連載第3回 1991年「愛しあってるかい!名セリフ&名場面で振り返る平成ドラマ30年史」

2018年9月4日 7:52更新

東京ウォーカー(全国版) 関西ウォーカー

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僕は諦めません。テレビが、テレビが好きだから!

名セリフ&名場面で振り返る平成ドラマ30年史

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街を歩けば、あちこちから「愛は勝つ」「どんなときも」が聞こえていた1991年。人気絶頂の宮沢りえがヌード写真集「Santa Fe」を発売し、大相撲の若貴兄弟がアイドル並の人気で騒がれ、さらにはジュリアナ東京がオープンし、ボディコンの女性が扇子を振り回し乱舞していた時代である。ドラマは何が放送されていたかと調べてみると、高視聴率をはじき出した名作がズラリ!「視聴率と作品の出来は決して比例しませんが、この頃は役者だけでなく脚本家・スタッフが個性的で、それゆえ攻めていたドラマが多かったのも確かですね」。そう語る影山貴彦氏が最初にセレクトしたドラマは、レジェンド・オブ・月9のあのドラマだった!

「東京への憧れ」が詰まった東京ラブストーリー

―1991年は、名ドラマが多いので迷いますね。印象的な作品はありますか?

まず挙げたいのは「東京ラブストーリー」です。社会現象になるほど大ヒットしたドラマですが、私は柴門ふみさんの原作が大好きで。私が最初に柴門マンガに出会ったのは「P.S.元気です、俊平」なんです。浪人生の話なんですが、ヤングマガジンで連載していた当時、私も浪人生で、もう自分の血となり肉になる、それくらいの愛読書でした。「晴れてテレビ局に入ったら、ボクがドラマ化するぞ!」と思っていたほどです(笑)。その夢は叶いませんでしたが、1999年、TBSが堂本光一さん主演でドラマ化していますね。「P.S.元気です、俊平」もそうですが、柴門ふみさんは男目線で書くのがとてもうまい人で、「東京ラブストーリー」も原作は永尾完治(カンチ)目線なんです。それを赤名リカに焦点を当てたのは、プロデューサーの大多亮さん、そして脚本の坂元裕二さんの功績です。

―赤名リカというキャラクターは、本当に衝撃でした。

「ねえ、セックスしよ!」は、ドラマ史に残る名ゼリフですよね。マンガにもこのセリフはあるのですが、やはり実写で言われるとすごいインパクトでした。このセリフはカットされたり、「エッチしよ!」に変更されてもおかしくないと思うのですが、このままに留めたセンス。脚本家の坂元裕二さんは、「最高の離婚」「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「カルテット」などで会話の巧みさを評価されていて、この「東京ラブストーリー」でも、その片鱗はすでに出ています。

鈴木保奈美さん演じる赤名リカも当時は「ぶっ飛んでる」といわれましたが、今見れば、一途で古風でかわいげのある女性像なんです。リカに惹かれるのは、「支配したい」と「振り回されたい」の両方があるからでしょうね。関口さとみ役の有森也実さんも、しっとりとした女性を演じていました。私は長崎尚子役の千堂あきほさんがとても好きでしたね。彼女については、1993年「振り返れば奴がいる」のときに、じっくりお話できるかな、と思います。

そして、なによりカンチ役の織田裕二さん。織田さんとは、2度ほど取材でお会いしたことがあります。こだわりがある方だと聞いていましたが、こちらが熱く攻めれば、それ以上に熱く応えてくれる。そんな好印象を持ちました。彼が凄いのは、大人気ドラマの後は、たいていその役のイメージから脱却するのに苦労するものですが、絶えず「当たり役」を作っていることです。1993年の非情な医師を演じた「振り返れば奴がいる」は、全てを突き放したような演技が素晴らしかったですし、1997年の「踊る大捜査線」では青島刑事で再び社会現象となる人気を博しました。今年10月には「SUITS/スーツ」で月9に帰ってきますね。しかも、このドラマで鈴木保奈美さんと27年ぶりの共演を果たすということ。これは本当に嬉しい事件です!

―キャスティングの見事さ、作り手の目線、しっかりとした原作。「東京ラブストーリー」は月曜9時に若者が街にいなくなる、というほどの大人気ドラマとなりましたが、ヒットする条件が揃っていたんですね。

そうですね。しかも「東京ラブストーリー」は、地方の若者の誰もが抱いていた東京への憧れも満たしてくれました。帰国子女のハッキリとモノを言う女の子、大きなケータイ電話、シャレた会話、仕事や恋バナを共有する仲間。東京のリアルと夢が絶妙の配分で詰まっていて、「こんなのに憧れるんでしょう?」と応えてくれる…。東京は、地方から出てきた人のほうが多い街です。原作者の柴門ふみさんは徳島県出身で、あるインタビューで「徳島は眠っているような街。阿波踊りの4日間だけ目が覚めて、残りの361日は寝ているってまさにその通りなんです」と仰っています。私も岡山県出身の田舎育ちで、すごくそれがわかるんですよね。花の都東京に憧れて、早く上京してオシャレして、恋をして、ワケのわからん遊びしたい! と胸いっぱいに憧れを抱いていましたから。

