連載第2回「大阪インバウンド最前線」ナイトタイムエコノミーを活用して大阪の夜を盛り上げたい

関西ウォーカー

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この連載は、大阪で激増するインバウンド(訪日外国人観光客)の最前線を、人気施設や旅行・観光に詳しい業界関係者などキーパーソンに伺うインタビュー企画。第2回は株式会社JTB 西日本インバウンド部 営業統括担当部長 松岡日出人さんに、インバウンド観光の現状や関連するニーズ、今後の展望などを聞いた。

インバウンド観光の現状


今回お話を聞かせてくれた、株式会社JTB 西日本インバウンド部 営業統括担当部長 松岡日出人さん


――大阪のインバウンド観光について現状を教えてください。

定番人気はユニバーサル・スタジオ・ジャパンですね、それから大阪城。最後はやっぱり道頓堀と心斎橋でショッピングと食事というのが定番ですね。

――ここ最近の新名所よりも定番ですか。

そうですね、定番人気の観光スポットで写真を撮るのが根強い人気です。

――インバウンドが急に多くなったのは何年ぐらいからですか。

ちょうど私たちJTBが「関西ツーリストインフォメーションセンター」(以下、KTIC)を開設した2014年ぐらいからですね。

――そのインフォメーションセンターを開設したきっかけは何ですか。

インバウンドの増加が予想されていたのと、関西空港がLCC(ローコストキャリア)誘致を積極的に進める話があったこと、さらにアジアの各国が自由旅行の時代を迎えることを踏まえ、ビジネスチャンスとして旅ナカでのタッチポイントを作ろうということで開設しました。

一番最初に心斎橋(2017年4月大丸心斎橋店と統合)に開設して、関空の第1ターミナル、京都、大丸心斎橋店ですね。関空の第2ターミナルにもあります。

大丸心斎橋店南館の2階にあるKTIC。関西および全国各地の観光・交通・文化体験情報など、インバウンドのいろいろな相談ができる


――ここではどういったことができるのですか。

旅の情報提供から、滞在中に必要になる交通パスや食事の手配などのサポートをしています。

また、運営がJTBですので、JRの切符を手配したり、宿を手配したりということもできます。

――どういったものの取り扱いが多いですか。

外国人専用の交通パスの取り扱いが最も多いですね。一番売れているのが「大阪周遊パス」。大阪市内の地下鉄とバス、さらに人気の観光スポットの入場チケットがセットになったお得なパスです。あとは「スルッとKANSAI」などの私鉄乗り放題パスや「JR-WEST RAIL PASS」が非常に人気となっています。

――交通アクセス以外には何がありますか。

人気の観光施設と交通アクセスがセットになったもの。例えば、夏は水族館「海遊館」の入場と大阪メトロ乗車券がセットになった「海遊きっぷ」や、遊園地「ひらかたパーク」の入場券と京阪電鉄の乗車券がセットになったパスです。旅行する前に指名買いで購入される方が増えています。

――「ひらかたパーク」(通称:ひらパー)に行く海外からの観光客は結構いらっしゃるんですか?

ちょうど夏ですので、小さなお子様連れのファミリー層が非常に多く、お子様連れで行けるところとして人気のようです。海遊館とかひらパー、大阪のレゴランド・ディスカバリーセンター、あとは兵庫県ですけど、キッザニア甲子園も、海外からのファミリー層に人気です。

――キッザニアも行くんですか?

キッザニアはお得なセットはありませんが、インターネットで予約して行っているようです。冬になると、六甲山の人工スキー場やびわ湖バレイのスキー場も人気があります。六甲山人工スキー場では、訪日外国人旅行者向けのスキースクールを開講するなど、受入環境は着実に整いつつあります。今年はいろいろ一緒に取り組みができたらいいですねという話をしています。

――関西を訪れる訪日外国人旅行者は中華系の方が多いですか。

データ上も訪日客の約65〜70%は東アジア4か国のお客様が占めています。圧倒的に中華圏か韓国のお客様が多いですね。航空路線網、 LCCが運航している線もそこが多いですから。

インバウンドのニーズは


――観光スポットとツアー内容の他にも何かありますか。

ガイドの説明を聞きながら回りたいというニーズがあります。弊社が企画実施する「サンライズツアー」では、京都や奈良の人気の観光地を効率良く巡るツアーが最も人気です。また「商店街を訪ねる」「舞妓さんに会う」「着物を着る」などの体験を楽しめるツアーも人気です。

――ツアーの参加者とはどのような方ですか。

欧米やオーストラリアからの旅行者です。また、最近はフィリピン、マレーシア、シンガポール、タイなど東南アジアからの参加者も増えています。

――ガイドが案内してくれた方がいいということですか。

そうですね。ちょっと話が脱線するんですが、大丸心斎橋店のすぐ横の工事フェンスに心斎橋や大丸の歴史が描かれていて、その内容をガイドが説明している姿を目にすることがあります。旅行者はその説明を楽しそうに聞いています。日本を詳しく知りたい、というニーズがあるのですね。

――主流を占める中華圏や韓国の方はいかがですか。

中華圏や韓国の方はグルメやショッピングがメインです。

――KTIC大丸心斎橋では食事やショッピングの案内もされたりするんですか。

もちろん対応しています。食事に関する情報はネットでも検索できますが、内容や値段の違い、食べ放題の仕組みや条件などがわかかりにくいため戸惑う方も多いことからKTIC大丸心斎橋で予約、手配をしています。

――どのようなレストランが人気なのですか?

