志士たちの大江戸ヒルズ青春白書1850’s

東京ウォーカー

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敵味方に分かれる前夜の1ページ!


「ニッポンの未来のために!」と志を抱いて燃え上がった“志士”たち(倒幕・佐幕関係なく)にも、当然のことながら青春時代があった。まだ彼らがそれぞれ「佐幕と倒幕」、「開国と攘夷」のポジションを固める前、大まかにいえば嘉永年間から安政前期くらいまでの1850年代は、志士たちの青春時代だったのだ。

大志を胸に彼らの多くが集まったのが、天下の大都市・お江戸。志士になる前の卵たちはみな、江戸の剣術道場に入って青春を送った。特に「技は千葉、位は桃井、力は斎藤」のキャッチコピーでおなじみの、玄武館・士学館・練兵館の3大道場は大人気! それに次ぐ隆盛を誇った練武館や、新選組を生むことになる試衛館など、有名志士のほとんどがこれらの道場に入門したのだ。

かつてはマニアックな電気街。今では外国人にも大人気の観光地となった秋葉原。その一角に、幕末の頃は江戸3大道場の一つ、玄武館があった。


北辰一刀流の玄武館には、坂本龍馬や清河八郎、山岡鉄舟など幕末のビッグネームが通った。龍馬の入門は嘉永6年(1853)。玄武館を開いた千葉周作の弟・定吉の道場に籍を置いたが、玄武館にも通っていたことが記録に残っている。他に新選組を結成する前の藤堂平助や山南敬助もここの門弟で、もしかしたら龍馬と一緒に汗を流したかもしれない。後に龍馬は京で新選組と遭遇した話が伝わっているが、この時彼らが顔を合わせていたなら、お互いどんな気持ちだっただろう?

また、NHK大河ドラマ『西郷どん』の次回放送(5/27)で描かれる桜田門外の変で、大老・井伊直弼の首を討ち取る有村次左衛門も、北辰一刀流の門人だった。

桜田門外の変で井伊直弼の首を討つ有村次左衛門。この時はおそらく縮み上がっていなかったからこそ、本懐を遂げることができたのだろう。


ある時、チェスト欲に突き動かされた次左衛門は、ほろ酔い加減で路上を歩いていた老人に斬りかかった。しかし逆に地面に転がされ、股間をむんずと掴まれた上、「こんな縮んだタマで人を斬れるかッ!」と大喝された。この老人が実は千葉周作で、その強さに感動した次左衛門は即座に入門を決めた……というのは後世のフィクションなのだが、薩摩隼人っぽい直情さ(というか若気の至り)を伝える話だ。

稽古帰りに毎晩飲み会!?


お次は「位は桃井」の鏡心明智流・士学館。桃井春蔵が開いた道場で、現在の東京の新富町の付近、蜊河岸にあった。ここで剣を学んだのが、武市半平太や岡田以蔵、上田馬之助(往年の名悪役レスラーの名の由来になった剣客)たちだ。

蜊河岸に立てられた説明板。今は銀座の一等地にかつて士学館があり、武市や以蔵が剣の修行に励んでいた。


この道場は土佐藩の若者たちに人気で、他にも山本琢磨や浜田辰弥(後の田中光顕)なども修行したといわれている。龍馬は前記の通り北辰一刀流だが、千葉定吉の桶町千葉道場と、この士学館は直線距離にして1㎞足らず。玄武館もそう遠くない。幕末物の講談や小説では、道場は違えど、稽古終わりに彼らが飲み歩いたというような話がしばしば出てくる。

これはあながち創作と言い切れず、むしろその可能性は大いにあっただろう。なにしろ武市・龍馬・以蔵・琢磨の4人は同時期に江戸にいたし、寝起きしたのは同じ土佐藩邸。そしてみんな10~20代で(武市以外は)酒好き……ここまで条件がそろえば、きっと毎夜深川あたりにくり出したのでは?(以蔵は龍馬のおごりで)

助っ人のギャラは山盛りの銀シャリ!?


現在の東京・九段の靖国神社の境内には、神道無念流の練兵館があった。斎藤弥九郎が開いた道場で、士学館とは違って長州系の門弟が多く、桂小五郎が塾頭を務めた時期もある。そしてその隣の隣町くらいに、近藤勇の天然理心流・試衛館があり、おもしろいエピソードが遺されている。

靖国神社内にある練兵館跡の石碑と説明板。5/4の記事で紹介したのと同じく、ここでもアプリで音声ガイドを聴くことができる。


幕末の剣術道場には腕試しの道場破りがしばしば現われた。天然理心流が実戦で恐ろしく強かったことは、後に新選組が証明するが、反対に道場での竹刀剣術はからっきし弱かった。そこへ道場破りが来た場合……近藤は茶を出して時間を稼ぎつつ、使いを走らせて助っ人を呼んだという。使いの行き先は、練兵館!

こんな時、桂が助っ人に来ることもあったという。「逃げの小五郎」の異名は、“あえて危険を冒さない”という意味で、実際の剣技は卓抜したものがあった桂は、チャチャッと道場破りを片付ける。そのお礼に近藤が出したのは、山盛りのごはんとタクアン数切れ。桂は苦笑しながら食べたか、それとも丁重に断わったか!?

練兵館と試衛館は、現代人の足で30分くらいの位置関係だった。かつて助っ人してあげた試衛館の人々に、京で命を狙われるとは……桂さんかわいそすぎる。


このエピソードもフィクションだと片づけるのは早計で、似たような話を大村藩の渡辺昇が伝えている。渡辺と桂が混同されたのか、それとも桂も助っ人をした事実があったのか。また後年、京で新選組が勤王派の過激浪士と対立した時、渡辺がその標的になったことを知った近藤は、ひそかにその旅宿を訪ねて危険を知らせようとしたという話もある。

この1850年代から数年後、かつて江戸の道場で互いに腕を磨き、酒を飲んだり助っ人を頼み頼まれた彼らは、「佐幕と倒幕」、「開国と攘夷」に立場を違えて命のやり取りをするようになる。その前夜、彼らが志士の卵の頃には、こんな青春の1ページがあったのだ。

今週の『西郷どんナナメ斬りッ!』


この動画を通じて、大河ドラマではおそらく描かれそうにない、西郷どんの“暗黒面”にも踏み込んでいきたい。


志士への憧れが人一倍強い幕末好きの俳優・声優・歴ドルたちが、NHK大河ドラマ『西郷どん』をいろんな角度で観ながら、オンエアだけでは味わえない幕末のおもしろさお届けするトーク動画。今回は第19回のサブタイトル「愛加那」について、果たして西郷との夫婦仲は? アンゴの悲哀とは? さらに奄美がルーツのマペヲが語る島の実情などを考察しています。ぜひお楽しみください!

ボクらの維新通信社2018/ロバート・ウォーターマン(KUROFUNE-United)

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