幕末ミステリーリサーチ File2 西郷も絡むタマの痕!? #03無念の戦士・彰義隊
東京ウォーカー
今年はピッタリ明治維新150周年! そんな50年に一度のチャンスを盛り上げたくて、幕末がよりおもしろくなるアレコレを発信していく。それが【ボクらの維新通信社2018】だ。
報われぬ彰義隊。上野戦争後の仕打ち

リサーチのFile2として、前々回からお届けしている「西郷どんのタマの痕!?」。通信社に所属する俳優・声優・歴ドルたちから成る幕末ミステリーリサーチ、通称“BMR”【動画※1】は、東京南千住の円通寺を訪ねていた。NHK大河ドラマで早くも話題沸騰の西郷どんたちと、彰義隊との間で繰り広げられた上野戦争の「タマの痕」をリサーチするためだ。
上野戦争のホンモノの銃弾の穴が無数に空いた黒門や、その裏にこれまた大量に立ち並ぶ旧幕臣たちの石碑を紹介する動画は、↓こちらから。
動画その1⇒ https://www.youtube.com/watch?v=iEbgmi1-wI8
動画その2⇒ https://www.youtube.com/watch?v=iJUlGx0nGOc
前回、大鳥圭介や榎本武揚など旧幕臣の追弔碑をたっぷり見学したBMR一行は、続いて今回のリサーチのもう1つのメインディッシュである、彰義隊の墓にお参りした。しかしその墓石には何も彫られていない。手前の水鉢のほうにただ「戦死之墓」とあるのみで、隊士たちの名前はおろか彰義隊の「し」の字もないのだ。資料を読んで知ってはいたが、いざそれを目の当たりにするとなんともやるせない気持ちになる。
倒幕・佐幕偏りなくニュートラルに幕末を見たい僕こと隊長のロバートですらこうなのだから、新選組好きの麻衣隊員にしてみれば、「これだから勝てば官軍スタイルの連中は!」と憤激するのもやむなしである。

遠く薩摩や長州からやってきた西郷どんたち東征軍。それに刃向かった彰義隊には“賊軍”のレッテルが貼られた。それだけでなく、戦死者の遺体を弔うことすら許されず、戦争後しばらく上野の山に野ざらしにされていた。それを見かねた円通寺の仏磨和尚と商人・三河屋幸三郎が、とがめを受けるのも厭わず彰義隊士の遺体を荼毘に付したのは、今回の動画でも語っている通り。
確かに西郷どんたちから見れば彰義隊は敵だし、西郷どんたちの側の正義に反抗したが、彰義隊にも言い分があり正義がある。それが“賊軍”として歪められ、ただ朽ち果てさせられるのは忍びないと思う人たちがいて、墓を建ててくれた。名前を彫ることは許されなかったが、この墓があるから、今150年の時を経ても彰義隊側の無念について、こうして動画で少しでも語り継いでゆけるのだ。
いつになくマジメになってしまったが、BMRはこの「語り継いでいくこと」を忘れちゃいけない。そう感じさせられたリサーチでした。
本当は一人ずついじり倒したい!

続いてBMR一行は、「戦死之墓」に隣接する「死節之墓」にお参り。こちらは近藤勇や土方歳三、伊庭八郎、松岡磐吉など、まさに旧幕オールスターズの合葬墓だ。この石に手を合わせれば、旧幕方として戊辰から箱館戦争を戦った主要メンバー全員にお参りしたことになるという、ある意味おトクな石だ。
「死節」とは見慣れない言葉だが、BMR的には「節義に殉じた者たちの墓」と解釈してみた。墓にすら名を遺せなかった彰義隊にとって、同じ志を抱いた仲間たちと並んで眠ることは、せめてもの安らぎになっているだろうか。
ここでも例によって、神木隊や楊洲周延、箱館海戦の蟠竜丸などマニアックなネタが飛び出した。彼らは全員、西郷どん側に刃向った者たちだが、はたしてこの石に名を彫られたうちの何人が大河ドラマに登場するだろう? 江戸無血開城と上野戦争は大河でも大きな山場になるはずなので、BMR的にはかなり気になるところである。
それにしても一行はいっこうにロケの時間配分を覚えない。本当はもっと一人一人のエピソードを語って紹介したいのだが、またも日が暮れかけたために次を急ぐ。
おとがめ上等! 市井の人々の義侠

