OFFICE SHIKAの新シリーズ「REBORN」企画始動!  鴻上尚史の名作に挑む、演出家・菜月チョビを直撃

関西ウォーカー

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1980年代の小劇場ブームの立役者・鴻上尚史の名作に、菜月チョビ(左)が挑む!


2013年10月、劇団鹿殺しの座長・演出家を務める菜月チョビの文化庁海外派遣制度による1年間のカナダ留学に伴い、プロデュース公演を始めた「オフィス鹿」。歌手Coccoやボーカリスト松岡充を迎えての公演などを重ね、Vol.6となる今回は「REBORN」が始動。「名作は、死なない」をキャッチフレーズに、過去の名作を掘り起こす新シリーズとして立ち上がった。当初、座長・菜月チョビの海外留学のタイミングからスタートした「オフィス鹿」プロデュース企画は、今回が菜月チョビの初プロデュース作品となる。初プロデュースのテーマを、REBORNとしたのはなぜなのか。第一弾の名作を鴻上尚史の「パレード旅団」にしたのはなぜか。その理由や作品への思いを、聞いてみた。

“名作の復活”をテーマにした理由とは


―今回、菜月さんの初プロデュース作品なんですよね?

「そうなんです。劇団公演じゃなくて、オフィス鹿が今まで色々プロデュース企画をやってきているんですが、私が演出として参加するのは初めてで。今までは全部マルさん(劇団鹿殺しメンバー、脚本家・丸尾丸一郎)の企画ばかりなんです。特にオフィス鹿プロデュースは丸尾がやる、と決めているわけではないんですけど、作が丸尾、演出が私というのが劇団鹿殺しの公演なので、そうではない作品はそれぞれ色を付けて、オフィス鹿プロデュースってしていたんです。たまたま今まで丸尾の企画が採用されて、みんなでオフィス鹿プロデュースで何かしたいね、こんな方からお声掛けいただいているよという時に、マルさんか私のどっちがやる?ってなるんですが、だいたいマルさんが行くので、私がオフィス鹿プロデュースで演出するのは本当に初めてで」

―初プロデュースのテーマに、名作復活の「REBORN」を選ばれたのはどうしてですか?

「そうですね。私もオフィス鹿プロデュースでそろそろ何かやってみなよって言ってもらう中で、じゃあ何がしたいかなーって考えた時に、劇団公演は最初の何をやるかというゼロの時点から、最後書き上げるまで丸尾と一緒にやっていくんですけど、そこが違うようになるっていうのが一番冒険だよねって。あと、鹿殺しも再演はやるんですけど、何となく演劇界にある新作至上主義な感じに、若干逆切れというか(笑)。再演だからって、まだ見てない人がいるんだもんっていう。演劇ってその期間だけのものだから、見られない方もたくさんいるじゃないですか。届けたいっという想いや、すごいエネルギーをかけて作っているので、ぜひ観てもらえるもんならたくさんの人に観て欲しいっていう気持ちがあるんですけど、なぜか再演はダメっていう(笑)。過去に観れ見れてない作品を今観るっていいものだなと思いますし、私自身が観たいという気持ちもあり、この「REBORN」という企画を立ち上げました。」

第一弾に鴻上尚史の「パレード旅団」をなぜ選んだ?


―大変申し上げにくいのですが、私は演劇に詳しい人間ではなく、名作と言われる作品を通らずにきてしまったところ劇団鹿殺しに出会い、私が思っていた演劇とは違うなと思い、そこからずっと見に行っています。ひとつのエンタテインメントというか。公演時間も2時間程で、すごい楽しい、もう少し見たいって思うぐらいでバッと終わる感じの、あの面白さがすごく好きで。だからこそ、名作を菜月さんがどういう風にやっていかれるんだろうっていうのが、本当に楽しみです。菜月さんが演出されるのであれば、私も名作に触れることができるのではないかと期待をしておりまして(笑)。第一弾に鴻上尚史さんの「パレード旅団」を選ばれたのはどうしてですか?

