デヴィッド・ボウイも認めた写真家・鋤田正義インタビュー アーティストとのユニークな関係の築き方とは?

関西ウォーカー

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 デヴィッド・ボウイやイギー・ポップなどの海外アーティストのポートレートやアルバムジャケットなどを手がける写真家・鋤田正義に迫ったドキュメンタリー映画「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」が公開中。今回、鋤田にインタビューを行い、「撮る側」から「撮られる側」になった本作の思いや有名アーティストたちとの関係性をどう築いたか、そして大阪の思い出などを語ってくれた。

インタビューに応じてくれた写真家・鋤田正義


映画「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」は、デヴィッド・ボウイやイギー・ポップ、マーク・ボラン、忌野清志郎など有名アーティストを撮り続けてきた写真家・鋤田正義の創作活動の裏側に迫ったドキュメンタリー作品。YMOのメンバーでもある細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏のほか、布袋寅泰、MIYAVI、山本寛斎、永瀬正敏、糸井重里、リリー・フランキーら著名人たちの証言を織り交ぜ、鋤田の仕事ぶりや人柄に迫っていく。

映画「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」劇中カット(c)2018「SUKITA」パートナーズ


これまで数々の有名アーティストを被写体にしてきた鋤田。本作で「撮る側」から「撮られる側」になり、新しい発見があったと話す。「今回出演してくださった方々の中には、ミュージシャン以外にも糸井重里さんのようなクリエイターもいます。作品を観た人からこんな交友関係があったんだという声を聞きますが、僕にとっては普通のこと。それが知られていなかったことに気がつきました。この作品のおかげで、写真の裏側の交友関係などを知ってもらうことができました」

1938年、鋤田は福岡の炭鉱町で生まれた。高校時代には自転車で片道50kmの山越えをして見に行くほどの映画好きだったという。将来は映画監督になりたかった鋤田は、なぜカメラの道に進んだのか。理由を次のように話す。「映画監督になりたかったけれど、どんな道筋を辿ればなれるのかがわからなかったんです。そんなとき、写真雑誌で専門学校を見つけて。映画監督はできないけど、写真はなんとかなるかなって思いました」

大阪の思い出を話す鋤田正義


鋤田と大阪には深い関わりがある。大阪にある写真の専門学校に通っていたため、学生時代は大阪で過ごしていた。「僕らが2期生で学校がまだできて間もない頃でした。学校は天王寺の松虫通りにあって、近くに下宿していました。大阪に来た頃は通天閣が珍しくてよく行ってました。今はもう相当変わっていますよね。アメリカ村なんてなかったですから」

写真学校を卒業後、写真家・棚橋紫水への弟子入りを経て、大阪の広告代理店に就職。1968年にアートディレクターの宮原鉄生とともに手がけた広告写真が高く評価され、世界で活躍するきっかけとなった。鋤田はこの広告写真が、すべての活動の礎になっていると話す。「海外で活動するときは、いつもその作品を持っていました。マーク・ボランやデヴィッド・ボウイにも見せて撮らせてくれとお願いして。あの作品がなかったら、何も生れなかったのかもしれません」

映画「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」(c)2018「SUKITA」パートナーズ


鋤田の作品で人生が変わったのが、布袋寅泰。鋤田が撮ったT・レックスのマーク・ボランの写真を楽器屋で見た布袋は、その写真に触発されギターを始めた。鋤田は布袋からその話を聞いたとき、驚きつつも改めて写真の重要性に気づいたとも明かす。「自分の写真がどうかは関係なく、写真自体に力があるんだなと実感しました。映画と同じように一枚の写真がそれぐらいの力をもつ場合があるから、手を抜くことができない。もっといい写真を撮らないと、と思いましたね」

鋤田の作品で最も印象的なのが、デヴィッド・ボウイのポートレート。鋤田はデヴィッド・ボウイと40年以上も親交を結び、写真を撮り続けた。その中で、京都で行われた撮影を振り返る。「それまでポートレートやライブでの写真を撮ってたんですが、彼が京都で撮ってくれってことで撮ったんです。電車に乗ったり市場に行ったり、彼が好きな場所とか好きなことをやってるのを狙って撮っていく。アドリブばっかり面白かったですよ。その頃はボウイをずっと撮っていたので、関係性はできていました」

映画「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」(c)2018「SUKITA」パートナーズ


数々の海外アーティストと交流のある鋤田だが、意外にも英語は話せない。しかし、それが武器だったのかもしれないと振り返る。「最近は、英語ができないことが武器になっていたのかなって思います。向こうは僕をどういう立場や目線で見ているのかなってわからないし、英語がわからないからこそサービスでいろいろやってくれていたのかもしれない。僕は、英語ができないという弱みをもったフォトグラファー(笑)だから向こうは微笑ましく接してくれているのかもしれないです」

アーティストとの関係性の築き方もユニーク。YMOのメンバーも本作で鋤田のことを「友達のような関係」だと話している。「YMOとは遊んでましたね(笑)レコーディング中には流行っていたインベーダーゲームやったりして、しょっちゅう遊んでました。一人ずつレコーディングしているから2人余るんですよ。遊び相手がいないでしょ?YMOは年齢がボウイと同じぐらいで、僕と一回り違うんです。これが同じ年齢だったら萎縮しちゃうかもしれないけど、一回りも違うと遊べるんです(笑)」

鋤田はインタビュー中もとてもフランクに対応してくれた


鋤田にはいわゆる巨匠感が一切ない。本作にはベテランである布袋から次世代ともいえるMIYAVIなど幅広い層のアーティストが登場しているが、鋤田は彼らを区別することなく、リスペクトをもって接している。「年齢を意識した付き合いをしたことはありません。性格かもしれないですね。歳を意識して巨匠感を出して、上から目線でいることよりもっと大事なことはある。次世代の人がいっぱい出てきているので、自分が気にいったと思ったらずっと見守って、チャンスがあったら撮りたい。ボウイやイギー・ポップもそうだったし、そのほうが撮りやすいですね。もう趣味の世界です(笑)」

山根翼

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