『未来のミライ』麻生久美子インタビュー「細田さんに変化が起きれば、これからも映画に反映されていくんだろうな」

東京ウォーカー(全国版)

X(旧Twitter)で
シェア
Facebookで
シェア

細田守監督作への出演は『おおかみこどもの雨と雪』(2012)、『バケモノの子』(2015)に続き3度目。もはや細田組のひとりといえる麻生久美子。主人公の母親役を演じたことが、自らを、そして自身の家族を見つめ直すきっかけとなったという。

共感できることばかりのくんちゃんのおかあさん


『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』に続き3度目の細田作品出演となる麻生久美子撮影:島本絵梨佳


―出演が実際に決まった時の思いと、台本を読まれた時の感想を教えてください。

麻生:率直に言わせていただきますと、私、こんなに出番があると思っていなかったんです(笑)。だから最初に拝見したとき驚いてしまいました。

しかも、台本を読ませていただいたら「あ、わかるわかる!」の連続で、とても共感したというのがまずあって。男女は逆ですが、うちと家族構成がほぼ同じなんですよね。イヌもいますし。そういった部分でも共感ができて、すごくすてきなお話だなと思いました。

子供のいる慌ただしい日常をベースに描いていると思うのですが、4歳の男の子の視点なので、いろんなことが起きていても時間はゆっくり流れているように見えるんです。大人になるとあっという間に1日が終わっていくし、ちょっとしたことはすぐ流していきますよね。

でも子供って、つまずいて転んでは起き上がるというのを日々繰り返していると思っていて。そのちょっとしたつまずきの連続を描いているような作品だなと感じました。育児描写をここまで丁寧に作っているアニメ映画はなかなかないとも思いましたので、そういう意味でもすごく楽しみだったんです。

―細田守監督作品への出演は本作で3度目ですが、今回は演技について、細田監督とお話はされましたか?

麻生:詳しいお話はしてないですが、私がどんな子育てをしているとかわかってらっしゃる部分があって。普段どおりのおかあさんな麻生さんで、とおっしゃっていました。共感できる部分も多いので、そのまま演じさせていただいた部分があったのですが、それでも台詞の内容に引っ張られて少し怖くなってしまったところがあったんです。その時は、細田さんが「もうちょっと淡々と言ってみましょうか。僕が言われた時はですねぇ…」と実体験を交えてアドバイスしてくださって(笑)。

でもたしかに、感情を出しすぎるより淡々と言われるほうが響く時もありますよね。私自身も、いくら旦那さんだからといってもダイレクトすぎるよりは、少しオブラートに包む的な物言いをすることも結構あるので、「あ、そうか、そっちのほうか」と思い直して、演じさせていただきました。

―肝心なことはあえて感情的に言わないとか?

麻生:言わないことってありますね~。本音を笑いながら言ってみたりとか(笑)。

―ご自身が演じられて、いちばん印象に残っているシーンをお聞かせください。

麻生:いくつかあるんですが、おとうさんにダメ出しをするシーンは何度かやらせていただいたので印象的ですね。あと、ひいばあば、つまりはおかあさんのおかあさんとの会話も。あそこの台詞の声のトーンは特に難しくて。

それから最後のシーンで星野源さんが演じるおとうさんとの会話が、おかあさんというよりはひとりの女性の目線になっていていいなと。奥さんと旦那さん、子供を抜いた夫婦の会話というのを監督が意識されていたので、そのやりとりがすごくおもしろかったですね。

―くんちゃんのおかあさんとは、具体的にどういった部分で共感できましたか?

麻生:もうほとんどの部分で共感できましたよ。実体験済みなことが多いんですよね(笑)。くんちゃんのヤキモチはものすごくわかりますし、ズボンを履かないのもあるある、と。くんちゃんが自転車に乗るシーンが好きなんですけど、すぐにできないから諦めたり、周りの子供たちにいろいろ言われて百面相したりするのもリアルですし。

あとおかあさんが旦那さんに言うちょっとしたダメ出しみたいな言葉も、実際にそんなことを言った覚えもあります。共感できることばかりでした。

―くんちゃんのおかあさんが感じた悩みは、麻生さんも感じたものが多かったですか?

