ウソみたいな成功と転落に苦笑。元フィギュアスケーターの壮絶な実話!<連載/ウワサの映画 Vol.31>

東京ウォーカー(全国版)

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コメディタッチなんだけど、人さまの半生を笑ってもいいものかと気を揉んじゃう「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」。2度のオリンピック出場を誇る元フィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの過酷な生い立ちから、かの有名な”ナンシー・ケリガン襲撃事件”の疑惑により人生を狂わせるまでを描きます。今年のアカデミー賞では主演・助演女優賞などの候補となり、”鬼母”役のアリソン・ジャネイが助演女優賞を受賞しました。口を開けば「ファ×キン!」ばかりの、類友式に拡大するヤカラの輪…。生活環境の重大さを痛感しつつも、彼女たちの狂騒がどこか間抜けで、結局笑っちゃう~(当事者の皆様、許してね)。

トーニャ役は、「スーサイド・スクワッド」のハーレクイン役で人気のマーゴット・ロビー。映画への楽曲提供を拒否するアーティスト続出の嫌われ者役に、ギラギラの役者魂で挑みます!©2017 AI Film Entertainment LLC


貧しい家庭に生まれ、幼少のころから母親(アリソン・ジャネイ)の暴力と罵声の中で育ったトーニャ(マーゴット・ロビー)。3歳からスケートを始めた彼女は、天性の才能と努力により、20歳でアメリカ人初のトリプルアクセルを成功させます。彼女のトップスケーターの座は不動のものとなり、1992年にはアルベールビルオリンピックの代表選手に。そして運命の1994年。リレハンメルオリンピック選考会を控えたある日、彼女の元夫・ジェフ(セバスチャン・スタン)の友人がトーニャのライバルであるナンシー・ケリガンを襲撃する事件が発生! やがてジェフの関与が発覚し、疑惑の目を向けられるトーニャ。栄光をつかんだ彼女でしたが、この事件を境に転落が始まります…。

CGを効果的に使ったスケートシーンは、アングルも新鮮で迫力満点。女子選手としては伊藤みどりに続く史上2人目の成功となったトリプル・アクセルの再現にも注目!©2017 AI Film Entertainment LLC


事件の発端は“被害者・トーニャ”…、っていう皮肉がキツいなー。殺害予告の脅迫状がトーニャに届いたことがきっかけで、彼女の元亭主がナンシーに脅迫状を送ることを思いつき(短絡的すぎるっ)、よもやの襲撃事件に発展してしまったという…。なんとか出場できたリレハンメルオリンピックでは”靴紐トラブル”で8位に終わり(”悲劇のヒロイン”ナンシーは銀メダル!)、五輪後に再開された裁判で「”スケート界追放”判決」というトドメの一撃をくらいます(泣)。

ウィンター・ソルジャー/バッキ―・バーンズ役とは打って変わって、衝動的に暴力を振るう情緒不安定気味なジェフを演じるセバスチャン・スタン(左)©2017 AI Film Entertainment LLC


そんな主人公を演じるマーゴット・ロビーの、オスカー候補にもなった振り切れたビッチぶりが実に痛快。撮影4カ月前から週5回1日4時間もスケートを猛特訓し、アメリカ西部なまりの英語(マーゴットはオージー)で気合の熱演です。大好きな父親には幼い時に去られ、以降は母親からも彼氏からもDVの嵐…。愛を知らないなりの生き方しかできない不器用さで同情を引く一方、目も当てられない悪態でブーイングを煽ります。貧しさゆえに自作したお粗末なドレス姿の彼女を冷遇するような審査員には、もっと暴言吐いてやれと思いましたけど(笑)。「悪いのは母親、ジェフ、審査員、世間!」というスタンスのトーニャですが、「自力で人生建て直せ」なんてきれいごとはとても言えない。彼女には支えとなる人もおらず、意識も低く、だから軌道修正という発想すらなかったわけで。無限の悪循環にもがく姿が、なんとも残念…。

15歳のトーニャがジェフと恋に落ちて間もなく、彼の暴力が常態化。「暴力を振るわれるのは自分のせい」と思い込む習性から、謝られる→よりを戻すのループ…©2017 AI Film Entertainment LLC


すべての元凶はこの人ですよ…、アリソン・ジャネイにオスカーをもたらした”世にも恐ろい&腹黒いお母さん”! 最後に流れるご本人の映像を見ると、あながち誇張したわけでもなさそうで…。 貧困脱出のために「娘を利用して一発逆転だ!」なんて企んでるくせに、「誰がレッスン代を工面してやってんだっ」と娘を罵倒する思考回路が理解不能。娘相手に流血のケンカとかしちゃいますから、このママ。彼女が、彼女に似て品のない娘を、優雅なフィギュアスケート界ではなくほかのスポーツ界に送り込んでいたらどうなってただろう…、なんて想像しちゃう。

”ホワイトラッシュ”と呼ばれる、学もなく低所得の母親ラヴォナ(アリソン・ジャネイ)。横柄で毒舌、娘は単なる”貧困脱出のカギ”。肩に乗せた鳥にも厳しいです…©2017 AI Film Entertainment LLC


当事者たちのインタビューをもとに脚本が書かれていますが、事件に関しては証言が食い違いまくり! あえて白黒つけない演出が、泥仕合の滑稽さをエスカレートさせていて巧かった。この件絡みの明らかな「真実」は、最大の被害者はケガを負ったナンシーってことと、事件の実質首謀者ショーン・エッカート氏はイカれてるってことくらい?(こんな人と関わるのはまっぴらゴメンだ!)。あっ、もうひとつ。ろくでもない環境の中でもクサることなく上を向き、一度はトップの座をつかんだトーニャの”才能”と”不屈のファイティングスピリッツ”…、これもホンモノ! 【東海ウォーカー】

ジェフの友人・ショーンさん(ポール・ウォルター・ハウザー)。自称・元諜報員ですが実際はニート。元諜報員(?)らしく、いかにも深刻そうに証言してますが、ほぼ妄想話です!©2017 AI Film Entertainment LLC


【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします!  最近のお気に入りは「友罪」(5月25日公開)の瑛太!

おおまえ

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