コーヒーで旅する日本/関東編|「COFFEA EXLIBRIS」で体感できるスペシャルティコーヒーの“発見、驚き、おいしさ”について

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも関東エリアは、伝統的な喫茶店から最先端のカフェまで、さまざまなスタイルの店が共存する、まさに日本のコーヒー文化の中心地。

東京をはじめ、関東近郊にある注目店を紹介する当連載。店主や店長たちが教える“今、注目すべき”ショップをつなぐ、コーヒーリレーの旅へ。

洗練された下北沢の街並みに溶け込むコーヒーのテイクアウト専門店「COFFEA EXLIBRIS」

第11回は東京都世田谷区にある「COFFEA EXLIBRIS(コフィア エクスリブリス)」。太田原一隆さん、美保子さん夫婦が営むロースタリーで、ご主人はスペシャルティコーヒーの先駆けとして知られる「丸山珈琲」(軽井沢)で腕を磨いた人物。名店で学んだ技術と世界各国から厳選した豆で作り出すスペシャルティコーヒーには、店主が伝えたい発見やおいしさが込められている。今回は下北沢の店舗を紹介。焙煎所を兼ねた東府中の「COFFEA EXLIBRIS kettle(ケトル)」では焙煎や抽出のこだわりを聞いた。

店主の太田原一隆さん、奥様の美保子さん夫婦。写真は「COFFEA EXLIBRIS kettle」

Profile|太田原一隆(おおたはら・かずたか)、美保子(みほこ)
一隆さんは静岡県生まれ。美保子さんは茨城県生まれ。一隆さんは軽井沢の「丸山珈琲」で働き、スペシャルティコーヒーを学んだ後、2005年に独立。同年、前身となる「喫茶ミケネコ舎」を下北沢に開業し、2010年には移転に伴い、店名を「COFFEA EXLIBRIS」(下北沢)に変えて再スタート。2015年に東府中に焙煎所を持つ店舗「 kettle」を開業。美保子さんは信州の料理研究家のアシスタントを経て、お店ではお菓子作りを担当。スタッフと共に2店舗を運営。

コーヒーに大きな変化をもたらしたスペシャルティコーヒーに出合う

店は下北沢駅から「下北沢南口商店街」を抜け、茶沢通りの交差点の先

下北沢の店舗。豆以外にもコーヒープレスなどのグッズの販売も行う

コーヒー生産国に足を運び、買い付け、焙煎する店主の太田原一隆さんに話を聞いた。一隆さんは以前からコーヒーが好きで、自分で淹れたり、店を巡ったりしていたが、コーヒーの世界に本格的に踏み込むきっかけとなったのは軽井沢の「丸山珈琲」だった。「丸山珈琲」といえば、前回の「 maruca coffee 」の加藤さんがコーヒー屋を始めるきっかけとなったお店。

ドリップバックは1個198円ほか。イラストは型絵染作家・関美穂子さんの作品で、コーヒーの産地国をモチーフにしたデザイン

「最初はお客さんとして通っていましたが、『丸山珈琲』がスペシャルティコーヒーに切り替えるタイミングで丸山さんに『スタッフを募集している』と声をかけられました。何かおもしろいことが始まりそうで、『働かせてください!』と即決。最初のスタッフとして働き始めました。『丸山珈琲』と仲間のロースターはその後グループを作り、小規模ロースターのグループがコーヒーの小規模生産者から豆を買い付けるというビジネスモデルを作り、スペシャルティコーヒー業界のパイオニアとなりました。日本のコーヒーが大きく変わるタイミングで、コーヒーの仕事に就けたことはよい経験でした」

店名の「EXLIBRIS」はラテン語でお気に入りの本の見返しに貼る蔵書票のこと。「お客様のお気入りのコーヒー、コーヒー屋さんになれれば」という思いが込められている

「『丸山珈琲』で働き始め、最初に飲んだスペシャルティコーヒーは国際的なコーヒー品評会『グアテマラ・カップ・オブ・エクセレンス』の初開催時の入賞豆のサンプルでした。どれを飲んでも『酸っぱい!でもなんだかおいしい』という印象。そのときに感じた驚きや発見、おいしさをお客様に伝えたい思いは、今にいたる25年間変わりません」

「カフェラテ」(630円)

スペシャルティコーヒーについて、「コーヒーの生産地から、味の評価、抽出、焙煎まで“明治維新”のような大きなパラダイムシフトがコーヒーにも起きていると感じた」と語り、そのおもしろさに一気に引き込まれていった太田原さん。お店では抽出や焙煎に携わり、丸山さんと世界各地で開催されるコーヒーのカンファレンス(展示会)やコーヒーの生産国へ足を運び、買い付けにも同行。2000年ごろを境に徐々に日本にも浸透していったスペシャルティコーヒーを最初から学び、経験を積む重要な時期となった。

風味特性を引き出す焙煎と抽出

イートインスペースがある「COFFEA EXLIBRIS kettle」は東府中駅から徒歩約3分

名店を経て2005年に独立し、「COFFEA EXLIBRIS」としての営業は2010年から。そして2015年には東府中に「COFFEA EXLIBRIS kettle」を開業、それに伴い、焙煎を再開し現在にいたる。

