大東駿介、大先輩にケンカを売る!? 凶暴な役で京都へ

関西ウォーカー

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映画「スリー・ビルボード」でも注目されたマーティン・マクドナー。演劇復帰作の最新戯曲「ハングマン」は、2015年にイギリスで初演、翌年ローレンス・オリヴィエ賞BEST PLAY賞を受賞した話題作だ。マクドナーと言えば長塚圭史。「ウィー・トーマス」「ピローマン」など、その暴力的ともいえる世界観を挑戦的な演出で上演、強いインパクトを与え高い評価を受けた。また、多くのマクドナー作品を翻訳・演出してきた小川絵梨子が翻訳、長塚と初タッグを組む。

元死刑執行人が経営するパブに現れた謎の男・ムーニーを演じる


物語の舞台は、1965年に死刑制度が廃止されたイギリス。元死刑執行人が経営する田舎のパブへ、ふらりとやってきた若い男をきっかけに、狂騒の一夜が巻き起こる。田中哲司ら個性豊かな実力派が顔をそろえる中、大東駿介がロンドンなまりの謎の男・ムーニーを演じる。

今年は「プルートゥ」に続く話題作への出演となる大東。昨年、長塚の脚本・演出により東京で上演された「王将」で初めて顔を合わせ、今回の出演につながった。「ハングマン」は埼玉から開幕。埼玉公演を終え「こんなにおもしろい脚本の作品に出られて、喜んで楽しんでいます」と言う大東が来阪、作品の魅力や楽しい現場、役者としての思いを語った。

小学生の頃から、母親の読んだ関西ウォーカーを「めっちゃ見てた」と言う。(ありがとうございます!)「これ、食べに行きたいとか(笑)。映画が好きなので、映画のページも」。大阪人らしい親しみやすさと、芝居に真正面から向き合う姿勢。そして、よくしゃべる。好感度が高く、すでに大人の役者の雰囲気が漂う。これからますます吸収&成長に期待したい。

【マクドナーの作品について】

マクドナーの作品は、笑いの中でかなり毒を吐くし、確信めいたことを言うからハッとさせられることが多いですね。登場人物がそれぞれ粒立っていて、魅力的なんですよ。で、みんなダメな人たち(笑)。その1人1人が生き生きとダメになっていけばいくほど、作品が広がっていく。

【作品の初見と埼玉公演を終えて】

台本を読んだ時点でめちゃくちゃおもしろかった。でも、最初は、イギリス人から見た異国との関係性、階級制度、差別のようなものをブラックユーモアで扱っているので、日本人にわかるかな、と。今、死刑制度のある国は少なくて、イギリスでは死刑を題材にするだけでナンセンスな笑いに変わるけど、現在も死刑制度がある日本で僕たちは感覚として死刑という言葉でブラックジョークを感じないというか。舞台上で衝撃的なシーンも多いしね。でも、これを今日本でやる意味や、日本人がどう感じ、どんなものが届くか、明確になった埼玉公演でした。

社会的な問題提起をしたい作品ではないけど、現実で当たり前にある、うやむやにしていることを再発見できる芝居だなと思います。芝居の後、お客さんは胸にグワァ~って漂うものを解釈して固まるまでに、1日ぐらい時間がかかる。それがほんとにおもしろい芝居だなと思う。発見がいっぱいあったし、この作品、まだまだおもしろくなるなという実感を得た2日間でした。

【ムーニーの役作りについて】

自分に近いかもって思いました。よくしゃべる(笑)。彼には彼の正義があり、彼のゆがみ方がある。そして、本当に怖いものは、怖いかどうかわからないもの、というところを大事にしました。彼は物語をかき乱していくし、脅威だし、かなり凶暴だし…。でも、それを表に出さないっていうことですかね。狂気を常に内の内にはらんでいるように。いい人?悪い人?犯人じゃないの?目的は何?って、常に疑問が出るような。善と悪には、とても際どい境界線がある、そういうところも表現できたらいいなと思っています。

【めっちゃイヤな奴の役ですが】

役によって自分がそういう印象に思われるのは幸せなことだと思います。人間は多面体、人は違って当然だから、自分が人にどう思われるかはあまり興味がなくて。もともと役者への入口も自分であることの劣等感から始まったので。趣味も特技も、自分に対する自信もなく、何ができるかと思った時に、役者ならいろんな人の人生を疑似体験できるなと思って。僕は、役者というものに僕を育ててもらった感じがするんです。だから、なれるなら何にでもなりたいですね。

