「名古屋の観光って、ぶっちゃけどうですか?」河村たかし名古屋市長に居酒屋で直撃インタビュー!
東海ウォーカー
2018年3月29日(木)、名古屋城周辺に新たな商業施設「金シャチ横丁」がオープンし、同年6月8日(金)には10年にわたる復元工事を終え、「名古屋城本丸御殿」が公開。そして2022年には名古屋城天守閣の木造復元を予定するなど、名古屋の観光産業に関する期待が高まっている。一方で、2016年に実施した「都市ブランド・イメージ調査」では、国内主要8都市の中で名古屋市が「最も魅力がない街」という不名誉な結果が出たことも記憶に新しい。
そんな期待と課題を抱える“名古屋の観光”をテーマに、河村たかし名古屋市長へインタビューを実施。市長行きつけの居酒屋で、酒を交えながら話を聞いた。

行きたくない街No1!「理由はわかっとる」
――現状、名古屋の観光について、どのようにお考えですか?
「こないだからよう言われとるけど、名古屋は『魅力がない街、行きたくない街』でダントツ1位になった。理由はわかっとるんですよ。1つは、空襲で街がみんな燃えたということ。名古屋というのは当時ゼロ戦を作っていた大軍需都市で、空襲の爆弾投下数と回数は東京大空襲と同じくらいあったと言われています。東京の場合、被害を受けたのは主に下町でしたが、名古屋は都心部がやられた。そして、名古屋はその後の戦災復興事業をやりすぎたんです」
――やりすぎた、というのはどういう意味ですか?
「戦災後に立てた都市計画で、名古屋は路地を全部ぶっ壊しちゃったんですよ。『幅8m以下の道路を作らない』と決めて。東京も大阪も広い通りはありますけど、大きな通りから一本道に逸れると路地が残っている。そこが大きな違いですね」
――なるほど。
「路地には寺や墓があって、本来、墓の移転なんてそうそう出来るものではないんです。でも、名古屋は平和公園という巨大な墓地を作って、18万9000基もの墓を移転したんです。一方で、東京は3000基、大阪は2000基の移転です」
名古屋の街はピカピカで住みやすい「消毒都市」!?

――路地がないことが、名古屋が魅力に欠けると言われる原因とお考えなんですね。
「わしはテレビの観光番組をよく見るんですがね、『吉田類の酒場放浪記』とか『おんな酒場放浪記』とか。あとは、世界の街角でご飯を食べる番組とか、普通の人は入れない居酒屋を紹介する番組とか。あれ、全部路地の話なんです。路地の中のゴチャゴチャとしたところで、みんな酒飲んでワーワーやっとる。名古屋みたいにね、広い場所で飲んだりせんのだわ」
――裏を返せば、都市計画が確実に行われたのが名古屋だった、ということですよね。
「名古屋学院大学の井澤知旦という教授は、名古屋は『消毒都市』だと言っていますよ。きれいに消毒された街だと。ほんで『さすがに消毒都市はねぇやろ』と電話で言ってやったんですけどね。路地というのは今でこそ人気ですが、昔は非衛生的なところだったわけです。そして、今の名古屋は反対にピッカピカになった。住む人はええですよ。税金も安いし、住みやすい都市と言われていますよ。ただ観光という点で言うと、風情が感じられない」
2018年3月に待望の「名古屋ソング」が完成予定
――ピカピカで住みやすい一方で、どうしたら『吉田類の酒場放浪記』のような風情を出せるかというのが現状の課題ということですね。
「あともう1つ、名古屋の課題は歌がないことなんだわ。東京なら『有楽町で逢いましょう』とか、聴くと有楽町が浮かぶじゃないですか。だけど名古屋は、街のイメージが浮かぶ歌がないわけですよ」
――どんな歌があればいいと思いますか?
「街のイメージと歌が直結するような曲ですね。それで今年度、200万円の予算をかけて作った歌が3月に完成します。歌詞は市民から集めたフレーズを組み合わせて作りました。東京音頭みたいに、盆踊りで踊れる歌ができて、流行るとええけど。まぁ、いっぺんやってみてって感じやね」
名古屋城天守閣木造化の目的は「本物」を作ること