「元々、鴻上さんのように名前が知られていて、でも実際に見たことがなくて、イメージでしか知らないっていうものを、見やすい形で届けたいっていうのもありますし、鴻上さんご自身は最近割と新作をやられているので、鴻上さんの昔の作品を見逃した方にも届けたいなっていうのもあったんです。なぜ、数ある作家さんの中から鴻上さんなのかというと、私が初めてみたお芝居が鴻上さんのお芝居だったから、ですね。それこそ、お芝居とは一体なにか、どんな顔の人でどんなハートの人間がやるのかも分からないみたいな状況で観たお芝居だったので。こうやって過去の作品を具現化する時の1発目にはこれがやりたいなって。私としての演劇との出会いだったので、これが出会いになる人がいたら良いなという思いで選びました」

―初めて「パレード旅団」を見た時の感想はどういったものでしたか?

「そうですね、いじめられっこが全国から逃げて来て、集まったひとつのお家のなかで起こることと、関係性が希薄になってしまったすれ違いの家族というのを、全く同じ役者が行き来しながら演じてて、2つの世界が交ざっていくような話になっているんです。セットもチェンジしないのに場所が変わるとか、衣装も全部着替えたり髪型が変わらないのに人が変わるとか、演劇ならではの体験じゃないですか。そういうのも本当に初めて見たので、イマイチ分からなかったんですけど、でも、それを分かろうとするっていう行為自体に、「これが演劇か!」と衝撃を受けて(笑)。何を考えてこんなにくるくる変わったって事にしてるんだろう。“変わった”ってことに全力でしてくるし、こっちも全力でそのように観ようっていう役者と観客の協力体制や、ともに盛り上げて行こうってすることが、なんだかおもしろいなって。これは変わった世界だなって。それでも終盤に鴻上さんのお芝居ですごく良いセリフがぽんと来たりする。2つの世界が錯綜してきて「もうダメだ!展開についていけてない!」って思った頃に、急に反抗期の息子がお母さんに『その場所に先にお母さんが着いたらカレーを作って待ってて』っていう。何がその場所なのか分からないけど、でも息子がお母さんにそういう事言うのは誰でも分かる、キュンとくる瞬間じゃないですか。分からなさすぎて諦めかけた時にぽんって入ってくるセリフで、感情が引き戻されたりとか、あ、わかるかも!ってなったりする。私自身がそういう体験をしたので、それを今回初めてお芝居を見に来る方達にも味わってもらえたらなと思っています。私も見た当時18歳の頃を思い出して、演劇やストーリーが分かることが当たり前だって思わずに、なぜこれで場所が変わったつもりでいられるのか、着替えないけどどうしたらお客さんに役が変わったっていう気持ちを伝えられて、それ自体がおもしろいことだよって伝えられるかっていうのを丁寧に考えて作っていきたいなと思っています。それに、この「パレード旅団」は演劇のルールがたくさん詰まった脚本なんです」

―演劇のテクニック的なことでしょうか?

「そうですね。実際の小道具をドラマのセットのように用意せず、人間の言葉と動きだけで伝えたり、演劇じゃないと成立しないことがたくさん出てくる作品なので。そういうところでもちょうど良いなって思いましたね。あと、鴻上さんの他の作品を何個か大学で読んだりしたんですけど、もっと難しくて(笑)。鴻上デビューには、私はおすすめだなって思う作品なんですよね」

菜月チョビ流の「パレード旅団」とは?


鴻上尚史の名作に挑む、演出家・菜月チョビを直撃!


―やっぱり菜月さんのプロデュースの感じはガッツリ入ってくるのでしょうか?

