季節の変化とともにあった アイヌの暮らし

2018年4月4日 20:00更新

北海道ウォーカー 市村雅代

Twitterで
シェア
Facebookで
シェア

季節の移ろいとそれに伴う気候の変化を巧みに利用し、狩猟や採集を行って暮らしていたアイヌの人々。季節が一巡する「一年」の単位で、どのような暮らしを送っていたのかアイヌ民族博物館の展示物から見ていきましょう。 

アイヌの人にとって季節は「四季」ではなく、大きく夏と冬に分かれていました。雪がなくなるころになると女性は山菜採りへ男性は海や川での漁に出かけるようになります。そのシーズンで初めて川や海に舟を浮かべる際にはチプサンケという儀式を行い、豊漁と安全を祈願しました。

完ぺきではない人間の言葉を補いカムイに伝えてくれるイクパスイは儀式に欠かせない道具。先端をお酒に浸し、火や神具にふりかける

全ての画像を見る(5件)

夏の最後にサケ漁を行います。この季節は採ったり獲ったりしたものを冬の食糧にすべく干したり加工する作業もあり忙しかったようです。

オオウバユリの球根のでんぷん質を集めて作った保存食

サケは屋外での寒干し後、囲炉裏の上につるし燻して保存

冬の訪れの前には舟を川などから引き上げる儀式、チプヤンケを行い、豊漁を感謝する祈りを捧げました。冬は陸上での猟のシーズンです。木々の葉が落ちて視界がよくなり、夏場は草が生えていた場所も雪のおかげでかんじきを履いて自由に行動できるためです。シカなどの猟を主に行います。

女性は夏に乾燥させておいた樹皮を使って服を作ったり、と屋内での作業を主にしていました。

衣類の材料となるオヒョウの樹皮を割いたもの。これを縒って糸にして織物にした

降雪量が減って雪が固くなってくるとヒグマの猟です。ねらうのは母グマ。子グマがいる場合は仕留めずにコタン(村)に連れ帰り、大事に育てました。2年ほど育てたのちに「イヨマンテ(霊送りの儀式)」を行い人間に肉や毛皮を与えてくれたことを感謝し、丁重にカムイ(人知の及ばぬ神のような存在)の世界へ送り返しました。

儀式のときに使われる祭壇。ヒグマの頭骨を祀ることが多かった

狩りは泊りがけで行うことも。そういった時はテントをたてるように、身近な木でクチャチセという仮小屋を作って寝起きをしていました。ちなみに札幌から車で2時間ほどの日本海に面した積丹(しゃこたん)町の名前は、漁のため夏にいく場所としてアイヌ語で「サク(夏)コタン(集落)」と言われていたことが由来だとされています。

アイヌの人は「一年」という概念がなかったため、新年のお祝いなどは行いませんでしたが、季節の節目となる夏の始まりと冬の始まりの年に2回、コタンノミ(村の祭り)を行っていました。その際に先祖供養も行っていたようです。

狩猟・採集での暮らしというと、食べ物を求めて常に移動していたように思いますが、基本的には何代も同じ場所で暮らしていました。小規模でしたが、畑作を行うアイヌもいましたし何よりも、自分たちに必要な分だけ狩猟・採集しその地域の動物や植物を獲り(採り)尽くしてしまわなかったためです。アイヌの人たちが自然をよく観察しそのサイクルをじゃましないようにして利用していたことがわかります。

※文中のチプサンケの「プ」、チプヤンケの「プ」、サクの「ク」はアイヌ語表記では小文字となります。

この記事の画像一覧(全5枚)

大きなサイズで見る

キーワード

関連記事

ページ上部へ戻る