連載第1回「大阪インバウンド最前線」 年間1200万人訪れる大阪城は天守閣の展望台が一番人気

関西ウォーカー

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この連載は、大阪で激増するインバウンド(訪日外国人観光客)の最前線を人気施設や旅行・観光に詳しい業界関係者などキーパーソンに話を伺うインタビュー企画。第1回は大阪城パークマネジメント株式会社 事業開発部 取締役 伊藤憲浩さんに、大阪城公園のインバウンドの現状や、インバウンドが増えて変わったこと、今後の展望などを聞いた。

大阪城公園のインバウンドの現状


今回お話を聞かせてくれた、大阪城パークマネジメント株式会社の伊藤憲浩さん


――施設のインバウンドの現状を教えてください。

急増してきたのはこの3、4年ぐらい。大阪城の場合は、天守閣の入館者も昔は7割ぐらいが日本人、3割ぐらいが海外の方だったんですけど、だんだんと半分ぐらいが海外の方々という数字に変わってきています。2017年の年間入館者が約270万人、その大体半分ぐらいがインバウンドです。

――インバウンドが増える前とあとの入館者数はいかがですか。

年間入館者数が200万人を超えた2015年あたりが、ひとつのターニングポイントですね。 ちょうどこの頃、大河ドラマ「真田丸」や「大坂の陣400年」の影響で、海外だけではなく国内でも大阪城が非常に注目された時でした。国内と海外の入館者数が半々なのが、ここ4年ぐらいですね。それに合わせて年間入館者数も急激に増えてきています。2017年では130万から140万人くらいがインバウンドと推定しています。

――どこの国の方が多いですか。

大きくエリアで分ければ、東アジアです。韓国、中国、台湾。この辺がトップ3ですね。割合としては2017年で韓国が全体の20%、中国が6%、台湾が5%くらいです。後はもう色々ですね、欧米の方もいらっしゃいます。

インバウンドに人気なのは?


――インバウンドの方が大阪城を訪れる目的は何ですか。

まずは大阪城天守閣ですね。天守閣を見て「大阪城に来た」と実感する方が多く、そこが人気かなと思います。

――大阪城天守閣に行かれた方に、アンケートなどはとっていますか。

年に数日ですが、アンケートを実施しています。外国人日本人比率の方もそのアンケートをもとにしているのですが、 実際入った方への質問では、8階の展望台からの景色をあげる方が多いですね。最初にまず8階まで上がっていただくので、そのインパクトが強いようです。 後は3、4階の文化財の展示。本物が見られるということで、項目にあげられる方が多いですね。

――やっぱり大阪城天守閣の展望台が人気なんですね。

毎年同じアンケートをしても、そこはやっぱり揺るぎないところですね。天守閣に登って、日本を俯瞰で見て。石垣の近くまで行って写真が撮れたり、天守閣に親しめるという所がまた魅力なのかもしれません。天守閣を入れて写真を撮る人が圧倒的に多いです。1枚写真があると、日本行ったよ、大阪行ったよっていうのが伝わりやすいのかなと思います。

――お土産物やレストランなどがある「ミライザ」や「ジョーテラス」といった新しくできた施設の利用はいかがですか。

「ジョーテラス」は開業して1年経ちました。「ミライザ」もあと少しで1年経つので、定着してきたのかなという感じですね。 お土産の場合、天守閣の中の売店もあるので、そちらも利用されている方が多いようです。

――インバウンドが来たから、物販が伸びたというようなことはありますか。

多少は人数に比例する部分もあると思います。爆買いは一時期よりは落ち着いてきています。ただ入館者がどんどん伸びていますので、インバウンドに関係なく、売店の売上もそれに比例しているというような状況です。

――どういった土産物が売れているのでしょうか。

天守閣の売店ではたくさんパッケージになっていて、配布しやすい物が人気があるみたいですね。クッキーみたいなものや、チョコなどを天守閣で買っていく方が多いです。多分みんなに配るんでしょうね。

――「ジョーテラス」や「ミライザ」のお店やレストランはどうなっていますか。

(駐車場やバス停からの)距離的に本丸の方が近いため、「ミライザ」を利用されることが多いかなと思います。人気がある商品は売店なども含めて、やっぱり抹茶系が強いですね。アイスクリームもそうですし、お菓子なども抹茶を使ったものに人気があります。「ミライザ」にあるバーベキューテラスは、どちらかというと国内の方が多く利用されていますね。