麻生:そうだと思います。私もそうですが、おかあさんは仕事をしていますよね。子育てにベストを尽くしたいという台詞もありますけど、それは私も常に思っていることで。仕事を言い訳に手を抜くことはしたくないし、子供のためにできる限りのことをやってあげたいという思いをずっと持っているので、そのなかで悩むことは多いと思うんです。

―麻生さんから見た劇中の夫婦の関係はいかがですか?

麻生:元々仲がいいんだな~というのは感じとれるんですけど、子供ができたことによって多分お互いに変わっていっているんですよね。それをまたいい意味で認め合っているというか、信頼関係がしっかりとしている夫婦に見えました。子供中心になりすぎると夫婦関係がギクシャクしてしまう場合もありますよね。でもこの夫婦はそうじゃなく、子供ができてからは子供でより深くつながっている感じがしています。

―本作の夫婦は理想形のようなものですか?

麻生:というか心地よいですね(笑)。私からするとすごくしっくりくる形なんです。いろんな(夫婦の)形がありますけど、やっぱり女性がしっかりしている、奥さんがしっかりしているおうちとか。ちょっと強い…というとあれですけど、そういう家庭のほうがうまくいってることが多い気がするんです。そのほうが幸せじゃないかなと元々思っていて。なので私もそうでありたいですね。実際のところは秘密にしておきます(笑)。

自分の家族のことをもっと知りたくなる映画


【写真を見る】「私、こんなに出番があると思っていなかったんです(笑)」と、作品との出会いを語る麻生久美子撮影:島本絵梨佳


―今回、監督は家族とのつながりを描くとおっしゃっていました。麻生さんがご覧になられて、そういったつながりを感じましたか?

麻生:そうですね、思いをはせることができました(笑)。自分の家族のことも、もっと知りたいなとも思いましたね。私はお爺ちゃんとはあまり交流がなくて、お婆ちゃんのことしかわからないんです。それよりもっと前のひいお婆ちゃんとか、どんなふうに命がつながってきて今の私がここにいるのか、みたいなつながりを知りたいです。

実際に昔そういうことを調べようと思ったことがあって、家系図を作ってみようとしていました。きっかけは友人の言葉だったんですけど、そのほうが家系図を作ったという話を聞いて。それでちょっと調べたりしたんです。結果は名前がわかるだけでしたけど、それでも十分でした。いろいろ想像できましたから。だけど、できるのならやっぱり実際に話を聞いてみたいなと。どういう人だったのかとか、そういう興味はありますね。

―細田監督は作品を作るごとに、徐々に物語における家族に対する密度が高まっていると思います。ここ3作に出演されて、細田監督の変化を感じられたことはありますか?

麻生:そうですね。全部が全部ではないですが、本当に細田さんの周りで起きたことを映画にしているんじゃないかなと思っていて。『サマーウォーズ』(2009)も奥さんの実家が大家族で、というような話を聞いていましたし。だから細田さんに変化が起きれば、これからも映画に反映されていくんだろうなと私は思っています(笑)。

―『時をかける少女』(2006)と『サマーウォーズ』がお好きとのことですが、具体的にどういうところがお好きなんですか?

麻生:言葉にするのがすごく難しいんですよ。私、細田さんの作品を観ていると、気付いたら泣いているんです。

『時をかける少女』だったら最後、真琴が走っているシーン。走っているだけですっごく泣けるんですよ。何度観てもあのシーンで号泣なんです(笑)。思い出すだけで泣けるくらい、何か胸に迫るものがあるというか。でもそれをうまく言葉にできないんですよ。どうして泣けるのか、自分で考えてもよくわからないというか。私だけじゃなく、隣を見ると夫も泣いていますけど(笑)。そういう何か、心に訴える力があるんでしょうね。【取材・文:リワークス/撮影:島本絵梨佳】

自ら演じたくんちゃんのおかあさんに「もうほとんどの部分で共感できましたよ。実体験済みなことが多いんですよね(笑)」と語る麻生久美子撮影:島本絵梨佳


ウォーカープラス編集部

この記事の画像一覧(全4枚)

キーワード

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

季節特集

季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介

いちご狩り特集

いちご狩り特集

全国約500件のいちご狩りが楽しめるスポットを紹介。「予約なしOK」「今週末行ける」など検索機能も充実

花火特集

花火特集2025

全国約900件の花火大会を掲載。2025年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!

CHECK!全国の花火大会ランキング

CHECK!2025年全国で開催予定の花火大会

おでかけ特集

今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け

アウトドア特集

アウトドア特集

キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介

ページ上部へ戻る