「ぽん酢」とは別物!鍋用調味料から万能調味料へ!60年で45回の進化を経た「味ぽん」が食卓で愛される理由
東京ウォーカー(全国版)
料理の「さしすせそ」と言えば、砂糖、塩、酢、醤油、味噌のことだが、これらの基本的な調味料以外にも、日常に欠かせない、もはや定番とも言える調味料もある。家庭でおなじみの調味料「味ぽん」もそのひとつ。実は「味ぽん」は2024年に60周年を迎えたロングセラー商品。ミツカンの吉岡真優さんに長きに渡って愛される理由を聞いた。
先輩「ぽん酢」があったからこそ生まれた「味ぽん」
「味ぽん」が誕生したのは1964年。60年以上、食卓に登場してきたベテラン選手で、老若男女問わず幅広い世代に知られ、愛されている調味料だ。ずっとあったからこそ実はあまり気づかれていないが、この60年で時代の変化に合わせて実に45回も進化しているという。
そもそもミツカンでは1960年に、醤油を加えていないシンプルな「ぽん酢」を発売していた。現在でも販売されているが、柑橘果汁に醸造酢を加えたシンプルなもので、鍋料理やフライなどに使うための調味料として誕生した。
そんな折、「ミツカンの7代目中埜又左エ門が博多水炊きと一緒に食べた“ポン酢”のおいしさに感動し、家庭でもこのおいしい“鍋専用調味料”を味わってほしいという思いから開発がスタートしました」(吉岡さん)。そして誕生した “鍋専用調味料”が「ミツカン ぽん酢<味つけ>」だった。先にあった「ぽん酢」に味をつけたものというネーミングで、「1964年11月10日に、水炊き鍋に比較的なじみがあった関西で試験的に発売されました」(吉岡さん)。
それから3年、1967年には「ミツカン 味ぽん酢」と名前を変え、徐々に全国で発売されるようになった。柑橘+酢の酸味に醤油の味わいが加わった「ミツカン 味ぽん酢」は、この時点では鍋(水炊き)を食べるための調味料だったことから、味が薄くならないように醤油がかなり強めだった。さらに、発売はしたものの売れるまでには時間がかかったという。「関東では当初、水炊き鍋を家庭で食べる習慣が少なかったため普及がなかなか進まず、営業担当者が屋台カーを用い、東京・築地の卸売市場で“味ぽん付き水炊き”を振る舞うなどの体験プロモーションで拡販を図りました」(吉岡さん)。今では考えられないような地道な普及活動を続けたことで、少しずつその味が知られるようになり、全国へと販路を拡大した。
1968年にはテレビCMで水炊き×「ミツカン 味ぽん酢」を提案。もともと水炊き鍋を食べていた関西圏だけでなく、水炊き鍋の“つけだれ”としての「ミツカン 味ぽん酢」のイメージが定着していった。しかし、鍋用調味料=冬場の調味料となり、鍋料理を食べる機会の減る春夏は「ミツカン 味ぽん酢」の需要も大きく下がった。一方で、一部では季節に関係なく使用されているという事実も。その理由を探るべく「ヒヤリングを重ねたところ、鍋以外の“つけ・かけ”でも使われていることがわかりました」(吉岡さん)。
累計26億本を突破したロングセラー商品「味ぽん」
1974年に「味ぽん」が正式に商標登録され、1979年に商品ラベルの商品名も「味ぽん」となった。鍋以外にも使えるように、味わいも進化。そして「味ぽん」の用途の広さを新たに提案する時期となったのが1980年代以降。焼肉や餃子、サラダ、焼き魚など、日常の食卓にのぼるさまざまな料理に使えることを訴求。それに伴い、鍋用調味料からつけ・かけにも使えることが知られるようになり、年間を通して使える調味料へと変わっていった。
「1980年代以降の“つけ・かけ用途展開”の拡大が大きな転機だと言えます」(吉岡さん)。汎用性を示す提案として、1983年にはおろし焼肉を京阪神・四国エリアで提案。これを受けて1984年には「焼肉味ぽん」を発売。さらに1986年には「かぼす味ぽん」を発売して全国に“おろし焼肉”提案を拡大した。1989年からは、さらなる“つけ・かけ用途”需要拡大に向け、「焼き餃子やおろしハンバーグ、ぶりの塩焼きなど、いつものメニューに味ぽんを使ってもらう提案を、冬場に実施しました」(吉岡さん)。鍋のシーズンで「味ぽん」の手持ち率の高い時期だったこともあり、需要が一気に広がった。
その後、大皿にかつおのたたきを盛り付け、「味ぽん」をかけて食べる「かつおののっけ盛り」(1995年)や、サンマの塩焼きを「味ぽん」と大根おろしで食べる「さんまに味ぽん」(2000年)といった、今では定番になった使い方を提案し、より日常的に使える調味料という位置づけになっていった。
その後も、普段は醤油を使っていた料理に「味ぽん」でさっぱり食べる「しょうゆよりぽん」や、「味ぽん」に好みの薬味やトッピングを加える「食べぽん」など、さまざまな提案を行った。そして、2013年以降、パスタや炒め物、CMでもおなじみの「味ぽん」で煮物を作る「さっぱり煮」など、調味料として使うことを提案し、家庭内に常備されるような定番調味料となった。「カレーの隠し味や、味ぽんとオリーブオイルを合わせてドレッシングにするなど、アレンジを楽しめるのも魅力です」(吉岡さん)。