――道頓堀は個人旅行が増えた影響で、団体バスが減っているのですが、大阪城はどうですか。

団体のバスはそんなに減っていません。駐車場の売り上げもそんなに下がっていません。個人客の方は確かに増えてます。

――インバウンドは「大阪周遊パス」を使われる方が多いかと思います。利用者の割合はどれくらいですか。

周遊パスを使われる方はかなり多いですね。多分ほとんどインバウンドの方だとは思うんですけど、海外か日本かという統計は取れていません。磁気カードなので、どこで使ったかというのは出せるかもしれませんが、どこの国の人かっていうのは、数字では分からないですね。

――大阪観光局が出している地下鉄が1日乗り放題乗車券「大阪周遊パス」提示で無料になる施設もあり、大阪城でも使えますよね。※「大阪周遊パス」は2日券もあり。

天守閣が無料になります。他にも、御座船、西の丸庭園の櫓公開とか、「ミライザ」のイリュージョンなども使えるようになったので、大阪城公園の中で(周遊パスが)使えるコンテンツは増え、人気があります。

インバウンドの増加で変化したこと


――インバウンドが増加したことによって、変化してきた事はありますか

昨年から天守閣に4か国語対応の熱中症注意のアナウンスを入れています。あと何かあった時の海外の方々の誘導のアナウンスなどを用意したことが、一番変わったところです。インバウンドの比率が増えたことにより、日本語だけの呼びかけだけだと結局半分の人は意味が理解できない、伝わらないということが起きたので。

最初は閣内の語学スタッフが ICレコーダーに録音して流していましたが、雑音が入ったりうまく行き届かないことがあったので、きちんと録音しました。その時に他の緊急避難誘導の呼びかけなども録音して、それをコンテンツとして持っています。今のこの時期(7月)だと、熱中症関係でそれを活用している感じですね。

――何か国語ぐらいに対応していますか。

日英韓中で4ヶ国語ですね。例えば本丸広場で開催するイベントも、今までは日本語だけのチラシだったのですが、お客さんの半分がインバウンドなので、今年から多言語対応のチラシを作って会場に設置しています。当日見に来ている人により(知識を)深めてもらう方がいいかなという感じですね。

――道頓堀で開催している盆おどりは盆ダンスとしてインバウンドにも結構知られているようです。大阪城でもインバウンドの方が参加できるイベントなどはありますか。

今年は「ジョーテラス」の方に着物を着られるお店があるので、そこと1回連携して浴衣体験みたいなものをやってみようかなと思っています。

――インバウンド向けのイベントやサービスとして新しく加わったものはありますか。

昨年、西の丸庭園に七夕の笹を置いて願い事を書くということをやりました。案内も他国語対応のものを作って。昨年は西の丸だけだったんですけど、今年は「ミライザ」の方も。短冊が足らなくなってしまうほどだったので、また来年もやれたらという話はあります。短冊もアラビア語やハングル、日本語、英語などがあり、面白い絵づらになったなという印象でした。

天守閣はインバウンド向けのイベントはしていないです。ただ四季のイベントや展示を海外の人にも知ってもらおうとしています。 文化財の展示解説の多言語対応については、天守閣は比較的早く取り組んでいた部分がありますので、そういうものの積み重ねで今があるのかなと思います。

公園全体でもインバウンド向けに何かしますというよりは、まずはちゃんと海外の方にわかってもらえるようなご案内をしていきたいですね。

――多言語対応はほとんど出来ているということでしょうか。

ホームページレベルでいえば対応しています。だからといってお店に行った時に、きっちり全部対応できるかと言うとそこまでではない。でもメニューなどはかなり揃えているかなと思います。

天守閣のパンフレットは、全部他国語版があります。新しいガイドブックやそれぞれの施設のリーフレット、総合ガイドブックやホームページなどの多言語対応に着手しているところです。

ただインバウンドの方がネット環境に長けているので、ネットでいろいろ見せられて質問されたり、Wi-Fiを借りられるかと聞かれたりすることがあります。こちらも海外の方々に早くついていかなければという部分はありますね。

