今、最も注目すべき女性現代美術家“束芋”の展覧会が7/10から大阪・国立国際美術館でスタート!(1)

関西ウォーカー

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7/10から大阪・中之島の国立国際美術館で「束芋:断面の世代」展をスタートさせる、女性現代美術家・束芋に直撃インタビュー! その興味深いタイトルの意味にも迫る!

自分自身が「自覚」することで得られる ”次元”の存在を体感できる映像の数々!

―束芋さんの作品は、映像ですがストーリー展開があるものではなくて、かといって画的に眺めるというものでもないですよね。何と捉えたらいいんでしょうか?

そこは、あまりジャンルとか考えなくてもいいのかなと思っています。私がスタートしたきっかけが、大学の卒業製作で作った映像インスタレーションとされるものだったんですけど、私は映像インスタレーションの作品を作ろうとして作ったわけではなくて、大学でやってたことを色々と組み合わせて作ったものなんです。私、専門的な何かを集中的にやるほうでは無くて、目の前にある面白いものを広く浅くやってったんですけど、大学時代の4年間を振り返った時に、これっていう「ジャンル」が特に見当たらなかったんですよね。それで、その時に自分がやってきたことを全部盛り込んでやろう!って作ったのが「にっぽんの台所」という作品だったんですよ。その時点では自分が作ったものが「映像インスタレーション」と呼ばれるものだということはもちろん、「現代美術」という世界があることすら知らなかったんですけど、結局この世界で活動するきっかけになったのが、キリンコンテンポラリー・アワードでの受賞です。それもキリンコンテンポラリー・アワードというものが、美術の賞であること以前に、私にとっては、就職活動に有利な賞という認識でした。

―合理的な(笑)。

そうそう(笑)。そういう感じだったんで、私の作っているものが美術であろうとなかろうと本当はどちらでもいいんですよ。ただ、私は就職活動に失敗して、ファインアートという活動の場を与えらたので、拾ってくれた美術という世界に感謝しつつ、ちゃんと面白いものを展開していきたいって思ってます。

―ご自身では、アーティストっていう感覚ではないんですね。

そうですね。2005年までは本気でグラフィックデザイナーになりたいと思っていたんです。五島記念文化財団から賞をいただいて、その助成金で海外に行かせてもらった時も、美術ではなくグラフィックの勉強をするつもりで1年間行かせてもらったんです。そこで憧れのデザイナーさんに会うことで、デザイナーになる夢はきっぱり諦めがつきました。

―何故なんですか?

やっぱり、素晴らしいデザイナーさんに出会ったら、その素晴らしいデザイナーさんのようになりたい!って思うじゃないですか。でも実際にその方の活動の仕方を見たら「私には絶対なれない」って確信を持ったんですよね。それから、取り敢えず目の前にあるものに精一杯取り組んできたら、今のようなかたちになったんです。いつも肩書きを聞かれた時に「現代美術家」と答えてるんですけど、それも別に変化していってもいいものだと思ってますし。わかりやすいフィールドを伝えるために「現代美術家」と答えてるっていう感じですね。

―考えてみたら「現代美術」というジャンルも、どこかこう、ふわふわしたものでもありますよね。

そうそう(笑)。そういうのが自分にはちょうどいいのかな、って思うし。この間、武蔵野美術大学で授業をやった時に「現代美術」という言葉を使って話してたら、生徒のひとりに「僕にとっては現代美術という言葉の響きは、超うさん臭いんですけど」って言われて。私自身はそんなうさん臭いものだとは思ってなかったから(笑)。

―「え!?うさん臭いの!?」みたいな(笑)。

そう(笑)。今までアニメーターとか映像クリエーターって肩書きでいいですか?って聞かれた時に、「その肩書きは違います」って言ってたんです。「うさん臭い」っていう言葉を聞いて「現代美術家」を肩書きとするのを考えなおしたほうがいいのかな?って思ったりもしたんですけど、でもこの世界ってたぶん、そのうさん臭さも含めて面白い世界なんで、ちょうどいい肩書きなのかも知れないなって思い直しました。

―確かに、「うさん臭さ」っていうのを堂々と取り込めるのって、芸術の強みでもありますよね。

そうですね。コンピューターを使ってるとそれだけで「メディアアーティスト」と分類されることもあるんですけど、私はそういう自覚もありません。

―作品作りの指針になっているものはありますか?「にっぽんの台所」なんかは、日本の家庭のごく日常的な風景がモチーフですけど。

基本的には自分の体験ですね。テレビなどから流れてくる事象は、毎日それに触れてはいるんだけど、実際に触れてる自分はモニターを通してただの情報として受け取ってるわけで、ある程度の「距離」をそこに感じているんですよね。毎日情報漬けで、ある点ではすごく密着してるんだけど、ある点では大きな隔たりがある。そんな距離感とか体験を作品中に表現している感じです。

―「実際の経験」という意味では、戦争だとか殺人とかっていう、実際に起こってはいるんだけど、先程おっしゃてった「距離感」で言うとあくまでも「ニュースの世界」での出来事っていうのは、作品には反映されにくいってことですよね。

そうですね。「情報」としての表現というのはあると思うんですよ。本当に起こったことでも「絵空事」のように見えてしまうような「現実」っていうのが私のなかにあって、そういう表現の仕方はあります。ただあたかも自分が実際に経験したかのような表現をこの場合は使うべきではない。私はそういう嘘はつきたくないっていつも思ってますね。

(取材・文=三好千夏)

→(2)に続く!

http://news.walkerplus.com/2010/0708/33/

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