現在、「味ぽん」のラインナップとして、定番の「味ぽん」のほか、2種の唐辛子の風味が刺激的な、お肉に合う「味ぽんうまピリ」、酸味が苦手な人や子どもも食べやすい「味ぽんMILD」が販売されている。それ以外にも「地元の人や土地、文化とつながり、地元を盛り上げたい、地元を味わい尽くしてもらいたい」という想いから生まれた「地元を味わう(TM)味ぽん(R)」も登場。宇都宮餃子のおいしさを引き立てる「味ぽん for宇都宮餃子(R)」と、「味ぽん」と北海道産発酵バターを合わせた「北海道バタぽん(TM) by味ぽん」が発売されている。
さらに、たまごかけごはんに特化した「味ぽんfor TKG」や、発売時、2カ月分の販売予定数量をわずか4日で完売し話題になった粉末スパイスタイプの「無限さっぱりスパイス by 味ぽん」も一部流通限定で販売している。
醤油を加えていない「ぽん酢」と使い分けで食が豊かに
さて、「味ぽん」の躍進ぶりに比べ、先輩でもある「ぽん酢」はどうか。繰り返しになるが、ミツカンが最初に作ったのは「ぽん酢」。オランダ語の「pons(ポンス)」が語源と言われていて、「それが伝来して柑橘果汁と酢を組み合わせた調味料を指す一般名として古くから使われてきた言葉です。ミツカンではまず、1960年に醤油の入っていないぽん酢が発売されました。味ぽんができたのはその4年後です」(吉岡さん)。
「ぽん酢」と「味ぽん」の本質的な違いは「醤油が入っているか否か」(担当者)だという。「醤油が含まれていることで、1本で味を決めやすく利用ハードルが低いため、家庭の定番調味料として採用されやすかった」(吉岡さん)という「味ぽん」に対し、柑橘果汁と醸造酢で作られる「ぽん酢」は味付けをするには、ほかの調味料を調合する必要がある。
これを難しいととらえるか、自分好みにアレンジできるととらえるか。「味ぽん」より先に世に出たにも関わらず、“じゃないほうのぽん酢”と言われている「ぽん酢」が、今もなお販売されているのだから、「味ぽん」以上のロングセラー商品なのは間違いない。「ぽん酢には根強いファンや自分好みに調合したい層が一定数います」(吉岡さん)とのこと。さらに、最近では「ぽん酢」にお酒と炭酸水を合わせた“ぽん酢サワー”が人気となっている。
“ぽん酢サワー”はもともと、都内の居酒屋が「味ぽん」を発注すべきところを間違えて、大量の「ぽん酢」が届いたことから始まる。返品も手間なので何かに使えないか試行錯誤した結果、アルコールドリンクの割材として使ったことがきっかけで誕生した。醤油はもちろん、余分な塩味などが加えられていないシンプルな柑橘と醸造酢の酸味が楽しめる「ぽん酢」だからこその使い方で、今では多数の居酒屋でドリンクメニューとなり、公式でもレシピを発信し、2025年5月からは「ぽん酢サワー(TM)」として缶入りドリンクとして販売もされた。ちなみにぽん酢サワーのレシピは公式サイトで公開されているので、気になる人はぜひ試してほしい。
1本で味が決まり、汎用性も高い「味ぽん」、シンプルな味わいで自分なりの味が作れる「ぽん酢」、それぞれに用途も異なり、いいところがある。どのように使い分けるのがいいのか、担当者に聞いてみた。「味ぽんは食事における万能調味料ですが、ぽん酢には“無垢な酸味”、“調合の余地”という味づくり遊びがあるかなと思います。ぽん酢は食塩を添加していない分、調理からドリンクまで幅広く使えます」(吉岡さん)。具体的には、「味ぽんは、餃子や焼肉、炒め物、煮物などこれ1本で味を決めたいときや、脂の強い食材、濃い味の料理のあと味を調整したいときにおすすめ。また、醤油そのものより、酸味があることで減塩になる」という。一方の「ぽん酢」は、「酢の酸味を重視したい、柑橘の香りをより立たせたいときに使ってください。醤油を使っていないのでより塩分を控えたい人にもおすすめです」(吉岡さん)。
また、「味ぽん」に「ぽん酢」をミックスする使い方もある。「味ぽんをベースに、風味をシャープにしたいときにぽん酢を少量ブレンドしたり、味ぽん+ぽん酢をミックスすることで酸味と旨味のバランスを調整してサラダやマリネなどに使ったり、自分好みにアレンジする楽しさもあります」(吉岡さん)。
「ぽん酢」と「味ぽん」はそれぞれに魅力がある。どちらも“鍋専用調味料”ではなく、使い方も自由で使う人ごとにアイデアを駆使してアレンジできる。これから本格的な鍋のシーズンを迎えるが、まずは鍋で定番の使い方をしつつ、あとは思いつくまま、自分なりの「ぽん酢」「味ぽん」ライフを楽しもう。
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