駅弁メーカーと駅弁大会を開催する百貨店が「駅弁」の魅力とこれからを分析!
関西ウォーカー
全国各地の有名駅弁が購入できる東京駅の「駅弁屋 祭」は、多い日に1日で15000個を販売するとも言われる。また、関西では15年に新大阪駅の「エキマルシェ新大阪」内に「旅弁当 駅弁にぎわい」がオープンし、こちらも連日大盛況。ここ数年の駅弁ブームを体感することができる。諸説あるが一説には神戸が発祥だと言われ、その歴史は130年以上という駅弁。今も愛され続ける秘密や今後どのように進化するか、ヒットの仕掛け人である株式会社淡路屋取締役の柳本雄基さんと、阪神梅田本店フード営業統括部バイヤー/食品催事担当の大田勝彦さんにその方向性を聞いてみた。<※情報は関西ウォーカー(2018年5月22日発売号)より>

見た目にも楽しい駅弁を続々と発売する「淡路屋」
「現在のお客様の嗜好は、2つの傾向があると思います」と言うのは神戸を拠点に駅弁を製造・販売する「淡路屋」の柳本さん。

創業115年の歴史を持つこちらは、明石海峡大橋の開通を記念して作られた「ひっぱりだこ飯」が全国的人気を誇るメーカーだ。「例えば平日なら『旅のにぎわい御膳』のような幕の内弁当的なものが人気ですが、休日になると蛸壺風の陶器に真ダコなどがたっぷり入った『ひっぱりだこ飯』のような、『コレを食べるためにココに行ってみよう』と思える特徴のある駅弁が出たりと、売れ筋が分かれます」と言う。淡路屋はなかでも特徴のある駅弁作りに力を入れていて、「特別感を出すという点では、ウチはパイオニア的存在(笑)。『神戸のあっちっちステーキ弁当』のように加熱式の駅弁を発売したのも当社が初めてですし、かつては神戸ワインが誕生した時に、それに合わせてワインの小瓶が入った駅弁も販売。最近では新幹線のエヴァンゲリオンプロジェクトやリラックマなど、さまざまなコラボ駅弁も手がけています」と柳本さん。『ひっぱりだこ飯』などのほかにも、京都駅で販売している老舗「原了郭」の黒七味を使った京都牛膳1000円は京都らしさを演出するため竹をイメージした容器にするなど、見ただけでもワクワクするような駅弁を作っている。
百貨店の駅弁大会の西の雄が、新作駅弁でこだわることとは?
一方、「都心部は盛況ですが、地方の小さな駅の駅弁を製造している企業は、事業をやめてしまうぐらい厳しいところも多いんです」と言うのは阪神百貨店の大田さん。全国各地で行われる駅弁大会のなかでも、その規模と歴史から東京の京王百貨店、熊本の鶴屋百貨店と並び三大大会と言われ、毎年1月に開催される「阪神の有名駅弁とうまいもんまつり」の立ち上げからかかわっているバイヤーだ。

交通の高速化で列車が停車する駅が減少し、しかも在来線との乗り継ぎ時間は短縮され、駅弁を買う時間の余裕がなくなってきた現在では、普通に鉄道を利用しているだけではなかなか気が付かない駅弁もある。そのような駅弁を「より多くの人に知ってもらい、日本の食文化としての駅弁を守りたい」という思いで携わっている。では、最近の消費者の嗜好についてはどう見ているのか。「催事にお越しになるお客様は『あの時、旅行先で食べた駅弁の味をまた味わいたい』と、求められる方が多いんです。既存の駅弁はもちろん登場しますが、催事を盛り上げ、より多くの方に来ていただくため、新作の駅弁をメーカーさんに作っていただいたりもしているんです。その際は、もとの駅弁のベースとなる味付けなど伝統は守るようにお願いしています。例えばカニ弁当ならカニの種類を増してより豪華にするといった感じで、それまでの駅弁をバージョンアップさせたものを作っていただき、催事が終わったあとでも、現地で長く愛されるような駅弁になるように心がけています」と言う。そうした伝統を進化させた新作のほか、できたてが味わえる実演販売なども行われる催事は01年から開催されているが、「駅弁のファンは年々増えている」という手応えがあるそう。

新作が出ても変わらないのは、その土地の伝統と独自性
最初はおにぎりと、簡単なものだったと言われる駅弁は、鉄道の発達と共に、その土地ならではの独自性を出すためさまざまな食材が詰め込まれるようになり、日本固有の食文化として愛されてきた。淡路屋と阪神百貨店では一見アプローチの仕方が違うように見えるが、根底にあるのは伝統を守りその土地の独自性を打ち出すことだ。柳本さんは「駅弁は特別な日に味わう“ハレの日”のものなんだと思います」と言う。だからこそ百貨店の催事にはその特別な味を味わいたいと多くの人が訪れる。

素材の改良やユニークな器、キャラクターやイベントとのコラボなど、さまざまな新作はこれからも発売されていくが、駅弁から“特別感”が失われることはないだろう。【関西ウォーカー】
■淡路屋 電話:078-431-1682 駅弁の直営販売所:JR新神戸駅、JR神戸駅、JR西明石駅にあり。ほか一部商品はJR大阪駅などでも販売
■阪神梅田本店 住所:大阪市北区梅田1-13-13 電話:06-6345-1201 営業時間:10:00〜20:00(曜日、フロアにより異なる) 交通:阪神梅田駅、地下鉄御堂筋線梅田駅と地下で直結
森田周子
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