殺処分は減ったのか?戌年にあらためて考える保護犬の現状/「動物愛護センター」のリアル

関西ウォーカー

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「大阪府動物愛護管理センター」は、大阪府の動物管理指導所や一時保護センターなどを統合して開設。飼い主を含めた各人の責任を促す啓発に重点を置き、社会全体で殺処分がゼロとなることを目指す拠点を担う。捨てられ、保護された犬はどうなるのか。奮闘する現場のリアルを聞いた。<※情報は関西ウォーカー(2018年1月5日発売号)より>

「ちょろまる」(左)と「ししまる」(右)/大阪府動物愛護管理センター


ふれあいコーナーで出会えるモデル犬の「ちょろまる」(左)と「ししまる」(右)。

飼い主の無責任が生む犬たちの悲しい結末


愛らしい表情やしぐさに癒され、時に心の支えとなる犬は、人間のよきパートナーとして、また家族の一員として、今や単なるペット以上の存在になっている。飼うに当たっては、日常生活で周囲に迷惑をかけない配慮と、犬が命を終えるまで寄り添うのが飼い主の責任だ。

だが、経済的な理由や健康上の不安から、やむを得ず犬を手放さざるを得ない場合もある一方で、安易に飼われ、すぐに飽きたり、世話ができなくなったりという身勝手な理由で、捨てられる犬がいるのも現実だ。センターには、迷い犬として警察に届けられ、ケガをして運び込まれるなど、日々さまざまな経緯で主を失った犬たちが保護されている。

【写真を見る】保護された犬の様子がわかる見学者コース/大阪府動物愛護管理センター


保護された犬の様子がわかる見学者コース。飼育室まで見られる施設は希少。

保護犬がストレスをためないよう専用の運動場も完備/大阪府動物愛護管理センター


保護犬がストレスをためないよう専用の運動場も完備。しつけなども行われる。

いったん収容された犬は、病気の検査やケガの治療、社会への適合性の観察を受ける。診断のうえ、感染症や重度の負傷、性格的に人に危害を加える恐れがある場合は、やむなく処分となる。麻酔薬の注射を打たれ、誰もが望まぬ最期を迎えることになる。

注射で処分できない犬は処分機で、吸入麻酔を行ってから炭酸ガスを注入/大阪府動物愛護管理センター


譲渡対象とならず、注射で処分できない犬は処分機で、吸入麻酔を行ってから炭酸ガスを注入。苦痛を和らげる配慮がされている。

不幸な犬を減らすには飼い主の自覚が不可欠


残念な結末には、犬自身になんの落ち度もない。すべては飼い主の無自覚が招いたことだ。

「なかには飼い主の勉強不足や、しつけ不足が原因となることもある。“かわいい”だけで飼うと、しわ寄せはすべて犬に来ます」とは、センターの多賀井次長。府内で保護された犬のうち、約70%が譲渡されるか、飼い主に返還されるが、必ずしもそれが約束されているわけではない。

「犬が人に危害を及ぼすのを防ぐのが目的の一つなので、厳しい言い方になりますが、実際には処分しないとは言えないのです」。センターが目指す社会全体での殺処分ゼロというスローガンは、飼い主だけでなく、社会の構成員の一人一人が、動物に対する責任を自覚することで始まるという趣旨だ。時には、飼い主自身が持ち込むこともあるが、できるだけ本人が解決するようにする努力を続けている。

犬の飼い方教室も実施/大阪府動物愛護管理センター


芝生の多目的広場では犬の飼い方教室も実施。

犬と接して、かかわり方や飼い方を教える/大阪府動物愛護管理センター


実際に犬と接して、かかわり方や飼い方を教えるふれあいコーナー。

また、ふれあい飼育体験などを通して、動物の正しい飼い方、犬を飼うことへの意識を高める活動を展開している。「特に子供のころに、普段の世話や掃除などの実際を知り、本当に面倒を見られるかを考えることが大切」と多賀井さん。多彩な啓発活動を通して、不幸な犬を増やさないことがセンター本来の使命だ。

人と犬のいい関係を築く充実の施設と新たな試み


新たに建設された施設は、充実した医療設備やゆったりとした清潔な飼育ケージ、広々とした運動場などを備え、従来の保護施設にあった暗いイメージを払拭。見学者コースも設置され、譲渡対象犬の飼育環境を見ることもでき、保護した犬と新たな飼い主をつなぐ取り組みにも力を入れている。

明るく清潔な空間/大阪府動物愛護管理センター


譲渡成犬飼育室のケージは1頭当たり約3.3平方メートルとゆったり。明るく清潔な空間に、従来の施設のイメージが変わる。

動物用の診察室/大阪府動物愛護管理センター


動物用の診察室。青は保護されたばかりの犬、ピンクは譲渡対象犬と色分けすることで混在を防ぐ。

10年前と比べると保護犬の数は1割にまで減り、返還譲渡率も約4倍になったが、それでもなくなったわけではない。

「見学の方と対面でゆっくりお話して、犬を飼うことの現実を知っていただく機会ができたのはセンターの大きな効果。今後は動物のためだけでなく、飼い主のためになる体験やイベントを増やしていきたいですね」

長く愛される犬がいる一方で、捨てられる犬も。人の都合で不幸になってしまう犬をなくすには、最後まで寄り添う飼い主の自覚が必要だ。

愛称は「アニマル ハーモニー大阪」/大阪府動物愛護管理センター


愛称は「アニマル ハーモニー大阪」。人と動物の共生社会の実現を目指す。

■大阪府動物愛護管理センター<住所:大阪府羽曳野市尺度53-4 電話:072-958-8212 時間:9:00~17:45、土日祝9:00~17:30 休み:なし 駐車場:46台(無料) 交通:近鉄古市駅よりタクシーで10分、南阪奈道路羽曳野ICより車ですぐ www.pref.osaka.lg.jp/doaicenter/doaicenter/index.html>【関西ウォーカー編集部】

編集部

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