――では、現在進められている名古屋城天守閣木造化について聞かせてください。
「名古屋城は1945年5月14日、終戦まで3か月というところで空襲により燃えました。そもそも戦前、城の国宝第1号に認定されたのは名古屋城で、第2号が姫路城なんです。その際、文部省から名古屋城の図面を残そうという話があって、空襲後も含めて20年間にわたって『昭和実測図』という詳細な図面を作りました。今回、木造化が実現できるのは、この実測図のおかげです」
――図面を元に、空襲前の名古屋城をそのまま再現できるんですね。
「江戸時代から昭和のころまで、内部を大きく修理した記録はないので、これを復元すれば400年前に家康がいたころと同じ名古屋城を体験できることになります。そんなの、今、世界中どこを探してもないですよ。つまり、『木造の図面があるから、400年前の“本物”にしよう』ということなんです。そして、名古屋の人はそれを誇りにして生きると」
――エレベーターを付けるというニュースもありましたが…。
「それには誤解があって、要は『時代の流れに即した最高の技術開発をしていこう』という話です。車椅子製造のトップシェアを誇る、北名古屋市にある『日進医療器』の社長も言っとったけど、車椅子にとって段差というのは最大の難物なんですよ。本当は、地下街や地下鉄の階段を上がっていける車椅子を作らないかんのです。エレベーターも災害のときには動けへんようになりますからね。大変厳しい課題だけど、車椅子の技術を専門にしている大学教授にも相談して、『あと4年か5年あるんで、挑戦しましょう』と、取り組んどるところです」
――階段を登ることができる車椅子を開発すると。
「もしくは、例えば1、2か月に1回『ハートフル・デイ』を開催するのもいいですね。来場者は車椅子の方だけではなく、目の不自由な方や、介護が必要な方、小さな子どももおるで。日を決めれば会場運営もできるし、階段にスロープをつけることも、補助器具をつけることも可能でしょう」
――400年前の“本物”を作ることと、さまざまな立場の方に来場してもらうことは、両立できるということですね。
「そりゃもう、両立できると思いますよ。今、天守閣木造復元のための『金シャチ募金』という市民からの寄付が2億円近く集まっていますけど、先日も100万円の寄付金を持ってきた人が『もしエレベーターがついて、“本物”を破壊するようなものができるなら、この寄付金を返してくれ』と言っとった。そういう人が多いから、努力はしなきゃいかんと思っていますよ。それに今回の天守閣木造復元はあくまで第一歩ですから。天守だけでなく、江戸時代の本物の城郭を復元しようと思っとるでね」
空襲のない平和な時代を後世に

――そうやって作られたものを、どうやって外に発信していくのでしょうか。
「本物が完成したら、わしがニューヨークに行って地下鉄の柱にポスター貼ったるわい!」
――(笑)。海外に向けて発信していく施策も考えてらっしゃるんですね。
「それはもう当然。空襲に参加したアメリカの軍人も、完成した名古屋城を見たら拍手するだろうね。空襲の話でいうと、『金シャチ募金』は子どもが1円からでも寄付できるようにしとるんですが、寄付と一緒にメッセージカードを書いてもらっとる。そのカードは、タイムカプセルに入れて334年後に開けます。なぜかというと、名古屋城は1612年に造られてから、333年後に空襲で燃えた。だから、もう1年。これで、空襲のない平和な時代を子どもたちにプレゼントしたという紛れもない証拠になります」
――とても長い目で名古屋のことを考えたうえでの「木造復元」なんですね。
「だからこその“本物”ちゅうことよ。本当は、名古屋には御三家筆頭に“本物”がようけあったんですよ。だけど戦災で燃えちゃった。故に、本物を発掘して大事に引き継いていくことが、名古屋にとって一番大事なことですよ。本物が、観光資源としてずっと生き残る。…まじめな話ばっかりしてスマンね』
市長オススメの名店&なごやめしはコレ!
――今、名古屋に遊びに来た人には、どこを案内すればいいでしょうか?
「今池の『サウナ&カプセルホテル ウェルビー名古屋』(笑)。名古屋のカプセルサウナは名物ですよ。ものすごく新しくてどえらいキレイですから。それと今池なら、餃子専門店の『百老亭(ひゃくろうてい) 今池店』も、うみゃーです。食べると、どえらい幸せになる。ここで餃子食った後に、ウェルビーに行ってサウナに入って…(笑)」
――今池では餃子がオススメとのことですが、なごやめしはいかがでしょうか?
「味噌煮込みうどんときしめんは、東別院の『天満屋 (てんまんや)』がうまいです。ここは戦災で焼けてないエリアで、店の建物は明治初期くらいからある。どえりゃーうまいですよ。ここを人に紹介すると『ええとこを紹介してもらった』って言われますね。きしめんなら、JR名古屋駅の東海道新幹線ホームの4号車と14号車の場所にあるきしめん屋も、うみゃーね」
――「住よし」ですね。JR名古屋駅ホームのきしめんは人気ですよね。
「これ言うと文句言う人はようけおるけどね。『一応市長なんだで、ちゃんと高級な店に行け!』と(笑)。でも全然行かんもんで。歴史的に言うと、京都が貴族で、それを打ち破ろうとしたのが信長、秀吉、家康。やっぱりサムライなんだよね。サムライといえば質素。この素朴さっていうのは大事にしていかないと」
柳橋を「うみゃーものの極楽」に!