「カニ」は最も人気のメニューです。日本人にとって「カニ」は冬の味覚ですが、外国人旅行者にとっては、季節に関係なく大人気のようです。また「焼肉」「しゃぶしゃぶ」「すき焼き」など「和牛」も大人気です。KTIC大丸心斎橋でお店の宣伝をしてほしいとの問い合わせも増えています。

――買い物などに関してはいかがですか。

ショッピングのクーポンや割引券を各種連携をして配っています。大丸百貨店や関空免税店、ドラッグストアが人気です。あとは家電量販店とか。お客様のお得になるような割引券を各種お渡ししています。

――クーポンや割引券を取りに来るような場所になっているのですか。

KTIC全拠点で割引券をお配りしています。

――具体的に行きたいお店を決めていらっしゃるわけではないんですか。

決めておられる方が多いとは思いますが、よりお得にショッピングしたいという方も非常に多いです。そのため、割引クーポンに関する情報もよくご存知でクーポンをもらってからショッピングに出かけるというのが定着していると思います。

課題はナイトカルチャー


「外部がうまく連携して、大阪のナイトカルチャーを盛り上げるお手伝いができれば」と松岡さん


――KTIC大丸心斎橋では、道頓堀ZAZAで上演しているフードミュージカル「Gotta(ゴッタ)」(日本語がわからなくても楽しめるように企画されたショー)も紹介されていましたが、ご協力されているんですか?

道頓堀商店会様がエンターテイメントの町として盛り上げていこうとされていますので、我々もぜひ販売面でご協力したいと思っています。KTICの各拠点では情報発信や前売券を販売をしています。

――他にはどのようなエンターテイメントのチケットを取り扱っていますか。

若年層をターゲットにクラブと和の文化を組み合わせた「OSAKA NIGHT REVOLUTION」というライブエンターテイメントの取扱を予定しています。9月25日から毎週火曜日の夜に「道頓堀ZAZA」にて開催します。

――これはどこが作られているんですか

トライハードエンターテイメントジャパンという会社と一緒に企画、運営します。また、同社がプロデュースする大阪の「クラブ」10店に入場できるお得な「OSAKA NIGHT CLUB PASS」を昨年より販売しております。韓国や欧米の若者を中心に指名買いでKTICに来店される方も増えています。

――それ以外の取り組みもありますか

ロングランプランニング(株)という会社とは、外国人観光客向けチケットステーション「Tickets Today」の設置を通じて、日本の伝統芸能から各種エンターテイメントチケットをお得な価格で提供しています。

――外国人旅行者が気軽に、お得にエンターテイメントチケットを購入できるということですか

そうですね、ニューヨークにあるTKTS(チケッツ)のようなサービスを目指しています。

――ソフト部分の所で物足りないところがあるという事でしょうか。

大阪では、夜に遊べる場所を大阪観光局が認証していく実証実験「大阪ナイトアウト」をやっています。

海外の方から、夜に遊べる場所って実はかなりニーズがあるのですが、まだまだ情報が発信しきれていない。レストランや交通系に関する情報は充実していますが、ナイトタイムに関する情報は十分とは言えず、まだまだ可能性があります。カラオケなども含めて、大阪のナイトタイムの過ごし方を案内できればと思います。

大阪観光局のデータにもありますが、東京と大阪の違いは大阪の方が早く宿に帰ってしまうこと。新宿などは夜の22時から24時まで外国人がいます。そういうデータがあるので、大阪はもっと夜を充実させなければと思います。

――それに関してJTBさんの取り組みなどはありますか。

「道頓堀ZAZA」の横に、エンターテイメントと食の情報発信拠点として「TONBORI BASE Cafe&Info」を6月にオープンしました。今後はナイトインフォメーション機能も充実させていきたいと思っています。

――インフォメーションセンターの夜版ですね。

大阪観光局が「大阪ナイトアウト」でいろいろ認証をしていますが、 やっぱり実際に質問に答えたり案内するリアルなタッチポイントも必要かなと。「TONBORI BASE Cafe&Info」がそういう役割を担えたらと思います。

――外部がうまく連動して盛り上げられればいいですね。

最近、日本での体験、アクティビティの予約などを手がける事業者が、日本の「旅ナカ体験」のマッチング事業を強化する動きがあります。旅ナカ体験を提供する事業者も益々増えてくるでしょう。

――簡単な街歩きのガイドでお店屋さんの紹介や体験ができると。

地元の立ち飲み屋に一緒に連れて行ってくれるとか。そういうものをマッチングするような事業が増えましたね。

――さすが目の付け所が違いますね。インフラが作れるでしょうね。

弊社はリアルのタッチポイントを運営しているので、それぞれの持ってる強みをうまく連携し、 一緒に大阪の街を盛り上げていけたらいいなと思います。

今後の展開は


――今後の展望としてはどうですか。

昼間の観光、食事、ショッピングに関しては充実していますが、「夜」に関しては旅行者が安心安全に楽しめる空間が乏しいと思いますので、地元の事業者様や関係者と連携し大阪の夜を一緒に盛り上げていきたいと思います。

(了)

※本企画は、情報誌「関⻄ウォーカー」2018年8/28発売号の大阪インバウンド特集「YOUは何しに大阪へ?」との連動企画です。

二木繁美

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