「おいしいコーヒーとその基準を知れたので、お店でもお客様に楽しんでいただきたい。そのためには最初においしいコーヒーを手に入れなければなりません。コーヒーは収穫の際に、コーヒーの実(コーヒーチェリー)が枝から取られますが、その瞬間に味が決まります。赤く熟したコーヒーチェリーではなく、緑色の未熟実や褐色の過熟で収穫されたコーヒーを、焙煎や抽出でおいしくすることはできません」

コーヒーにおいて最も重視するのが生豆の質。質と価格でバランスのよいものを仕入れる

「それでよい収穫、生産処理がなされた高品質のコーヒーを買い付けるために全国のほか3社とともに小さな買い付けのグループを作りました。グループではコスタリカやグアテマラをはじめ、各国の産地に足を運び、高い基準を設けてカッピング(品質評価)を行い、おいしいコーヒーを買い付ける取り組みを続けています。継続的によいコーヒーを買い付けるためのキーワードはシンプルですが『おいしい』。おいしければお客様はリピートしていただけますし、私たちもまた生産者から買うことができます。適正な価格での購買のリピートはコーヒー生産者のモチベーションを上げますので、私たちはまた次回も『おいしい』コーヒーをお客様に届けることができます。そのように持続可能な関係性をお客様とコーヒー生産者と築ければとてもうれしいです。お店ではシングルオリジンからブレンドまですべてスペシャルティコーヒーでそろえています。焙煎は浅煎りから深煎りまで幅広く扱い、お客様の多様なニーズにも応えるラインナップになっています」

【写真】東府中店の開業とともに自家焙煎を再開。コーヒー豆の品質を見極め、特徴を引き出す焙煎を心がける

焙煎で使用する「プロバット5キロ半熱風式」はドラムの蓄熱性があるため、熱をしっかりと豆に伝えることができる。太田原さんが重視する甘味、味の複雑さを表現するのに適した焙煎機だ。「焙煎度合はその豆のおいしさのピークがどこにあるか見極めます。浅いレンジのものもあれば、深煎りにピークがあるものも。そのどちらもおいしいツインピークの豆もあります。煎り止めは秒単位で風味の表情が変わるので気を使います。産地に関してはコスタリカ、グアテマラは足を運び買い付けたものを始め、ほかの産地やブレンドを含め、常時12種類前後のラインナップをバランスよくそろえるように心がけています」

コーヒープレスはよくも悪くも味を全部出し、勤勉なコーヒーの生産者が作ったコーヒーのおいしさをそのままカップに注ぐ淹れ方。「丸山珈琲」時代から貫くスタイルだ

そして同店で特徴として知ってほしいのがコーヒープレスを使った抽出方法。吟味された豆のおいしさをそのまま表現するため、「丸山珈琲」時代から貫くスタイルだ。

「おいしいコーヒーを淹れるためには、最初に良質なコーヒー豆の入手から始まります。焙煎や抽出も大切ですが、コーヒー豆の品質がおいしさに大きな影響を及ぼします。コーヒープレスはコーヒーのカッピングに近い抽出方法で、コーヒーの特徴が最もよくわかり、淹れ方もシンプル。1.粉の量、2.お湯の量、3.湯温、4.抽出時間の4つを正確に計れば、誰でも簡単においしいコーヒーを楽しめます。コーヒープレスの特徴は、コーヒーの香りの成分が溶け込んでいるアロマオイルを漉さずにカップに注げること。注いだコーヒーの表面に浮かぶアロマオイルは、ドリップの約20倍と言われています。好ましい香りや滑らかな舌触りはこのアロマオイル由来であり、品質のよいコーヒーの抽出に適した淹れ方です」

バリスタ兼焙煎士として活躍する中島さん

下北沢店は豆売りをメインにしたテイクアウト専門店で気軽に立ち寄れる場所。バリスタが訪れた人の好みのコーヒーを探すサポートを丁寧にしながら、おいしいコーヒーを淹れてくれる。テイクアウトメニューは旬のシングルオリジンや深煎りの「ミケブレンド」、中煎りの「タマブレンド」の2種類のハウスブレンドなど常時10種類以上のラインナップ。「コーヒービア」(ノンアルコール850円、ジンorウイスキーのアルコール入りは950円)といったオリジナルのメニューもあるのでこちらもぜひチェック。

下北沢店では、おすすめコーヒーの試飲ができる

太田原さんが「丸山珈琲」で出合った「スペシャルティコーヒー」の“発見、驚き、感動“。そのおいしさを伝えたいという強い思いは、今後も変わらず、より多くの人に伝わっていくと感じる一店だ。

「COFFEA EXLIBRIS」

ジンジャービア+エスプレッソの「コーヒービア」(ノンアルコール850円)。下北沢店で販売

太田原さんレコメンドのコーヒーショップは「GLAUBELL COFFEE」

「店主の狩野さんは『喫茶ミケネコ舎』を開業して、すぐにお店に来てくれたお客様。以来20年来のお付き合いになります。共に生産地を巡ったり、情報交換をしたりする仲。私だけでなく、全国に狩野さんのファンがたくさんいらっしゃいます。下北沢の『COFFFEA EXLIBRIS』からも近いのでぜひお立ち寄り
ください」(太田原さん)

・データ
【「下北沢 COFFEA EXLIBRIS」のコーヒーデータ】
●焙煎機/プロバット 5キロ(半熱風式)※「東府中 COFFEA EXLIBRIS kettle」
●抽出/フレンチプレス(BODUM)
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり(500円〜)
●豆の販売/100グラム700円〜

取材・文/GAKU(のららいと)
撮影/大野博之(FAKE.)

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