黒電話が鳴ると地獄が始まる→80年代の嫁姑戦争が「リアルすぎて吐きそう」と話題【作者に聞く】
東京ウォーカー(全国版)
嫁を徹底的にいびり抜く毒義母と、超自己中心的な夫。その凄惨な日常を描き、SNSで「リアルすぎてヤバイ」と大きな反響を呼んでいるのが、コミカライズもされた人気作「
義母クエスト~結婚したらいきなりラスボス戦でした~
」だ。本作は、原作者・かづさん(@kadu0614)の実体験をもとに構成されている。現在は穏やかな生活を送る彼女が、新婚当時に直面した壮絶な戦いの日々を振り返った。
自分が「一番」でないと気が済まない義母の恐怖
看護学生のときに出会った秋彦と結婚し、新婚生活をスタートさせたかづさん。しかし、待っていたのは義母からの執拗な電話攻撃だった。義母はことあるごとに「息子を尊重しろ」と迫り、嫁の存在がいかに無用で無能であるかを周囲に知らしめようと躍起になっていた。
かづさんはこの執拗さを「執着」というよりも、義母自身の存在感が薄れることへの「恐怖」であったと分析する。自分が世界の中心でなければ我慢できない義母にとって、息子の関心が嫁に移ることは耐え難いことだったのだ。
この経験から、かづさんは自らの息子に対し「何があっても嫁が最優先。大事にしろ」と幼少期から言い聞かせて育ててきた。結婚したら妻と子が一番であることは当然という、至極真っ当な価値観。しかし、毒義母にとってその当たり前は、決して受け入れられない不都合な真理だったのである。
親の老後に無関心な一人息子。歪んだ親子関係の末路
一方で、夫である秋彦の振る舞いもまた、読者を驚愕させる。彼は義母からの電話攻撃を受け入れるものの、必要時以外は親に関与しようとしない。それは親愛ゆえではなく、「逆らうと面倒なことになる」という恐怖が幼いころから染み付いているがゆえの生存戦略であった。
その無関心さは徹底している。後に義父母が病気で入院したときも、お見舞いや介護に奔走するかづさんを横目に、彼は「様子はどうだった?」と聞くことすら皆無だった。「僕の休みが潰れる」とこぼし、「親の老後なんて考えたことがない」と言い放つ一人息子の姿に、かづさんは冗談かと思うほどの衝撃を受け、呆れ果てたという。
記憶と資料で再現される「逃げ場のない80年代」
本作のもう一つの魅力は、漫画を担当した赤星たみこさん(@tamikong)が描き出す、緻密な時代のリアリティだ。物語の舞台となる80年代の空気感は、赤星さんの記憶をベースに再現されている。
黒電話を後ろから見たときのディテールなど、細部は資料で補いつつも、当時のファッションや生活感は実体験に裏打ちされたものだ。黒電話から響く不穏なベルの音。それは、物理的な距離があっても瞬時に家の中へ侵入してくる毒義母の魔の手を、最も残酷に象徴している。
かづさんの強靭な精神力と、赤星さんの臨場感あふれる描写。この強力なタッグによって生まれた物語は、今もなお多くの読者の心に、家族のあり方という深い問いを突きつけている。
取材協力・画像提供:かづ(@kadu0614) 赤星たみこ(@tamikong)
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