《愛工大名電吹奏楽部 後編》イチローを生んだ高校。その吹奏楽部が名門ブラスバンドであり続ける理由とは?
東海ウォーカー
毎年のように全日本吹奏楽コンクール全国大会に出場している、愛知工業大学名電高等学校 吹奏楽部。どうして名門ブラスバンドであり続けることができるのか。名電吹奏楽部顧問の伊藤宏樹先生が継続的な強さの秘密について語る。

――元気のいいあいさつが飛び交う気持ちのいい生徒ばかりです。
「名電では7割の生徒が3年生の夏まで部活をやっています。残りの3割も勉強をしたり、一般のクラブに参加したりしている。目標を見つけて全力で取り組んでいる生徒がほとんどです。輝いた毎日を過ごしているんですよね。個人的には、生徒たちが本当の心の強さを知っていると感じています。それはルーティンができること。たとえば吹奏楽部が全国大会に出場しても、特別な壮行会はありません。一喜一憂するのではなく、毎日やるべきことをやっています。イチロー選手もきっとそうですよね。やるべきことを理解していて、それをルーティンとしてコツコツとやれる。それが心の強さです」

――吹奏楽部の部員数は185人(2018年5月23日現在)、しかも退部者はほぼゼロとのこと。どのようにしてまとめているのでしょうか?
「私が引っ張るのは6割で、残りの4割は生徒たちにまかせています。“大人”として尊重する部分を設けて、できるだけ生徒主導の運営を心がけているんです。ですから、部長や副部長も生徒たちが選ぶ。先ほど音楽を通した“つながり”と言いましたが、私たちは“絆”をモットーにしています。音楽は心をつなげてくれます。辞めるのは簡単で、人数が多ければ衝突もありますが、逃げるのではなく向き合って乗り越えてほしい。一生の仲間を見つけてもらうこと、それが部活動ではないでしょうか」

――部内はどのような構成ですか?
「部長や副部長をはじめとした幹部、パートをまとめるパートリーダー、そして一般のメンバーに分かれています。こうした役割と学年、縦と横の関係を保っています。指導や指示の系統は縦の関係、相談して支え合うのは横の関係になります」

――毎年のように結果が残せるのはどうしてでしょう?
「ルーティンをやれる心の強さ、組織の在り方、いろいろな要因がありますが、やはり3年生の存在が大きいですね。3年生は恩返しの学年と考えているようです。スポーツなら、足が速かったり高く飛べたりすれば今日からスターになれるかもしれません。だけど音楽は違います。いきなり上達することはなく、誰かから学ぶ必要があります。先人がいなければ成り立たないジャンルなのです。3年生は、1年生や2年生のころに習ったことを感謝の気持ちを持って後輩たちに伝えています。そうした行動や考え方が伝統として浸透しているので、継続的に結果が残せているのだと思います」

――生徒たちに伝えたいことは?
「多感な時期ですから悩んで当然。そのほとんどが人間関係です。私の場合、顧問として解決策を教えるのではなく、解決するキッカケを与えるようにしています。頭ごなしに言っても根本は変わりません。当人同士で解決する必要があります。そうして絆が生まれてくる。喧嘩することになるかもしれません。でも誠実な気持ちで向き合えば、今は仲が悪くても10年後には『あんなこともあったね』と、笑い合える素敵な関係になるはず。『自分は嫌われていないだろうか』と、不安の中で生きている若者は多いでしょう。そんな時は逃げずに向き合ってほしい。誰かに相談したり話し合ったりしてほしい。『自分には仲間がいる』と実感することで安心できます。若者たちにとって、絆こそ生きていく糧になるのではないでしょうか」

東海ウォーカー編集部
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