「絶対に裏切りません」その言葉を信じたのに!? 貸した金は戻らずまさかの警察沙汰という最悪の結末【作者に聞く】
東京ウォーカー(全国版)
子どもの頃から漫画が好きで、ユーモアと現実の苦味を織り交ぜた作品を描く宮野シンイチ
(@Chameleon_0219)
さん。X(旧Twitter)で公開している「夜逃げ屋日記」は、DV被害などに遭う依頼者を夜逃げさせた実体験をもとに描かれており、静かな反響を呼び続けている。今回紹介するのは、その中でも読者の心に深い爪痕を残した第14話だ。
「返すときは、そこに振り込んでください」
夜逃げ当日。宮野は、依頼料に相当する金額が入った封筒を、大崎さんに手渡した。「返すときは、そこに振り込んでください」そう言いかけた瞬間、大崎さんと息子のソウスケ君が、突然泣き出した。「ありがとうございます…」「本当に、助かりました…」感謝の言葉と涙を前に、宮野は言葉を失う。
落ち着いた後、大崎さんはおずおずと切り出した。「いつ頃お返しすればいいでしょうか? 来月15日には給料が入るんですが…」。「それまで待ちますよ」宮野はそう答え、借用書を渡す。すると大崎さんは、少し困ったような顔でこう言った。「私がいきなり依頼料を持ってきたら、社長、絶対に怪しむと思うんです」さらに続ける。「その時、これが出てきたら…誤魔化しようがないというか…あなたの立場が…」。そこまで深く考えていなかった宮野は、背筋が冷たくなる。万が一見つかれば、取材も仕事も、すべて終わるかもしれない。
「受け取ってください。私の全財産です」
すると大崎さんは、数枚の千円札と小銭を差し出した。「受け取ってください。私の全財産です」「こんなに人に優しくしてもらえたの、初めてで…」「だから、絶対あなたのこと、裏切りません」まっすぐに目を見て、そう言われる。「どうか、そのお金を貸してください。お願いします!」宮野は、その言葉を信じてしまった。
約束の日、お金は振り込まれなかった
夜逃げは無事に終わった。しかし、約束の翌月15日になっても、口座に振り込みはない。「おかしいな…」違和感は、不安へと変わる。宮野は意を決し、大崎さんの新居を訪ねた。インターホンを鳴らすと、大崎さんが出てきた。「先日お貸ししたお金の件で…」そう切り出した瞬間、返ってきたのは信じがたい言葉だった。
「誰ですか?あなた」「え? あ…いや、宮野ですよ。宮野シンイチ。お金、貸したでしょ?」すると大崎さんは、肩を強く叩き、吐き捨てるように言った。「気持ち悪い」最後に一言、「死ね」そう言い放ち、扉は閉められた。
3時間の待機、その先に来たのは警察
頭に血がのぼった宮野は、何度もインターホンを鳴らす。ドアの前で待ち続けること3時間。やって来たのは、警察官だった。「警察なんですけど。この部屋の方から通報がありまして」「不審者に付き纏われて困っている、と」身分証の提示を求められ、事情を説明する宮野。
しかし、「借用書とか、あるの?」その一言に、言葉を失う。借用書はない。「証拠がないなら、君が嘘をついてる可能性もあるよね」クレジットカードを握りしめ、宮野はその場で静かに泣くしかなかった。親切心で貸したお金が、返ってくることはなかった。助けたはずの依頼者に裏切られ、警察に疑われ、残ったのは虚しさだけ。この出来事は、宮野の中に深い傷として刻まれている。
「怒りより、最後は絶望でした」
後に宮野は振り返る。「怒りを通り越して呆れる、とよく言いますが、あの時は怒りでいっぱいでした。ただ、警察が来た瞬間、すべてが冷静になって…絶望しました」。また、当時社長が抱いていた違和感についても、「めちゃくちゃ鋭い。動物的な勘がある」と語る。結果論ではあるが、その勘は正しかったのかもしれない。
人を助ける仕事の裏側には、こんなにも残酷な現実がある。宮野シンイチさんが描く「夜逃げ屋日記」は、その現実から目を逸らさせない。
取材協力:宮野シンイチ(@Chameleon_0219)
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