インバウンドの増加によって生まれた課題


インバウンドの増加により、緊急時の誘導など新たな課題も


――インバウンドが増えたことによる改善の要望や問い合わせ、困っていることなどはありますか。

案内をどこまでできるかっていうところと、さっき少し言いましたけど、色々な時の誘導の仕方などはやっておかなければと思っています。

――この前の地震(大阪府北部地震)の時はどうでしたか。

地震が起きた時のアナウンスなどは用意してたんですけど、職員も出勤できるか分からない。職員が天守閣やパークセンターに居ない状態で、その時に天守閣はどうなっているかなど、情報発信は考えていかなければならないですね。

――これはもう大阪全体の問題ですね。

そうですね。実際来てくださった方には、いろいろ伝える手段がだいぶ整備されてきています。ただ離れている人にネットを通じてどう呼びかけるかが、今後の課題で整備していかないといけないところです。最近、大阪城公園のFacebookとInstagramのアカウントをスタートしまして、天守閣もTwitterをやっていこうかなと思っています。

――英語でですか?

Facebookは、今まで日本語で更新していたんですけど、今年からちょっと多国語も入れてみました。内容にもよるんですけど、簡単な情報は英語ですね。例えば展示情報など、展示の音声ガイドと連動できそうなもの、原稿が用意できそうなものは多言語で。

パンフレットは多言語になっているので、解説などそのままコピーペーストして使えますよね。そういう風に、文章化できるものは4ヶ国語で出しています。そうすると、ダイレクトメッセージにハングルや英語で質問が来るという反応がでてきています。

――なるほど、それはどう対応されているのですか

「開館時間は何時頃ですか」など、単純な質問や感想などの場合は、一応調べて答えています。今のところは1つか2つ、ポンポンとくるぐらいなので。

今後の展開と目標


年間1200万人もの人が来場する大阪城公園


――大阪城公園として、今後の展開を教えてください。

劇場施設「クールジャパンパーク」が2019年2月にオープンします。それができて新しい建物はちょっと一段落すると思うので、デジタルサイネージなど園内の案内を変えたいと考えています。今は文字で書いてあるものがすごく乱立しているので、もう少しわかりやすくしたいと思っています。

――今後の動員目標や集客目標の展望などはありますか。

インバウンドのピークがどっかで頭打ちで来るのではないか?ということは、ここ3年ぐらい意識し続けています。減るかもしれないと思いながらも、結果上がっているという感じ。 動員数を増やすことを考えるというよりも、来られた方々に1分でもいいから、長く大阪城に滞在していただき、楽しんでもらえる形に持っていければというのが今の目標かなと思います。

――その一つとして劇場があるということですね。

そうですね。旅行会社が今まで2時間ぐらいあればいいと想定していたけど、半日ぐらいいける!という風に思っていただけるような場所になればいいなと思っております。 天守閣に入らなくても、公園内で楽しんでいただければ。今の時間混んでいるから、ちょっと先にご飯食べようとかね。

――270万という数字は大阪城公園の来場者数ですか

天守閣の入館者です。推定ですが、公園全体では年間1200万人が来場しています。しかもうちは増えすぎた時に入場制限できない場所なので…。天守閣はできますが、大阪城公園自体ができないんです。

トライアスロンや大阪マラソンなど、できるだけいろいろな形で、大阪城公園を楽しんでもらえるような形にしたいと思っています。今はできるだけ1200万人に長くいてもらえるようにというのが、一つの目標ですね。

――1200万人というのはもう少し増えるような見通しですか。

多分増えるのかなと思っています。公園独自イベントがもう少し増えて、今までの推計で出てくる数字ではなく増えていくのではないでしょうか。夏と春あたりに人が集中することもあるのですが、閑散期はなくなりました。

日本でいう冬の閑散期が中国の春節にあたります。春節の時期はちょうど梅が見頃で、梅林が人気なんです。12月や1月という冬の時期も何かできるかもしれないですね。天守閣だけではなく公園もありますので、そのあたりはこれから先の課題なのかなと思います。

(了)

※本企画は、情報誌「関西ウォーカー」2018年8/28発売号の大阪インバウンド特集「YOUは何しに大阪へ?」との連動企画です。

二木繁美

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