ヨーロッパ企画・上田誠脚本・演出の舞台版“時かけ”続編は“舞台上で俳優が死ぬほど走る”?

関西ウォーカー

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青春小説の名作として世代を超えて愛され続ける『時をかける少女』。この作品の続編として脚本家の石山透が執筆し、1978年に出版された『続・時をかける少女』が、劇団「ヨーロッパ企画」の上田誠による脚本・演出で初の舞台化。2月17日(土)には森ノ宮ピロティホールで大阪公演が行われる。インタビューの後編ではプロデュース公演『続・時をかける少女』の見どころや演出について上田誠へ聞いた。

2018年に結成20周年を迎えるヨーロッパ企画・主宰の上田誠が“時かけ”幻の続編に挑む


-今回の『続・時をかける少女』はSF色が強い作品ですが、同時に青春ストーリーの側面もあり、ラブストーリーの要素も含まれています。それを舞台で表現する中で、上田さんがこだわったポイントはありますか?

上田誠(以下、上田):タイトルにもあるように、“時をかける”物語なので、とにかく“かけてる”感を出したいなと(笑)。特に今回の舞台は若手の俳優が多いんです。稽古を続けていくと、もちろん演技も達者になっていかはると思うんですけど、たぶん稽古の始めの方は緊張感があると思うんですよね。あと今回はベテランの役者さんやキャリアの長い芸人さんもいて、その中で若手チームが頑張りを見せるべき舞台やと思うんですよ。そういう時に“走る”という動作は若い俳優にとってアドバンテージかなというのもあったりして。演技合戦となった時に、どうしても海千山千のベテランが有利になってしまう。もちろん若手の皆さんには演技でベテランに対抗してほしいんですが、それプラス、やっぱり彼らが自信を持ってやれることって体を動かしたりとか、若くないとできないことってあると思うんです。それと恋愛のシーンも、若い俳優だからこそ真っ直ぐ演じられることもある気がしていて。主人公の上白石萌歌ちゃんには舞台上で死ぬほど走ってもらうのがいいかなと思ってます(笑)。

-今回の出演者はヨーロッパ企画所属の方もいれば、舞台初挑戦の若手俳優、はたまた芸人のバッファロー吾郎Aさんのような方もいらっしゃいます。いろんなジャンルの方が同じ舞台に集まる状況で、演出をする上田さんとしては、出演者全体をどういう風にご覧になっていますか?

上田:結構ドキドキしています。ヨーロッパ企画や僕がやってきた特性って、お笑い界にも顔を出すし、映画やテレビドラマなどの芸能界的なところにも出没しますし、もちろん演劇界にもいますし、いろんなところと接点を持っています。いろんなクラスタのところにちょっとずつ顔を出すヨーロッパ企画の感じって、僕は大事なことだと思っていて。特にクラスタと呼ばれるセクションに細分化していってる中で、それを横断して面白いことができたらいいなぁって思ってるんですよ。今回の舞台はそれが実現できそうなチームかなと。アイドルの方もいれば、芸人さんもいて、小劇場の人もいて、芸能人の方もいて…という感じじゃないですか。世代も普段活動している場も違う人たちを縫い合わせていかなきゃいけないんですよね…今喋っててめっちゃ緊張してきたんですけど(笑)。でも多様であればあるほど越境した時に絶対に面白いものに仕上がりますから。出演者もスタッフも銘々が得意技を舞台に持ち寄ることがすごい大事で。プロデュース公演っていかにみんなにそれぞれの得意技を持ち込んでもらうかやと思うんです。

話題は原作の魅力から舞台演出へのこだわりへと広がった


-先ほど上田さんが“ドキドキ”って言葉を使われていましたけど、そのドキドキというのは期待なのか、緊張なのか、はたまた怖さなのか、どんな位置付けですか?

上田:脚本を最後まで書いて、それに合わせてみんなに稽古をしてもらえば、最低限のものはできると思うんです。でも、どうせなら台本にないようなものを出演者に持ち込んでもらいたいなと期待しているので、台本もあまり決め込まないようにしています。役者さんに“この人はこの得意技を舞台に持ち込めたらイキイキするかもしれない”ということについて、僕が下地を作っていくんですが、これはいつも緊張するところですね。今回は初めてご一緒する方も多いですから、おそらく向こうも緊張されていると思います。

-キャストのバランスというか調整役というか、うまいこと間をとってそれぞれの魅力を引き出していくのが演出家としての役割であったりもするんですね

上田:そうなんです。“こういう劇を作りたい”というイメージがはっきり頭の中にあって、それに近づけるために役者を引っ張っていくタイプの演出家もいはると思うんです。その方法がやりやすい場合もあると思うんですけど、僕はみんなが舞台上でイキイキしているのが見たいので、稽古中もそれを探っています。

-なるほど

上田:稽古以外で出演者と呑みにいってみたりとか、休憩時間を長めにとって喋ってみたりとか、エチュードしてみたりとか、いろんな策を弄してますね。

-ということはヨーロッパ企画のメンバーの方であれば、どんな得意技があってとか熟知されているとは思いますが、今回初めてご一緒する方は、一人ずつこれから人間関係を構築していくわけですよね?

上田:そうですね。例えばダメ出しっていうことの方が響く人と、ダメ出しを嫌がる人もいるわけで。褒めた方がいい人もいれば、どこがダメでしたってネガティブチェックをした方がいい人もいます。例えば、振り返るという動作一つにしても「そこで二歩いってから一歩いってください」と具体的に指示をした方がいい人もいれば、「そこでバックスイングするようにいってください」って説明した方が「ヨシ!」って響く人もいる。その俳優さんにどんな指示を出せば、どれくらい響いてくれるのかみたいなことから探っていくので、プロデュース公演の前はその点が大変ですね。

-今回の舞台で、演劇だからこそできる表現として上田さんがこだわった点はありますか?

上田:僕は舞台をやる時って舞台美術に凝るというより、舞台美術ありきで物事を考えるんですね。それも演出家によって、舞台美術よりも役者の演技を見せることに重きを置いて、舞台美術は役者の芝居の邪魔にならないようにというタイプの方もいるんです。でも僕はキャストとスタッフワークは等価だと思ってます。極端な話、舞台美術が超面白かったら、それだけで舞台が成り立つと思いますし、できるだけ舞台美術と役者が有機的に絡んで、両方のいいところを発揮できるような関係がいいなと思っているので。今回の舞台は“時をかける”んで、時をかけてる感を舞台でどう表現するかですよね。時代が大きくガラッと変わる話なので、その時にいかに舞台をダイナミックに見せられるか。20年前にタイムスリップした場面で、舞台がそんなに変わってないよりはガラッと変わる方が嬉しいじゃないですか。でも物理的にめちゃくちゃたくさんの美術を出し入れできるかというと、それは予算にも限りがあるので。そういうというところで、割と面白いシステムの転換を思いつきました。

-観客はその点に注目して観ても面白いですね

上田:そう思いますね。山ほど書き割りが出てくると思うのでそこも期待していてください(笑)。【関西ウォーカー編集部/スズキヒロシ】

スズキヒロシ

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