【大先輩と楽しい現場】

舞台上で大先輩をバカにする瞬間、ほんとに楽しかったですね!(笑)。ド正面で目を見て、普通の顔して相手を傷つけていく…大先輩をね。それをやらせてもらえる環境にあって幸せだと思います。巧みな役者さんばかりで、この芝居をどうおもしろくしてくか、みんなそれ以外の目的がない。生意気な意見も「あ、それおもしろいね」って受け止めてくれる。すごく懐の深い現場です。

例えばこの芝居は方言もキーポイントで、都会から田舎を見下すような言葉から階級や差別が描かれていて、それが結構笑いの種にもなっているんですけど、“なまり”をどう表現するか。いろんな意見を出し合って、日本語版の戯曲を作る瞬間に初めて立ち会う貴重な体験もさせてもらいました。

稽古場で田中哲司さんの芝居を見ていて、芝居ひとつで、そこがへんぴな町のへんぴなパブに見えてくる。ほんとにすごい。芝居のおもしろいところは、劇場の舞台の上なのに役者の芝居ひとつでそこに世界が広がる。そういう瞬間を改めて見せてもらいました。

そんな巧みな先輩の役者さんから、無垢な心で真摯に芝居打ち込む18歳の富田望生(みう)ちゃんまで。一番腹が座ってるのは望生ちゃんじゃないかと思うぐらい、素晴らしい感性の持ち主です。ほんとに楽しくて、いい現場だなぁと思います。だから、この芝居、観てほしいなって思う。

【いい作品に恵まれて】

人生のタイミングじゃないかな。ほんとに恵まれてますね。こういう作品とのつながり方をしていると、どれも自分のターニングポイントになってしまう。自分が見てない景色はまだ山ほどある。自分がどれだけおもろいことを思いついて、それを形にできるか。僕はそれを死ぬまでずっと追いかけていきたいと思います。

【自分も観たい作品。だから観て!】

この芝居は、おれが出てなくても観たい!と思う。「プルートゥ」もそうですけど、出たい!とも思うし、観たい!とも思う。今回はキャスト全員そう思ってますね。こんなにおもしろい戯曲の作品に出られて、ほんまに恵まれてるって。だからそれをぜひ観てもらいたいと思う。京都まで来てほしい。

「おれが出ていなくても観たい!と思う」と作品との出会いを喜ぶ


僕は、演劇ともう少し身近な距離感で付き合えたら楽しいのにって日々思っているので、そんなきっかけになれたら。物語はほとんどパブでの話なので、飲み屋に来る感覚で(笑)、気負わず遊びに来てほしいなと思います。

【関西に来た時は】

心斎橋の「大黒」という、かやくご飯屋さんに絶対行きます。大好き! 「ウェルかめ」(NHK連続テレビ小説)の時ぐらいからなので、7、8年行ってます。薄味のかやくご飯に、ちょっと濃い赤だしを飲むっていうのが好きで。薄味が好きで、昔はタコ焼きもソースかけずに食べてた。あとは堺にある焼肉屋さん。それから、仁徳天皇陵の横にある大仙公園。幼稚園から上京するまでずっと遊んでた、でっかい公園。気持ちいいから絶対いいですよ。

あと、じいちゃんのお墓。みさき公園近くの丘の上にあって海が一望できるし、後ろは山。めちゃくちゃきれいなところで、そこの景色を見に行ったりします。今回は京都やから、遠いけど(笑)。京都では二条城近くの居酒屋に絶対行きます。宿泊先から近くにあって、ふらぁ~と入ったら店員さんとめっちゃ仲良くなって(笑)。

関西に来ると、心斎橋の「大黒」は必ず行くそう。地元・堺の話も!


【コミュニケーション力ありますね】

ここ最近です。役者の生活にすごく違和感があって。社会から遠ざかってる生き方をして、社会の今をキャッチできていないのに社会人を演じるって、いびつな俳優になってしまいそうで。自分を保つために、なるべく、その町やそこに生きている人とコミュニケーションをとって、社会との距離感を作らないようにしたいといつも思ってます。

僕がこのまま生きることは退化になると思う。社会は確実に進化しているから、何かを吸収して初めて現状維持やなと、常々思ってます。

舞台「ハングマン HANGMEN」は6月に京都で上演


取材・文=高橋晴代

撮影=西木義和

ヘアメイク=SHUTARO

高橋晴代

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