”地味めキャスト”で危うくスルー。観て良かった! 山火事×ヒーローの感動作<連載/ウワサの映画 Vol.38>

東海ウォーカー

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2013年にアメリカ・アリゾナ州ヤーネルヒルで発生した巨大森林火災に立ち向かった、「グラニット・マウンテン・ホットショット」と呼ばれる20人の森林消防隊員。その感動の実話をベースに、映画「オンリー・ザ・ブレイブ」が誕生しました。「バックドラフト」をしのぐ、熱気で息苦しくなるほどの炎の迫力映像にビビり、防火シェルター一枚を頼りに仲間と命を預け合う男たちに萌えた~! アメリカンなヒロイズム臭よりもリスペクトが勝る高いドラマ性と、特殊効果を駆使した怒涛のスペクタクルが見事に融合してます!

度々報道されるように、アメリカ西海岸から中西部では、夏から秋に多くの森林火災が発生します。本作は、その活動が日本ではあまり知られていない「森林消防隊員」を巡る物語です©2017 NO EXIT FILM, LLC


物語の中心人物の一人であるマクドナウ(マイルズ・テラー)は、麻薬におぼれ堕落した日々を過ごす中、別れた恋人の妊娠を知り動揺...。生まれ変わることを決意し、マーシュ(ジョシュ・ブローリン)が率いる地元の森林消防団に入隊した彼は、地獄のような訓練と命を張る現場を通してほかの隊員との絆を深めていきます。一方マーシュは、妻・アマンダ(ジェニファー・コネリー)に勧められ、市の消防署長で親友のデュエイン(ジェフ・ブリッジス)に、自分のチームを現場での権限をもつ”ホットショット”に認定してほしいと相談。やがてマーシュたちは認定審査をパスし、晴れてホットショットに昇格します。しかし、歓喜も束の間、愛する家族を残して現場に向かう彼らを、アメリカ史上最も恐ろしい巨大山火事が待ち受けているのでした…。

20代の頃にアリゾナ州のボランティア消防隊で3年間活動をしたというジョシュが、隊長・マーシュ役に。新人のマクドナウ(マイルズ・テラー)との師弟関係が物語に深みをもたらします© 2017 NO EXIT FILM, LLC


「ホットショット」とは、”消防の世界のネイビーシールズ”とも称される、農務省の特殊チームのこと。主人公たちもさぞかしエリートぞろいかと思いきや、彼らは異色中の異色、地方自治体チームとして初めてホットショットに認定された隊なのです! それまでは、地元の自然環境を熟知していても、しぶしぶ(?)”よそ者ホットショット”の指示に従っていましたが、遺憾なく実力を発揮できる立場となったわけです。

平均年齢27歳のグラニット・マウンテン・ホットショットの面々。おちゃらけな日常と真剣勝負の仕事時のギャップに、アメリカでは消防士はモテるってのも激しく納得© 2017 NO EXIT FILM, LLC


地元のメンズを精鋭隊員に育て上げたマーシュ役のジョシュ・ブローリンが、圧倒的なカリスマぶり。現場で常に最前線を張る姿は、”上司にしたい男”1位ですね~。クセありオヤジのイメージしかなかったですが、18Kgも減量した精悍さが意外にもイケオジ! そんな隊長が目をかける、「このクズをなぜ雇う!?」とメンバーのブーイングも激しかった新人・マクドナウ役はマイルズ・テラー。娘の誕生を機に、クスリに窃盗にと荒れた人生をやり直す機会を消防隊に託した元ジャンキーの変貌が見ものです。「ベタな再生物語っ」なんて思いつつも、マイルズが巧くて引き込まれてた!

隊長とジェニファー・コネリー扮する妻の、ちょっと複雑な夫婦愛も泣かせる~。ジェニファー&ジェフ・ブリッジス、2人のオスカー俳優が作品を引き締めます© 2017 NO EXIT FILM, LLC


撮影用に起こした本物の火、特殊効果の火、CGの火。3つの火と音響効果を駆使した火災シーンは、もう、火が生きてるみたいで恐ろしく、不謹慎ながら美しい。水が供給できない森の中では、自分で樹木を燃やして作った”迎え火”で延焼を食い止めるんですね。火の周囲に堀った線状の溝で行き場を失った火が、燃料も絶えて鎮火するという寸法。そんな”火で火を制す”死闘など森林火災の一部始終を体感させる緻密な画作りに、アメコミ映画(”ヒーローもの”くくりってことで…)の過剰な視覚効果が、大して効果的でもなくムダ遣いに思えてくる…。

劇中では5件の山火事を描いていますが、8000㎡超えの人工の森を作って燃やしたりと迫力がスゴい。特にヤーネルの火災の再現は息をのむ臨場感!© 2017 NO EXIT FILM, LLC


演技として消火活動を実際にこなした俳優たちも苦労されたようで…。元隊員らの指導のもと山中での訓練キャンプに参加し、彼らの全仕事を学んだとか。野外で眠り、約20kgのバックパックを背負い、かがんだ姿勢で何マイルも木を切り開いたり、過酷な登山が伴う山奥や標高約3170mの高地でロケしたり、燃料ポンプを背負って自ら火を放ったり…。危険すぎる撮影を通して築き上げられた”チームの結束”と”仕事愛”の本物感が、ビシバシ伝わってきます。

監督は「オブリビオン」のジョセフ・コシンスキー。「Only the Brave」っていう潔いタイトルに凝縮させた、ヒーローの”核心”がクールです!© 2017 NO EXIT FILM, LLC


自然への畏怖も伝える火災シーンなどなど、題材への敬意にあふれた製作サイドのマジメさに心打たれました。そして、ラストは茫然からの号泣です! …実は、当初は食いつけなかったんです。題材も、地味めのキャストも(「テイラー・キッチュがむりやりイケメン枠?」なんて思ったり…)。でも、「キャストを基準に選ぶと損をするかも」と痛感。それに、万人受けしない題材に莫大な費用をかけるってことは、中身に自信がある証! …大スターがいないという理由で、過去にどれだけの名作を見逃がしちゃったんだろ。あーあ。【東海ウォーカー】

【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします!  最近のお気に入りは「パンク侍、斬られて候」(6月30日公開)の綾野 剛!

おおまえ

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