佐渡 裕語る!恒例夏のオペラは『魔弾の射手(しゃしゅ)』 大がかりな演出に大合唱、そして悪魔!

関西ウォーカー

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今年の佐渡裕は忙しい。レナード・バーンスタイン生誕100年記念で、バーンスタイン最後の愛弟子の佐渡は、ひっぱりだこだ。今年1月からワシントンのナショナル交響楽団の演奏会でアメリカデビューを果たし、音楽監督を務めるオーストリアのトーンキュンストラー管弦楽団の全国ツアーも(関西では5/12(土)京都コンサートホール・大ホール、5/19(土)フェスティバルホール 問TEL:0570-200-888キョードーインフォメーション)。「今年、さんざんバーンスタインを振って、また当分やらなくなるかもしれません」と語る佐渡。プログラムも選りすぐりなので、聴き時の今年、外したくない。

製作発表で『魔弾の射手』の魅力と意気込みを話す佐渡 裕芸術監督提供=兵庫県立芸術文化センター 撮影=飯島隆


そして、兵庫県立芸術文化センターの佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2018。毎夏恒例の人気オペラ、今年は佐渡が「僕自身もワクワクしている」と語るウェーバーの『魔弾の射手(しゃしゅ)』だ。全3幕、ドイツ語上演・日本語字幕付き。

【物語】

ドイツのボヘミアの森。狩人マックスは明日、恋人アガーテとの結婚を賭けて射撃競技会に挑むことになっている。が、マックスは絶不調。悩む彼に、悪魔の手下の狩人カスパーは、百発百中だという魔弾の鋳造をそそのかす。不吉な予感におびえるアガーテ。深夜の狼谷(おおかみだに)で悪魔ザミエルと取引したカスパーは、マックスと魔弾を鋳造する。そして、運命の射撃競技会が開催される…。

【今、上演する意義】

「戦争によって多くの人の命が奪われた時代に生まれた作品で、過ちを犯す人間がどう救われるかという精神性も深く表されています。時代は違っても、戦争や兵器が話題になる今、僕らが失ってはいけないものを考える機会となる作品だと思います」。また佐渡は、この作品を夏のオペラの先を見据えて選択。「ウェーバーはワーグナーに大きな影響を与えた人。いつかはワーグナーのオペラも取り上げたいと考えているので、そこへの橋渡しという作品でもあります」。

【音楽的魅力】

「指揮者のコンクールにもよく使われる素晴らしい序曲には、作品の世界観が現れています。ホルンのアンサンブルや狩人の大合唱など、聴衆の想像力をかき立てる、とても魅力的な音楽です」。

【これまであまり上演されなかった理由】

(1)演出の難しさ

総勢60人の大合唱団はもとより、嵐の中で魔弾を鋳造し悪魔が登場する“狼谷”のシーンをどう演出するかがポイントだ。「元のト書きには、火の玉が飛んで来るとか。ゲームでもショッキングなシーンが出てくる現在、その怖さを実際の舞台でどう表現するかが課題」。

(2)キャスティングの難しさ

モ-ツァルトの『魔笛』と同じ“ジングシュピール”というセリフを交えたドイツ語上演のため、ドイツ語圏以外の上演機会が少なかった。主演には体力とドラマ性が要求されるため、英雄的な強い歌唱を担当するヘルデン・テノールと呼ばれる歌手が必要。さらに、セリフがあるため日本人でもドイツ語に長けた歌手でないとキャスティングできない。

【この難問を見どころに転換!】

佐渡「『魔弾の射手』の大きな見どころとなる”狼谷”の舞台模型」 装置デザイン=フリードリヒ・デパルム提供=兵庫県立芸術文化センター 撮影=飯島隆


(1)演出

ドイツ出身のミヒャエル・テンメ。世界を飛び回るベテラン演出家で、作品に即した正統派の解釈が身上だ。会見では狼谷のシーンの舞台模型が展示された。錆びついた大砲やがれき、廃墟など、最大の宗教戦争だった三十年戦争の後の風景が取り込まれた舞台美術。テンメは、このシーンにプロデュースオペラでは初となる舞台機構を巧みに利用した仕掛けを用いる。ダイナミックな演出は必見!

(2)キャスト

マックス役に、現代最高峰と言えるヘルデン・テノールの2名がそろった。今年2、3月にはザクセン州立歌劇場でも同役を演じた、ドイツ生まれのトルステン・ケール。片やバイロイト音楽祭で絶賛を浴びた、英国を代表するテノール歌手クリストファー・ヴェントリス。両者ともにワーグナー作品などで活躍し、国際的評価の高い歌手だ。

日本人キャストも、ドイツで“宮廷歌手”の称号を受けている侯爵役・小森輝彦、カスパー役・髙田智宏が登場する。日本人の“ドイツ宮廷歌手”は現在4名。そのうちの2名が出演し、アガーテの父クーノー役のベルント・ホフマンも“宮廷歌手”。ものすごく贅沢なキャスティングが実現!

【作品をより楽しむためのイベント】

佐渡オペラでは、いつも公演前に作品の関連イベントが用意されている。これがまた楽しい。上演の機会が少ない『魔弾の射手』は作品に関する資料も少ないので、予習したい人のためには最適だ。ひとつはプレ・レクチャー。今回は5/9(水)「第1回 不思議な世界現る~『魔弾の射手』」、6/13(水)「第2回 憧憬と夢想のロマン派~ドイツオペラの幕開け」に行われる。わかりやすい知的楽しさに、いつも人気が高い。そして、県内ツアーを開催するハイライトコンサートも。ピアノ&おもしろ解説に、ドイツ人ナビゲーターと関西で活躍する4人の歌手で『魔弾の射手』の見どころ聴きどころを“ええとこどり”して紹介する。※5/13(日)多可町・ベルディーホール、5/20(日)たつの市・アクアホール、5/26(土)篠山市・たんば田園交響ホール 問い合わせは各ホールへ。¥500。

【はーこからひとこと】

ダークサイドへ堕ちていく人間の心は、映画『スター・ウォーズ』の主題のよう。また、恋物語でもあり、悪魔が登場するドラマチックでスリリングな展開もおもしろい。この作品は演出がポイントだ。仕掛けが大きくなるほど予算はかかる。しかも、キャストに世界的豪華実力派がそろった。クオリティを考えると、他の劇場ならチケット料金は2~3倍高いだろう。県立の劇場だからこそ、の金額だ。「値打ちあるわぁ」という声は、関西では最大の賛辞に等しい。

上演の機会が少ない作品なのに、今年はドイツをはじめ同時期に東京でも『魔弾の射手』を上演する。東京は読み替えを得意とする前衛的な演出。これ、東京での上演はいい。でも、芸文センターでの『魔弾』の上演は、わかりやすく真っ向勝負の演出が好ましいと私は思う。上演時間、約3時間。値打ち、あります!   

演劇ライター・はーこ

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