピックでの正式種目採用を目指しているのだが、その見通しは決して楽観できるものではないようだ。

志尾コーチ:「ワーキンググループを作って活動していますが、現状では、五分五分か、若干厳しいか、という見通しです」

オリンピック種目として認められるには、ルール面なども含め、まだまだ練り上げなければならない課題が山積しているとのことだ。

日本のシンクロナイズドスケーティングを取り巻く環境とは?


都民体育大会にて、神宮Ice Messengers(ノービス)の演技。将来、彼女達が日本代表の屋台骨を支える時が来るのだろう


日本は現在、世界で8番目のポジションだという。都民体育大会の翌週には上海で国際大会が開催されたのだが、これは世界の上位5か国が出場する大会とのことで、日本は残念ながら招待されることはなかった。世界でのランキングを上げ、より多くの大会に出場できるようになることが急務なのだが、その前には大きな問題が立ちはだかる。競技人口の少なさだ。

関口コーチ:「現在、日本ではシニアのチームは神宮Ice Messengersの1チームのみです」

そのため、全日本シンクロ選手権は開催前から優勝が決まっている状態なのだ。今年のチームも、最近になって17人に増えたという。世界選手権では1チーム16人構成で試合をするので、ようやくその人数をクリアできた形だ。とはいえ新加入のメンバーはまだプログラムをこなせない状態のため、都民体育大会では12人構成のチームとして競技をしていた。もっとも、明るい材料もある。

関口コーチ:「全国に段々とチームが増えてきているんです。全日本シンクロの前日に、ジャパンオープンというオープン参加のイベントがあるんですが、こちらの参加チーム数は少しずつ増えています。そこから、全日本シンクロへの参加を目指すチームが増えてくれることを期待しています」

神宮Ice Messengersでシンクロを経験したOG達が、全国各地でシンクロチームの立ち上げを行っており、そうした地道な努力が、少しずつ成果を発揮しつつある。ジュベナイルという、ノービスよりも下の年代の子供達の競技者が少しずつではあるが、全国に育ってきているのだ。そしてひとつの明るい光明を、この都民体育大会で見出すことができた。神宮のノービスチームが、16人構成で試合に参加したのだ。

志尾コーチ:「今季、ノービス世代が16人構成でチームを組めたのは、昨年までジュベナイルチームを組んでいた子達がノービスに上がって16人になっているからなんです。シングルからシンクロに転向するのではなく、最初からシンクロの面白さに興味を持ってスケートを始めてくれる選手が増えることが理想です。それを狙って、ジュベナイル世代からの育成を始めているんです」

今回のノービスチームは、さすがに幼い年代からシンクロをやってきただけあり、息の合った演技を披露していた。この選手達がいずれジュニア、シニア、と順調に成長してくれたなら、と期待を抱かせてくれる内容だった。

志尾コーチ:「そういう体制が整ってくれば、毎年シニアチームの選手集めに苦労しなくても済むようになる。それが理想なんです」

実際、フィンランド、カナダなど、海外のシンクロ強豪国は皆、その体制が確立している。いずれもシニアのトップチームは片手で数えられるほどしかないのだが、下部組織としてのジュベナイル年代のチームは全国に数百もあるそうだ。日本ではまだ育成の緒に就いたばかりだが、全国各地で始まりつつある新規チームの編成が、いずれは日本代表チームへの選手の供給源として大きな力を発揮することになるはずだ。

まずは演技を観てもらうこと。そのために


シンクロナイズドスケーティングの抱えるもう一つの問題点。それはフィギュアスケートのファンが興味を持ち、演技を観たいと思っても、なかなかその機会がないことだ。テレビ放送での露出は極めて少なく、各地で行われる発表会などのイベントも、チームのFacebook、ツイッターなどでしか告知されないことが多く、情報源が乏しいのだ。そこで、この連載のまとめサイトの一角にて、シンクロナイズドスケーティングのイベント情報の告知を行うことを検討している。競技関係者、そしてファンにとっての一助となれば幸いだ。この記事が公開されてすぐの話で恐縮だが、12月1日(金)、17:00より横浜市中区の赤レンガ倉庫にて、神宮Ice Messengersの演技披露が予定されている。都民体育大会の終了後に行われた貸切練習では、赤レンガ倉庫でのイベントのためのエキジビションナンバーを繰り返し練習していた。クリスマスソングを用いた華やかなプログラムに仕上がりそうだ。ご都合のつく方は、是非会場に足を運び、迫力ある生の演技をご覧になっていただきたい。シングル、ペア、アイスダンスとはまた違った、シンクロナイズドスケーティングの魅力を知ることができるだろう。

【東海ウォーカー】

中村康一(Image Works)

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