2人のプロデューサーが語る細田守、そして『未来のミライ』。AnimeJapan 2018公開放送レポ
東京ウォーカー(全国版)
7月20日(金)から劇場公開される細田守監督の最新作『未来のミライ』。3月24日(土)、AnimeJapan 2018の日テレブースでは「金曜ロードSHOW!×スタジオ地図」が開催され、スタジオ地図の齋藤優一郎プロデューサーと日本テレビのターニャこと谷生プロデューサーが細田監督の人物像や気になる最新作のテーマを語った。

齋藤氏は、2006年公開の映画『時をかける少女』以降、細田監督作品のプロデューサーを務め、2011年には細田監督ともにスタジオ地図を設立。ターニャの愛称で知られる谷生氏は、金曜ロードSHOW!のプロデューサーを担当する以前は記者として海外特派員を務めていた異色の経歴の持ち主だ。2人の出会いは2012年の『おおかみこどもの雨と雪』公開時にさかのぼる。
谷生氏は「『おおかみこどもの雨と雪』公開に際し、(日本テレビでは)金曜ロードSHOW!で『サマーウォーズ』を、関東ローカルの深夜の映画天国では『時をかける少女』を放送しました。その時に両作品を観たんですが、すごいなあって泣いてしまって。2010年までエジプトにいたので“時かけ”を知らなかったんですよ。帰ってきて細田監督の作品に出会って、なんて素晴らしい映画なんだろうと思っていたら、作っている人に出会っちゃった」と振り返る。
齋藤氏も谷生氏について「僕と細田監督が谷生さんに出会った時は、監督の取材を一所懸命にメモしていただき、記者魂がこもった熱い記事を書かれていた」と当時の印象を語った。
話は2人のプロデューサーから見た細田監督の人物像へ。谷生氏が「細田さんはすごい人なのにめちゃくちゃいい人。腰が低いし丁寧で、風貌は大きくてクマみたいなんですけど(笑)。優しいテディベアみたいな印象です」とその人柄を語ると、齋藤氏も「監督の優しさは僕も感じます。べたべたとただ優しいわけではなく、人間が大好きで興味があって、一度好きになったら絶対嫌いにならない人懐っこさがある人です。出会った人たちのピュアさ、チャレンジ精神、主体性といったものに惹かれるタイプですね。優しくもありチャレンジャーでもあり、自分の思ったことを信じて『覚悟を持って新しいことに突き進むぞ』という監督だなと思っています。その気持ちは『時をかける少女』で出会った時の印象から変わらない」と話した。

そんな細田監督の姿勢に、プロデューサーとしても影響を受けていると齋藤氏は続ける。「プロデューサーとして色々な判断をしなければいけない時、常に僕の判断基準にあるのは作品であり、その作品を作っている細田監督なんです。その基準がぶれてしまうと僕の判断もぶれてしまうんですが、彼が作る作品や彼の志は周囲の背すじをたださせる。『こういう新しいことやってるんだから、自分もチャレンジしなくちゃいけない。こういう作品を世の中に届けないといけない』と、作品と監督の主体性から、周りが強烈に影響を受けていくんです」とその影響力を語る。
谷生氏も「細田監督は相手を伏し目がちに見て話される方なんですが、その奥には強い意志の力を感じます。『これを伝えたいんだ』というものがあって、それをアニメーションという表現方法を使って世の中に訴えているんだなとすごく感じますね」と細田監督の穏やかさの中に秘められた情熱的な一面を明かした。

谷生氏は、そうした人柄から生まれる作品の魅力にも触れた。「細田監督は『異形』のもの、人とは違うもの、普通ではないと言われてしまうものに対する目線がものすごく優しいんです。それについてインタビューで聞いたことがあるんですが、監督は『だってその方が面白いじゃないですか。人と違うことが面白いんです。そこに物語があるんです』とおっしゃっていて。そういう問題意識というか、何か違うというものに対して、普通の人が目につかないところに物語を転がしていくところがすごいなと感じます」と話す。
齋藤氏は「他者を認めるだけでなく、他者とのぶつかりあいの中から新しい形や新しい考え方、価値観が生まれたら面白いんじゃないか、映画を通して必要なんじゃないかと細田監督は考えていると思います。そして常にポジティブに新しい価値観を肯定する。そういうところから、未来を向いている、人というものを信じていると感じます」と、細田監督の視点を語った。
ブースでは『未来のミライ』の予告映像も上映され、いよいよ最新作の話題へ。細田監督の手描きの絵コンテを読んだという谷生氏は、「『未来のミライ』は細田監督の過去の作品の系譜にあると感じながらも、描く家族や親子の物語を超えたところで、命や人の営みというテーマを力技で提示する。一つの家族の視点を描くんだけど、その先にはものすごく大きな物語があるという印象を受けました」とファーストインプレッションを明かした。
齋藤氏は、細田監督の映画の作り方に言及しながら「細田監督自身の身近な体験が作品にインスピレーションを与えていて、自分の家族の中で起こっている出来事は世界の家族の中でも起こっていると思っています。自分の家族の中での喜びや問題意識をみんなで喜んだり解決できたら世界中の人々を幸せにできるんじゃないか。そういったことをアニメーションという表現で映画を作り、その映画を通して世界中の人と共有したいという願いをこめて作っています」と語り、テーマについても「今回は4歳の子供の視点を通して、どこにでもある家族の中から命の連鎖や人生のバトンといった普遍的な大きなものを描こうとしていて、例えば自分の人生の文脈を振り返るような、これから先の未来を生きていくために必要なものが詰まっている気がする」と期待をのぞかせた。
「今回の映画は4歳の男の子の見ている世界や未来がどんなものか、僕ら(大人)になると忘れがちですが、自分が4歳だったときのことを思い出したり、自分の子供の頭の中をのぞきこむような体験、すごく生命力があふれているような映画になるんじゃないかと思いますね」と意気込む齋藤氏。2人のプロデューサーの尽きることのない細田監督トークは、7月の公開を待ち遠しくさせる濃密な内容だった。

国分洋平
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