動画ではここから文字通り駆け足で紹介しているが、お次は天野八郎の顕彰碑。この人が彰義隊の前身グループを結成し、後に彰義隊になってからは実質的な頭取を務めた。徳川に殉じた彰義隊の性格を考えると、天野も古くからの旗本かと思えば、この人実は豪農の出身。侍でない者が侍に憧れ、侍よりも侍らしくあろうとしたタイプ。剣の修行をして、将軍・徳川家茂の警護のために上洛し、最期は密告されて敵の縛についた、と言ったら誰かを思い出すでしょ? そう、近藤勇とほぼ同じ経歴なのです。趣味は将棋で好きな駒は香車。「だってまっすぐ進むから!」。その駒にも似た愚直な生き方という点でも、どこか近藤さんを思わせる人。こわもてなところもね。
続いては三河屋幸三郎の碑。彰義隊の墓を建立するために資金を工面した人。このエピソードが有名だが、ほかにも旧幕臣・石川忠恕の『箱館脱走一件始末記』を刊行しようと死の間際まで奔走するなど、旧幕一途なお人柄。
そしてその隣に建つのが、円通寺の仏磨和尚のお墓だ。動画でも言っているように、この人がいなければ彰義隊の墓が建てられることはなかった。腐敗するまで上野のお山に放置された彰義隊士をはかなんで、東征軍大総督府にかけ合って、一時は捕まって監禁されるも許可を得て、隊士の遺骸を荼毘に付した。その場所は、現在上野の西郷どんの像が建っているあたりだ。三河屋さんといいこの和尚といい、江戸の町では市井の人々の東征軍への静かな抵抗があったことも記憶しておきたい。

幕末の町民文化にも興味のあるロバート隊長としては、円通寺に新門の辰五郎の碑があることもミョ~にうれしい。江戸の名物といわれた火消し「を組」の頭領にして、博徒・的屋を束ねた侠客の親分。彼もまた彰義隊埋葬のために尽力した一人だが、勝海舟や徳川慶喜の信任も篤かったという人物。鳥羽伏見の戦いで慶喜が逃げる際に忘れた金扇の馬印を、戦後敵城と化した大坂城に取り戻しに行くエピソードは、まるで少年漫画のように熱い!
熱いといえば、勝は江戸無血開城が破談になる場合のバックアップとして、「お江戸八百八町焼き討ち作戦」も考えていて、西郷どんが「よかごわんど」と言わなければ、江戸に放火して西軍を襲うつもりだった。その実行役を内々に頼まれていたのが、辰五郎親分。「火消しに火付けしろたァ、シャレがキツいぜェ」と親分言ったとか言わないとか。
公儀御庭番が土方歳三の墓を知る!?
上野戦争における西郷どんも絡むタマの痕を探る今回のミステリー。円通寺調査ロケの最後を飾るのは、彰義隊でも西郷どんでもなく、小芝長之助のお墓。
誰それ? よほどの幕末ファンでもこう言ってしまいそうな小芝サンは、公儀御庭番(つまり幕府の忍者)で、幕府瓦解後も箱館まで行って戦った人。そして動画で語っているように、土方歳三の戦死後、遺体の引き取りに出向いた人なのだ!
土方の埋葬地には候補地がいくつかあり、今も特定されていないが、土方家にこんな伝承がある。大正の頃、土方家を訪ねる老人があり、仏壇の前で二時間も拝んだり泣き崩れたり独り言を言ったり……。この老人が小芝長之助だった。泉下の土方に何を語りかけたのか。あるいはそれは、彼が土方を埋めた場所……?

ということで、小芝長之助に詳しい人、何か知っている人、私が小芝の子孫だ、という読者がいたら、ぜひ通信社の公式ツイッター宛てに情報をお寄せください! BMRはすぐ動きます!
【ボクらの維新通信社2018】公式ツイッター⇒ https://twitter.com/bokura_bakumats
★「BMRにコレを調査してほしい!」という依頼も受け付けます!
次回予告! 彰義隊にまつわる怖い話
円通寺の調査を時間の都合でしぶしぶ切り上げたBMR一行は、作戦本部へ戻った。しかし今回のリサーチはまだ終わりじゃない。間違って上野に行ってしまったかやの隊員、この企画の担当編集ドイさんも合流し、締めくくりに語るのは、彰義隊の怖い話! 季節外れの真冬の怪談に乞うご期待!
動画の※印解説!
【※1 BMRとは】そろそろおなじみと言われたい我ら幕末ミステリーリサーチ。この世に散らばる幕末の謎やオモシロを、身を以て調査してお届けする通信社内のアクティブ系サークルである。
【※2 楊州周延】

周延は本名を橋本直義という越後高田藩の江戸詰め藩士で、歌川国芳派の浮世絵師。幕府の第二次長州征伐に従軍し、幕府瓦解後は藩が結成した神木隊に参加。上野戦争を生き抜いて箱館まで転戦した。明治になってから画業を再開し、西南戦争での西郷どんも描いている。
【※3 松岡磐吉と蟠竜丸】松岡磐吉は旧幕ファンの女子の間でもっと人気が出てほしい人物。剣の達人で頭脳明晰、10代で幕府の軍艦操練所の教官となり、咸臨丸に乗って渡米もし、榎本艦隊では蟠竜丸の艦将として箱館戦争の最後の最後まで奮闘。たった1艦で新政府軍の朝陽丸を轟沈させた。なかなかのイケメンで、ゆえに早死にと、すべての要素を持っている。
【※4 仏磨和尚】円通寺の23世住職。上野のお山に散乱する彰義隊士を弔いに出向く際は、斬首されることも覚悟の上だったという話が伝えられている。
【ボクらの維新通信社2018/ロバート・ウォーターマン(KUROFUNE-United)】
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