日本代表の決勝トーナメント進出。他力でも不本意だとしても、称賛したい西野監督の“英断”
東京ウォーカー(全国版)
サッカーのロシア・ワールドカップ(W杯)のグループH第3戦が、6月28日(木)に行われた。日本代表はポーランド代表と対戦し、0-1と敗戦。グループステージ3試合を終え、勝ち点4でセネガル代表と並んだが、フェアプレーポイント数で上回り、グループ2位で決勝トーナメント進出を決めた。

苦渋の決断だったのは間違いない。
試合後に会見場に現れた日本代表の西野朗監督は、2大会ぶりのベスト16進出を決めた直後とは思えない表情だった。冷静な、というよりも、沈んだそれである。
「万が一という状況はこのピッチ上でも考えられましたし、他会場でも万が一があるわけです。選択をしたのは、そのままの状態をキープすること。このピッチ上で万が一が起こらないよう、他力の選択を選んだ」
試合終盤に負けていながらも、フェアプレーポイントでの突破にかけて0-1の状況を維持する決断を下したことを問われた際の返答である。
「負けている状況をキープしている自分、チーム。本意ではない選択をしている。他力を頼っている…」
「自分の信条からすれば不本意」
「グループステージを突破するなかでの究極の選択」
出てくる言葉は、どれも後悔が滲むものだった。
スコアレスで迎えたハーフタイムには、「アグレッシブに、攻撃的に、勝ちに行く。そのスピリットを持ってピッチに出てくれ」と伝えて選手を送り出している。「時間が経過する中で、自分の選択が変わった」という言葉通り、事前にはまったく頭になかった決断であろう。
プランとしてないなかで、迫られて選んだ選択。「選手たちにブーイングを浴びせながらプレーさせてしまった」と、選んだことに自戒の念すら感じさせた。
“薄氷を踏むような”という表現があるが、今回は本当に薄い氷を踏む決断だった。
観客席からは両チームの積極性を煽るウェーブや当事者国でない「ロシア、ロシア」の大合唱が起こり、すさまじいほどのブーイングが響いた。終了間際には、試合を見限って出口に向かう観客が続出していた。
会見では西野監督のみならず、ポーランドのアダム・ナバウカ監督に向けても、終盤での試合運びについて、ネガティブなニュアンスの質問相次いだ。もしも同時刻に行われたセネガル代表とコロンビア代表の試合がドローに終わったとき、ふりかかる批判は想像を絶するほどだったであろう。
加えて、先発メンバーを6人入れ替えたことや、過去2試合で失点に絡んだGK川島永嗣を先発させたのも、ひとつ間違えれば大きな批判材料になり得る決断であった。
たとえグループステージでの敗退という結末を辿っていたとしても、先発メンバーの入れ替えを最小限に抑えていたり、終盤でも得点を狙った戦いぶりを見せていたら、世間からの受け止め方も柔らかいものになったであろう。
とはいえ、苦渋の決断とは言ったものの、決断には常に苦渋が伴うものである。それが“英断”と称賛されるのか、“愚策”と罵られるのかは、良くも悪くも結果だけで判断される。
少なくないチケット代を支払った観客や、当事者ではない第三者から批判的な意見が出てくるのは間違いない。ただ、立場を変えれば見える景色も変わってくるもの。監督や選手の立場になって考えてみたい。
大会前はぼやけて全景すらつかめなかったほど、対岸にあったベスト16を、少しでも体重をかければ割れてしまうような氷を踏み切って到達したのである。少なくとも、結果を残した。
今は、名を捨てて実を取ることを遂行した選手と、己の信条から反してまでも、それを決断した指揮官を称賛したい。もしも、今回の戦いぶりで大きな批判を受けるのであれば、それこそ次戦に臨む上での発奮材料にしてもらうのを願うばかりである。
日本サッカーに新たな歴史を刻むための余白は、まだ残されている。
小谷紘友
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