「彫刻との共演はとてもエキサイティングだった」俳優・若村麻由美がカミーユ・クローデルに捧げたパフォーマティブアートを語る
関西ウォーカー
フランスの女性彫刻家カミーユ・クローデルに捧げるパフォーマティブアート「ワルツ~カミーユ・クローデルに捧ぐ~」の公演映像が、3月7日(水)阪急うめだホールにて開催の「第20回記念フランスフェア2018スペシャルイベント」で初公開される。この公演で語りを担当した俳優・若村麻由美とプロデューサーの宮本尚子にインタビューを行い、本公演を振り返ってもらい、公演の見どころとカミーユ・クローデルの魅力についてたっぷり語ってもらった。
ロダン没後100年を記念し、昨年11月に静岡県立美術館ロダン館で開催された本公演。19世紀のパリ、裕福な家庭で生まれた「私」がカミーユ・クローデルと出会い、自分の人生を通じてカミーユ・クローデルの生き方に寄り添っていく物語。語り、音楽、パフォーマンスが見事に融合したパフォーマティブアートとして好評を博した。公演映像が初公開される3月7日(水)のスペシャルイベントではトークとコンサートも催される。

――若村さんは初演のときからご覧になってるそうですね。
(若村)私が初めて見た2013年以降、毎回違う作品といえる内容でした。今回、私が語りを担当させていただくということで、どのような公演にするのがいいかを宮本さんと一緒に考えたところ、美術館でパフォーマンスと生演奏、そして語りを融合させた「体感アート」にしようという話になりました。
(宮本)初演は小規模での公演だったんですが、長年の友人でもある若村さんも観客として来てくれたんです。この作品が産声を上げたときから一緒にやっている印象です。この公演を開催した2017年はロダン没後100年、2018年はドビュッシー没後100年、カミーユ・クローデル没後75年という節目なので、若村さんとぜひコラボレーションしたいと思って、新しい体感アートとして打ち出そうと美術館での開催を企画しました。
――今回、静岡県立美術館ロダン館で公演を行って、印象に残っていることはありますか?
(若村)私はロダンの「地獄の門」と共演したので、はじめて人間以外と共演しました(笑)彫刻もコミュニケーションがとれるのだと感じて、とてもエキサイティングでしたね。
(宮本)改めて映像で見ると、若村さんが「地獄の門」に語りかけて、何かインスピレーションを受けて、彫刻と共演していることがはっきりとわかるんです。私はプロデューサーとして客観的に見ていて、彼女の語りとパフォーマーと演奏家たちが「地獄の門」の中で、カミーユ・クローデルを描いているような感じがするんですよね。

――若村さんの語りは、力強さと繊細さを持ち合わせた印象でした。
(若村)限りなく演劇に近いんですが、今回の場合は演劇をさらに超えたアート。ロダンの彫刻作品と対峙できるだけの表現力を要求されているんですが、本物の彫刻作品に力を引き出してもらったという感覚がありました。こんなこと、一生に一度だろうなと思います。
(宮本)若村さんは「私」という主人公を9歳から晩年まで語りで演じています。「私」の人生を感じながら、パリの風景やカミーユ・クローデルが見えるんですよね。
(若村)公演のときは「ワルツ」という彫刻が日本にないので出せなかったんですが、映像では登場します。作品について私の語りで表現している場面があるので、作品を見て語りを聞いていただけます。そこは映像の良さでもあり、作品の見どころでもありますね。
――演者側として難しかったポイントはありますか?
(若村)会場が本当に巨大な空間なんです。だからこそ残響がある分、音の響きが言葉にとっては難しい場所でした。言葉の語尾の残響に次の言葉が重なると何を言っているのかわからなくなる。音響スタッフと相談しながら、語りの技術を駆使しました。劇場空間とは違い、語りにとっては今までで一番難しい、ある意味地獄のような環境でした(笑)
――その大変さがわからないぐらいの完成度の高さですね。
(若村)北は北海道、南は沖縄からお客様が来てくださったんですが、皆さん「広い空間で、贅沢な体感アート、ここまで来てよかった」って言っていただいたのが何よりも嬉しくて。それがまた大阪で映像として生まれ変わるということで、さらに嬉しい。当日は映像の後にトークもあるので、演者として裏話もしたいと思っています。あとは作曲家の坂田晃一先生と宮本さんが作詞されたオリジナル曲「カミーユのワルツ」と「MITASORA」が生演奏で聴けるのも今回の魅力かな。聴いているだけで意味なく涙が溢れてくるような美しい旋律です。

――若村さんはカミーユ・クローデルのことはご存知でしたか?
(若村)イザベル・アジャーニの映画を観て知っていました。女性が仕事を持つ事が難しい時代、ましてや芸術家になるということは認められなかった。今はかなり女性が活躍できる時代になりましたが仕事をしながら、愛する人と結婚し、子供を産み、家族をつくるということはまだまだ厳しいように思います。
――認められにくい状況、生きづらさは現代と通じるところがありますよね。
(若村)だからこそ女性は共感できると思います。ロダンの作風が大きく変わったのはカミーユと出会ってからですし、ドビュッシーがカミーユと交際後、別れてから亡くなるまで彼女の彫刻「ワルツ」をピアノの横に置いていました。ロダン、ドビュッシーにとってカミーユは芸術のミューズ。どんなに魅力的で、才能あふれる審美眼をもっていたんだろうなと思います。
――今回の公演で、カミーユ・クローデルの印象は変わりましたか?
(若村)精神病院に入ってからの30年間、人とはほとんどコミュニケーションをとらず、礼拝堂で祈るだけの日々だったそうです。ロダンとの子供も堕胎しており、芸術家としても女としても母としても認められない。自分の存在をすべて奪い取られた状態で精神病院にいる絶望の毎日が、どんなものだったのだろうと考えさせられました。
(宮本)精神病院に入った30年間の情報は、彼女が書いた手紙しか残っていません。芸術家としての30年は素晴らしい作品を手掛け、後の30年は何も作っていない。果たして彼女は不幸だったのか?私たちはその答えを探しながらやっているような気がします。

――映像作品として生まれ変わった作品を、どういう人に観てほしいですか?
(若村)アートが好きで、フランスが好きな方には、当時の匂いを感じてもらえると思いますし、この世界観を知らない方にもぜひ触れてほしい。カミーユ・クローデルの人生を通じて、愛と芸術と孤独、人は葛藤しながら生きていくんだと勇気をもらえるかもしれないですね。
【関西ウォーカー編集部/ライター山根 翼】
山根翼
この記事の画像一覧(全4枚)
キーワード
テーマWalker
テーマ別特集をチェック
季節特集
季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介
全国約900件の花火大会を掲載。2025年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!
ゴールデンウィーク期間中に開催する全国のイベントを大紹介!エリアや日付、カテゴリ別で探せる!
おでかけ特集
今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け
キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介