アイヌの織物、アットウシに 50年以上携わる職人の工房へ

2018年5月29日 11:00更新

北海道ウォーカー 市村雅代

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2013年に北海道初の伝統的工芸品のひとつに指定された平取町の二風谷アットウシ。母親から娘へと技術が伝えられてきた、樹皮を使ったアイヌの織物です。二風谷で50年以上アットウシに携わってきた藤谷(ふじや)るみ子さんもそのひとり。工房におじゃまして、二風谷でのアットウシ作りについてお聞きしました。

藤谷さんがアットウシを本格的に織りはじめたのは中学卒業後。「当時はどこの家でもアットウシを織っていたの。織らない家の方が少なかったくらい」という時代で、体の弱かった母親に代わって織るようになったことがきっかけでした。

工房はお客さんとおしゃべりをする場、と話す藤谷さん

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その頃は観光ブームだったこともあり、アットウシは着物のためではなく、土産物の材料としての需要が主。藤谷さんもひたすら反物を作って納品していました。そのためあまり仕事におもしろみを感じていなかったそう。また、ひとりで家で行う作業よりも「みんなで笑って過ごしてお金がもらえるのがうらやましかった」と、あえて夏の間だけアルバイトに行った時期もありました。

そんな藤谷さんにぴったりの場が与えられたのは1982年。二風谷にある萱野茂二風谷アイヌ資料館の敷地内にあった伝統的家屋でアットウシの実演販売をすることに。「最初はお客さんの対応にとても苦労しました」と話しますが、夫で木彫師の憲幸さんと一緒に、お客さんと話をしながら商品を作って売るというのは、現在の藤谷さんの仕事のスタイルのベースにもなりました。

同じころ、萱野さんの妻、れい子さんからアイヌ文様の刺繍と着物の作り方を教えてもらったことも大きな転機となりました。「アットウシを好きになったのは、織るだけじゃなくて刺繍も制作もすべて自分でするようになってから。この時、織るのもやっててよかったと思ったの」。

残念ながら、そのチセは2012年に漏電により焼失。チセに置いてあった作品もすべて失ってしまいましたが、何よりも自分の居場所がなくなったことがショックだったそう。翌年、藤谷さんはお客さんと触れ合える場所を、と現在の藤谷民芸店を開きます。開業後は展示する作品も少なく、3年目にようやく今の形になりました。

元は木彫り熊などを置く民芸店だったが、居心地よく仕事のしやすい空間になるよう畳を入れた

お店には、藤谷さんがオヒョウをはいで糸にするまでを示したパネルや、草木染にしたオヒョウが並び、ちょっとしたアットウシギャラリーに。

藤谷さんのアットウシ制作工程は公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構の「アイヌ生活文化マニュアル 織る―樹皮衣―」としてまとめられている。

着物は、アットウシや藤谷さんが個人的に好きだというチカラカラペ(木綿生地に黒や紺色の帯状の布を乗せその上から刺繍をしたもの)まで様々な作品があります。

一旦お客さんの手に渡った作品が好意で戻ってくることも。写真は2000年ごろの作品

アットウシアミプ(アットウシで作った着物)はいずれも高額ですが、アットウシにちょっと触れてみたいという人にはしおり(500円)など気軽なお土産が人気です。藤谷さんに教えてもらいながら、コースターにアイヌ刺繍をしたり、好きな色の樹皮を選んで糸にする糸つみ体験(各2000円)をするのも、アイヌの文化を育んできた二風谷ならではのひとときになりそうです。

いずれもアットウシを使ったもの。左からパンフレット付きしおり(700円)、コースター(各1200円)

藤谷民芸店 ■住所:平取町二風谷 ■電話:01457・2・3408(店舗には電話なし。連絡はこの番号へ) ■時間:9:00~17:00ころ ■休み:不定休(11~4月は要事前連絡) 

※文中のアットウシの「ウシ」、チカラカラペの「ラ」、アミプの「プ」は実際のアイヌ語表記では小文字となります。

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