破天荒JKに重ねる”あの頃”にホロリ。イタくて輝かしい青春のすべて!!<連載/ウワサの映画 Vol.35>

東海ウォーカー

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脚本&主演を務めた「フランシス・ハ」のハメ外し具合が”ただものじゃないオーラ”を放ち、一気にブレイクしたグレタ・ガーウィグ。そんな彼女が、自らの書きおろし脚本で初単独監督デビューを飾り、いきなりのアカデミー監督賞・脚本賞・作品賞・主演女優賞・助演女優賞ノミネートを果たしたのが「レディ・バード」です。シアーシャ・ローナンちゃんが、高校卒業を控え悩み山積の全力女子高生を快演。スクリーンの中に”生きる”ヒロインの存在が鮮烈で、自分探しに奔走していた「フランシス・ハ」のグレタにも通じる愛しさ!

ゴールデン・グローブ賞(ミュージカル/コメディ部門)では作品賞&主演女優賞を受賞。やがて大切な一部となる信仰も「今は興味なし!」な主人公が、あっちこっちでもがきます!Merie Wallace, courtesy of A24


舞台は2002年、カリフォルニア州サクラメント。閉塞的な片田舎のカトリック系高校から、大都会NYの大学進学を夢見るクリスティン(シアーシャ・ローナン)は、自分を”レディ・バード”と名付け、周囲にもそう呼ぶよう強要しています。高校生活最後の年、地元の大学に行かせたい母(ローリー・メトカーフ)と大ゲンカをした彼女は、走行中の車から飛び降り右腕を骨折…。その後、親友ジュリーと一緒に受けたミュージカルのオーディションで目を付けたダニー(ルーカス・ヘッジズ)との恋を経て、父親に東部の大学に入るための助成金申請書を頼みます(母親には内緒!)。やがて彼女は、校内の人気者グループにいるバンドマンのカイル(ティモシー・シャラメ)と急接近。ジュリーとは疎遠になる中、東部の大学から一通だけ”補欠合格”の通知が届くのでした。友達や彼氏や家族、将来について、クリスティンが出す答えとは…。

失業中の父(トレイシー・レッツ)、看護師の母、スーパーで働く養子の兄とその恋人と5人暮らしの主人公。裕福な彼氏ダニーとは違い、典型的な中流階級ですMerie Wallace, courtesy of A24


サクラメント出身のグレタが、少女の心情面に自伝的要素を盛り込み、「私は都会で羽ばたくのよ!」と鼻息も荒い”17歳”をユーモラスに暴れさせます。「ちゃんと文化がある土地で勉強したい」とイキがったり、経済的に苦しい家庭を恥じて他人の立派な家を「これ、私んち」とウソついたり…。ここではない場所に憧れ、持って生まれたアイデンティティと葛藤する姿にバック・トゥ・ザ・思春期です。名前までも拒絶して”レディ・バード”で通そうするアホさも意地らしい(笑)。恋に恋して日々ターゲットを探し、親密で残酷な友情を経験し…、と、多忙で濃厚な高校最終学年特有の、終わりが迫り来る切なさもリアルです。「放り出される」感に絶望してたなー、私も。

”自分の存在を否定する時の強い羞恥心”を描きたかったというグレタ。すべて創作というエピソードの数々は、普遍的ながらも、持ち前のユーモアセンスにより軽妙な味わいに!Merie Wallace, courtesy of A24


「つぐない」「ブルックリン」に続き本作でもオスカー候補となったシアーシャをはじめ、「スリー・ビルボード」のルーカス・ヘッジズ、「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメら、人気・実力ともに最旬の若手が奇跡の競演! シアーシャのコメディエンヌぶりが特に見事で、青春時代を生きる女子の真剣さとイタイタしさを両立させた演技力はさすがオスカー常連さん。笑わせておきながらも、ちゃんと胸を打ってきます。ルーカスは優しくてマジメな理想の男の子を、ティモシーはセクシーな初体験相手(いいなぁ~)を演じ、それぞれがヒロインにもたらす”甘酸っぱい恋”と”オンナになっちゃった後の現実的な恋”に、年を忘れてドキドキ~。

念願の初体験も、初めてとは思えない攻めっぷりがあっぱれなレディ・バードちゃん。ティモシーが安定のかっこよさで、彼のいる高校生活がうらやましくてなりません…Merie Wallace, courtesy of A24


思春期の女子には付きものの母娘のドラマが核となる本作。いつのまにやらこんがらかってしまった2人、どちらにも感情移入させる巧い描き方です。バトル→仲直りして買い物へ→再びバトル!…という母とのケンカの無限ループ(毎度ほぼ同じテーマ!)は私にも身に覚えがあり、「人が親しさを表せる方法のひとつがケンカ」というグレタの言葉に救われる思いです。グッとくるのが、運転免許を取ったヒロインがサクラメントの街をドライブし、その景色を母親と同じ目線で見つめるシーン。2人の距離が劇的に縮まった瞬間が、泣ける!

ベットに座り鏡のように向き合う冒頭シーンから、分身のように見える母娘。「生きた時代の違いが、母と娘の関係に与える影響を軽視しすぎ」というグレタのコメントが刺さる…Merie Wallace, courtesy of A24


巣立ちの時に訪れる”初めての感情”をかみしめ、ラストでは本名を名乗り、”レディ・バード”を卒業するヒロイン。「”愛情”と”注意を払う”のは同じこと」というセリフが、彼女と私に、「たとえ気に入らない形であっても、自分は無限の愛と恩寵の中にいたのだ」と気付かせます。時に人を傷つける暴言を吐くけれど、その”正直さ”こそが、このヒロインと映画が愛される理由! 「無茶もしたけど楽しかったな、あの頃」と、誰もが青春時代を生き直すことでしょう。ごていねいに、高校卒業直後にやらかしがちな”泥酔事件”を描くのも忘れないグレタですが…、うぅ…、その黒歴史は思い出させないでほしかったっ。【東海ウォーカー】

時代設定にしっくりきてるロケ感にも注目です。グレタが大学生だった2002年頃から、イラク戦争などにより世界が激変していくんですね…。ちなみに、右が親友のジュリーちゃんですMerie Wallace, courtesy of A24


【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします!  最近のお気に入りは「万引き家族」(6月8日公開)の城 桧吏(じょう かいり)くん!

おおまえ

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