「隣の芝生も。」も「崖っぷちホテル!」も両方楽しむ!
関西ウォーカー
WEB連載「はーこのSTAGEプラス」Vol.49をお届けします。
劇作家・演出家・俳優の土田英生が率いるMONO。1989年に立命館大学の学生劇団OBを中心に結成した、京都を拠点とするべテラン劇団だ。現在のメンバーは土田を含む男だけの5人。非日常の世界を物語の舞台にしながら、私たちの身近にいるような人たちがそこに息づいている。笑いを交えた絶妙な会話、さらにその裏には社会問題などのテーマが浮かび上がる。この独特な世界観はしみじみクセになる味わいがある。こ~ゆ~劇団、少なくなりました。

新作の舞台は『隣の芝生も。』。「エンタメ好きで、世の中に石を投げたいなと思ってやってきたが、今回は原点に帰ろうと。バカバカしい作品を作ろうと、ベタなぐらいエンタメにしました」と土田。しかも今回は、MONOのこれまでとこれからの活動を見据えた、現代の到達点となるコメディと言う。結成30年を来年に控えるが「アニバーサリーまで待てなかったんです(笑)」。
『隣の芝生も。』は3月に名古屋、東京、大阪で上演され、その後、土田がオリジナル脚本を手がけるテレビドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)が4月にスタートする。舞台とドラマ、両方の話を聞いた。

【物語】
古い雑居ビルの2階。元ヤクザたちが始めた探偵屋の事務所がある。その隣の部屋は、若者たちがやっている創作スタンプ屋。お互い、隣は楽しそうだと思っているが、それぞれに問題を抱えている。元ヤクザの組長・小山田は敵対組織から命を狙われているらしい。スタンプ屋では、メインでやっている兄妹の兄・信之助が1か月前から失踪中。妹は兄の行方を探してほしいと隣の探偵屋に依頼する。信之助は帰って来るが、とんでもない仕事を引き受けていた…。
「『隣の芝生も。』続くとしたら『青くはない』。そういう設定です。2つの話が両方絡み合って、1本の昭和のヤクザ映画のような話になっていく。僕の好きなウディ・アレンの映画『重罪と軽罪』がヒントになりました」。
【創作のきっかけ】
「僕は誰よりも妬み深い人間で、周囲が自分より派手に活躍していると、誰を見ても僕より楽しそうに見えるんです。でも、常に人というのは他人を羨んでいるんだということを去年つくづく思いまして。持っているものに気付かず、持っていないものばっかりほしいというのが人間。そのへんのところをコメディにできないか、と」。

【若い5人が参加!】
2004年以来、男性5人で「ケンカもするけど仲もよく」続けてきたMONO。「この気持ちよさにおぼれていいのか? 変わらないと」と考えた土田は、今回、俳優講座の20代限定ワークショップで出会ったメンバーから5人を起用した。「うまくいけば新しくMONOのメンバーになっていく可能性も」と期待する。「今回の公演を、今後10年やっていけるぞ、と思える公演にしたいんです」。作品には、裏設定に劇団の事情が反映されている。セリフの深読みも楽しい(笑)。
【ドラマの脚本裏話】
土田はかつて、最高視聴率19.6%の大ヒットドラマ『斉藤さん』を生んだ脚本家。MONOの公演と重なり、本番が終わったら即書く、という状態だった。が「やっかいなのは、MONOとドラマの脚本、書くことが重なること。出演と書くことが重なるのはまったく大丈夫」。かつてHEPホールでの公演中、東京から来たプロデューサーが外で待機、終演後そのまま打ち合わせして即入稿したことも。
この4月から始まる『崖っぷちホテル!』も同様だ。崖っぷちに建ち、破産寸前で崖っぷちな状態にある老舗ホテルを立て直していく、シチュエーションコメディの群像劇。最初の数話分の脚本は既に渡した。MONOの公演が始まると「僕はもう、飲みに歩いてられないな」。
『斉藤さん』は、チーフライターだった土田とほかの作家2人と交代で続けた。これは業界では普通。売れっ子作家ほど時間がない。が、連ドラは休めない。今回の『崖っぷちホテル!』は土田のオリジナル。最初から最後まで1人で書ききる予定となっているそう。
【土田ドラマ、固有名詞と回想シーンは禁止】
土田ひとりで書くことが難しい場合を考え、『斉藤さん』ではルールを決めていた。まず、固有名詞は禁止。例えばセリフで「お前は〇〇か」などと、有名タレントらの名前は使わない。舞台公演でも“ローソン”や“セブンイレブン”など店名を言わず“コンビニ”と言う。「この舞台の世界の中にあるコンビニに行ってる、これはいいんですけどね。ドラマの中の世界と現実の世界は、すごく似てるけど違うのでイヤなんです。だから、僕は今まで固有名詞はいっさい使ってない」。
東京、はアリ。「基本的に30年ぐらいずっとあるものはいいんです。でも30年以内のものは絶対出さない。スポンサーに、この名前使っていいよって言われても使わないですね」。電話もそう。iPhoneとかスマホ、携帯すらセリフに出てこない。とは言え、携帯のない世界は無理があるので、「連絡来たの?」「返信したよ」と言う。「スマホ、とか出すと気になるから」。でもパソコンはOK。「自分の中にある勝手なルールをずっと守っているんです。でも、固有名詞が出てこないから、今でも若い子たちが僕の昔の戯曲を上演してくれてるんだと思う」。
そして、もう一つのルール。回想シーンを入れない。「全部、時間通りに作りたいんです。登場人物が『でも…』と言うと昔のシーンが出る、というのがすごくイヤで(笑)。視聴者の人はそんなに気にしてはいないと思うんですけどね」。
【自分のドラマに出ています】
『斉藤さん』では“MONOツアーズ”の旅行者として劇団員たちと出演、『斉藤さん2』では“MONOツアーズ”の添乗員として出演。DVDをチェックしよう。「僕は必ず出てますね。みんなに言わないように、ちょい役で」。『崖っぷちホテル』は公演と重なるので、劇団員たちの出演もなかなか難しいが、期待したい。MONOファンは欠かさずに、そして画面の隅々まで見逃さないように!
演劇ライター・はーこ
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