「どうぞ憎んでください」優しい夫に見えたのに夜泣きする子の隣で爆睡「最低夫と義母のテンプレ」はSNSの体験談がモデル【作者に聞く】

東京ウォーカー(全国版)

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義母が家に来る——。その時の対応も対象的な二人の夫。(C)横山了一/ウォーカープラス

一見すると、妻にスイーツを買って帰る気立てのよいエリート夫。ところが、家では夜泣きする娘の隣で爆睡し、「オレの箸どこにあるの?」と妻に尋ねる。一方、無職でギャンブル好きの夫は、子どものお漏らしにも冷静に対応し、料理までこなしている。最初は「どう考えてもギャンブル夫の家庭が崩壊するだろう」と思わせる設定だが、物語が進むにつれて印象は逆転していく。横山了一さん (@yokoyama_bancho) の「どちらかの家庭が崩壊する漫画」は、夫や義母の何気ない言動に妻が感じる“モヤモヤ”を描いた作品だ。今回は、横山さんと妻で漫画家の加藤マユミさんに、読者の感情を刺激するキャラクターがどのように生まれたのかを聞いた。

一見「いい夫」なのに、妻だけが感じる違和感

「どちらかの家庭が崩壊する漫画」01(C)横山了一/ウォーカープラス

「どちらかの家庭が崩壊する漫画」02(C)横山了一/ウォーカープラス

「どちらかの家庭が崩壊する漫画」03(C)横山了一/ウォーカープラス

作品に登場するシュウは、仕事のできるエリートで妻へのお土産も欠かさない。一方で、夜中に娘が泣いていても起きず、自分の箸さえ妻に探させようとする。

対照的なのが、無職でギャンブルにお金をつぎ込むゴンだ。収入面ではシュウに遠く及ばないものの、子どものトラブルにはすぐに対応し、料理もこなす。夫として、父親として妻子に寄り添っているのは、むしろゴンのほうなのである。こうした「外から見た印象」と「家庭内での実態」のギャップが、本作の大きなポイントとなっている。

シュウのキャラクターを作る際、横山さんが参考にしたのは、Instagramなどに投稿されているエッセイ漫画だった。実際の家庭で起きている出来事を読むうちに、「こういう夫は嫌だ」と感じる要素を膨らませていったという。

露骨な悪人ではないけど“嫌な義母”

一方、シュウの母親については、普段は互いの作品にあまり口を出さない漫画家夫妻の間でも珍しく意見が交わされた。横山さんが当初イメージしていたのは、最初から強い悪意を向けてくる義母だった。しかし、加藤さんから「もっと物腰が柔らかく、良かれと思って自分の意見を押し付けるタイプがいいのでは」と提案された。

加藤さんが参考にしたのは、Xで見かけた義母への愚痴だった。世の中にはさまざまなタイプの義母がいることを知り、その記憶をキャラクターづくりに生かしたのである。結果として生まれたのが、あからさまな悪人ではないのに、妻の心をじわじわと追い詰めていく義母だった。加藤さんはその感覚を「真綿で首を締めるような」と表現する。

夫のシュウについても、あえて「いい人に見えるけれど、お嫁さんだけが『うっ』となる」人物像を意識した。読者が「こういう人、いる!」と感じるリアルさが、シュウへの強烈なヘイトにつながっている。

ただし、横山さん自身がシュウのような父親だったわけではない。子どもが風邪を引いた際には、加藤さんと交代で抱っこをしながら夜中に外を歩くなど、育児にはかなり取り組んできたという。その実体験から生まれた“不安感”や“手持ち無沙汰感”は、作品にも反映されている。

「どうぞ憎んでください」読者の怒りも作品の狙い

シュウには読者のヘイトが集まりやすいが、横山さんはそこをあえて狙っている。自身は育児を経験してきたからこそ、「育児を頑張らない人のことは、こう描いてもいいだろう」と考えたという。エッセイ漫画のように作者本人へ批判が向くのとは違い、創作上のキャラクターなら「どうぞ憎んでください」というスタンスだ。さらに、物語の最後にはシュウたちに鉄槌がくだる展開も用意されている。読者には思う存分キャラクターを憎んでもらい、そのぶん最後にはスカッとしてもらいたい。そんな意図が込められている。

一方、加藤さんは「自分のキャラクターがあまり憎まれるのはキツイ」と、横山さんとは少し違う感覚を明かす。普段はお互いの作品に干渉しないという漫画家夫妻だが、作品づくりに対するスタンスには、夫婦でもしっかり違いがあるようだ。

無職とエリート、ギャンブル好きと仕事のできる夫。表面的な条件だけを比べれば、どちらが“良い夫”なのかは明白に思える。しかし、家庭の中で本当に問われるのは、収入や肩書だけではない。妻や子どもに向き合っているのか。相手の気持ちを想像しているのか。何気ない言動の積み重ねが、家族の関係を少しずつ変えていく。

「どちらかの家庭が崩壊する漫画」は、そんな家庭内の小さな違和感を積み重ねながら、読者の感情を揺さぶっていく作品である。シュウや義母に「こんな人、身近にいる……」と思わず重ねてしまった人ほど、この先に待つ“鉄槌”を見届けたくなるはずだ。

■取材協力:横山了一、加藤マユミ

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