「うん、そうですね。鴻上さんと私だと演出が全然違うと思うので、おのずとドタドタするかと(笑)。やっぱり鴻上さんはシュっとした感じなので、私の方は血が熱い感じになるのかなって思いますね。これを書いた時の鴻上さんって、実際に放映された映像を見るとすごくシュッとしていて、若いので今より元気が溢れて勢いがあるんですけど、でもやっぱりスタイリッシュで。当時はトレンディ演劇で、鴻上さんの作品を見にデートに行ったりしたそうです。それぐらいおしゃれな作品だったみたいです。でも、あとがきとかを見ると、劇団がすごく売れて劇団員がドラマをはじめ外部出演をたくさんするようになって、さらにもう一段階劇団員も大人になって、少し自立していくような時期に書かれたそうなんです。集団としてすごくくっついていたいけど、もう大人なので少し縛りをゆるくして、みんなに自由を与えながら続けていけたら良いなっていう、そういう願いが込められている作品だなって感じました。若いころの鴻上さんの寂しさというか、劇団に対する願いとか、そういうものが込められているんじゃないかなって感じたんです。そういうところが自分にもつながっていて、そこに共感するような演出になるんじゃないかなと思っています。鴻上さんがやられている頃は、本人の思いは押し殺してスタイリッシュに作り上げられているんですけど、そこにはみんなと感情移入して作っていきたいなって気持ちですね」

―私も大好きな鹿殺しの電車シリーズでは、取り巻く環境が変わったり卒業される方が増えたりしたことなど劇団の歴史が表現されていますが、演劇って生の人が演じてらっしゃるからこそ、演じる方のリアルな感情や演出などが、見ている人に入ってくるのかなと。だから、びしびし伝わるのかなと。感想ですけど(笑)。

「うれしいです(笑)。でも、そうですね。なんかせっかく同じ劇団で同じメンバーでせっかく集団で維持しながらやっているで、そこも作品には込めたいなっていうか、それが込められるから劇団なんじゃないかなって思うので。うれしいです(笑)。伝われって思ってやっていますね」

これからの菜月チョビとしての課題とは?


―今年は、鹿殺しとして演劇教室などいろんな活動をしてらっしゃいますよね?

「個人的には課題として、人見知りがありまして(笑)。こんなに人から愛されたいのに人に心をうまく開けないって言う(笑)。今年の後半からの課題としては、人間が好きっていう自分でいてみようって。色んな人に積極的にかかわっていきたいなって思っていますね。今までは劇団員や出演者募集のWS型オーディションを開催したことはあったんですが、先日初めて演劇教室を開いたりもしてみたんです。どんな人間がお芝居をしているのかちょっと覗いてみたいという方もOKでやってみたんです。鹿殺しの私のワークショップとか、めっちゃこわいじゃないですか(笑)。それなのに、何を思って参加してくれたんだろうとか。そういうことにも興味を持っていきたい、今年はそういった年ですね」

―今回の「パレード旅団」のキャストの方とも、面識があったわけではないんですよね?

そうですね。作品を観たことはあっても、ご挨拶をしたことがあるわけではなくて。「パレード旅団」というカンパニーで、一緒に劇団を作る気持ちでやっていこうと思っています。つの劇団を作るっていうのは苦手だったけど、そういったことにもチャレンジしていきたいなって思っています。自分でもっと出向いていこうと(笑)。」

―REBORN企画はこれからも続ける予定ですか。

「うん。やりたい、続けたいって思いますね。いつとかは決まってないですけど、台本はあるからそこにみんなで集まるっていう、みんなでいちから劇団を作るというのが毎回できるようになったら楽しいだろうなって思います」

―今までの名作を菜月さんがアレンジしてくださることで、私も“演劇を好きな人”みたいになれるんじゃないかと思っています(笑)。

「あはは、演劇を好きな人みたいにね。鹿殺しを観て下さっているお客さまにはそうですね。私も何でも好きってタイプじゃないので、自分の好きなタイプにアレンジして、見てもらえたら良いなって思います」

【取材・文=金山友香】

金山友香

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