――そういった庶民的なグルメも観光資源になるとお考えですか?
「庶民の料理も“本物”ですから、(観光資源に)なるでしょうね。今熱心にやろうとしているのが、柳橋に『うみゃーものの極楽』みたいな場所を作れんかと。今年の予算で2000万円を調査費として付けています。伊勢湾からの魚介類など、うみゃー食材は柳橋の市場に集まってきとるから。東京の築地場外市場が有名だけど、東京駅から結構距離がありますがね、柳橋だと名古屋駅から徒歩10分で行けます」
――築地市場は多くの外国人観光客でにぎわっていますね。
「だから、世界クラスにならないといかんですよ。『世界のうみゃーものの聖地』みたいな場所にならんと。世界中の人も、東京の人も、名古屋にうみゃーものを食いに行こまいと」
――ほかに構想している事業はありますか?
「これはまだ難航しとるけど、1904年にドイツで作られた世界で1つしかないB6形蒸気機関車を1台、名古屋市が保有しとるんだわ。今は大阪の会社に保管されていますけど。鉄道ファンはようけおるでね、これを名古屋駅から都会のど真ん中を走らせたら面白いですよ」
目下の企みは「AKB48選抜総選挙」?!
――ちなみに最近、ご自身のTwitterで「AKB48選抜総選挙」を名古屋で開催したいと書かれていましたが…。
「総選挙はね、去年11月に松井珠理奈とのイベントで一緒に肩組んで『ええよ!』って言ったから、なんとか名古屋で開催できんかと、今いろいろ聞いとる。SKE48は、何年か前の紅白歌合戦に出場したとき、あの大舞台で『名古屋のみなさんに応援していただいて…』って言ってくれたのがうれしかったですね。ありがたいもんですよ。だで、その時はすぐお礼に行きましたもんね」
――最後に、市長の言う「どえりゃぁ面白い街」というのは、具体的にどんなイメージですか?
「無味乾燥な言葉で言うと『文化芸術の町』やね。“本物”のシンボルがあって、あとはどえりゃぁ庶民的でいいんじゃないですか。居酒屋があって、八代亜紀やらに歌ってもらうような歌があって、街中に音楽が流れとって。名古屋城周辺には3月に『金シャチ横丁』ができるけど、まぁそこに名フィル(名古屋フィルハーモニー交響楽団)の楽団員に『流しでもやれ』と言っとるんですがね、これは以前、『雨だとバイオリンが濡れる』と反対されて…(笑)」
――(笑)。そういった庶民的な文化と楽しさで、名古屋へ観光客を呼べると思われますか?
「そりゃ本気でやったら人は来ると思いますよ。あとはうみゃー食文化ですね。カプセルサウナだけではいかんですよ」
――そうですね(笑)。まだまだ話は尽きませんが、まずはここまで。大変ご多忙の中、ありがとうございました!
前田智恵美
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