憧れではなく「安心」な主役、武田鉄矢

―もう一本、1991年、月9で高視聴率を獲得したのが「101回目のプロポーズ」です。

このドラマは、「東京ラブストーリー」よりも男性支持が高かったのではないかな、と思います。それは、武田鉄矢さんが主演ということ、そしてその設定が「さえない、司法試験に何度も落ちる、仕事も特別できるタイプではない」という、たいして取り柄のない男なんです。しかし、だからこそ、男性は安心して見られたのではないでしょうか。イケメンと美女、という流れが多かった月9で、「もしかして、オレのほうが勝ってるかも?」という主人公に安心感を覚えたといいましょうか。そう思うと、男のほうがヤキモチ焼きなのかもしれませんね。今の若者は違うかもしれませんが、私なんかはもう、イケメンに関しては嫉妬ばかりで(笑)。

ちなみにトラックの前に出て「僕は死にましぇん!」と叫ぶ名シーンですが、トラックが本当にギリギリまで近づいていて、武田鉄矢さん、ちょっとのけぞっているんです。本当にこんなことをされたら、トラックの運転手さんは大迷惑なわけですよ。ただ、「101回目のプロポーズ」然り「東京ラブストーリー」然り、今見れば現実にあるわけがないシチュエーション、ツッコミどころ満載のセリフだらけですが、当時は多くの人がドラマはドラマだと承知のうえで感動していました。繰り広げられるロマンに浸っていたんです。今はネットでの粗捜しが多い時代ではありますが、最近では、以前のように素直に「浸り楽しむ」傾向も戻ってきている気がします。

田村正和の振り幅、浜田雅功の自然体

―武田鉄矢さん、織田裕二さんの名前が出ましたが、1991年は、男優さんがいい味を出しているドラマがとても多い感じがしますね。

そうですね。長渕剛が元ゴロツキの医者を熱演した「しゃぼん玉」や、ジェットコースタードラマと呼ばれた「もう誰も愛さない」もありました。主演をした吉田栄作さんは、森脇健児さんとコミカルな演技を披露した「ギャッツビーつけて、カッコつけて。」のCMもよく覚えています。ただ、当時は「白いTシャツにジーンズが定番の、かっこつけたイケメン」くらいにしか印象がなかったんです。ところが今、トレンディくささを一切感じさせない、素晴らしい「枯れ」が表現できる役者として大好きです。正直予想外でしたが、この大逆転は嬉しいですね。

そして、田村正和さんの「パパとなっちゃん」もこの年です。田村正和さんは、80年代後半から「パパはニュースキャスター」などで、若いころとは違ったコミカルな演技でブームを巻き起こしましたし、なっちゃん役の小泉今日子さんも、普通の純粋な娘役もできるという器用な面を発揮しました。が、なんといっても、このドラマで特筆すべきはダウンタウンの浜田雅功さんでしょう。彼が、芝居ができると業界に認知された記念すべき作品です。どこまで素でどこまでが演技かわからないほど、自然なんですね。この年の秋クールの「ADブギ」では準主役に抜擢されています。

「個性」が埋没する苦しい時代のリアル「ふぞろいの林檎たち」

―この年は、なんと前作から6年ぶりに「ふぞろいの林檎たちⅢ」も放送されています。

「ふぞろいの林檎たち」は、私の青春のバイブルです。新宿の高層ビルを背景にリンゴを投げて、サザンの曲が流れて…。山田太一さん脚本なのですが、リアルな大学生の本音が、胸が苦しくなるほどポンポンと各シーンに出てくるんですよね。よく「トレンディドラマ」という言い方をしますが、トレンドとは「潮流・流行」を意味します。そういった意味では、「ふぞろいの林檎たち」シリーズは、紛れもなくトレンディドラマといえるでしょう。当時の等身大の若者像が、そのままあの中に詰まっていますから。大学名もほとんどが実名で、メンバーは女性にモテたいためだけにサークルを立ち上げて、就職に悩んで。私が通っていた大学なんて、テニスサークルだけで200ほどありましたから、個性なんか埋まってしまうわけです。なにかしなければいけないけれど、なにをしていいかもわからない。自己主張ができないまま、ただただ4年間が過ぎていくあの焦燥感。今の若者も、きっとそうですよね。漠然とした不安を抱えてあえいでいるのは、いつの時代も同じだと思います。1983年に放送された「ふぞろいの林檎たち」の中で、就職の面接のシーンがあるんです。待合室で大学名と名前を呼ばれていく時、柳沢慎吾さん演じる西寺が「(無名の大学は)俺たちだけだよ」と呟くんですよね。その時に時任三郎さん演じる岩田が返す「胸張って生きてりゃいいんだ」というセリフ。私は、この言葉にどれだけ勇気づけられたことか。

こういった、あえぎ苦しみ乗り越えていくドラマは、当時のフジテレビ「月9」にはなかったですが、それでよかったんです。月9は「モテ指南」。真似したいライフスタイルの提案が、とても上手だった。局と枠にも個性があり、TBSの金ドラ枠は月9とは違った方向性、リアルを切り取って復活できたんです。だからこそ、TBSが金ドラ枠を消滅させた2年間(連載第2回参照)は本当に大きかった。「ふぞろいの林檎たち」は、あの2年間があれば、もっと長いシリーズになったと思うと惜しくてなりません。役者というものは生存競争が激しいですから、オリジナルメンバーが同じテンションで続編を作り続ける、というのは本当に難しいことなんです。最近では「コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」の3rd seasonが7年ぶりに制作され、大ヒットしましたが、あれもオリジナルメンバー5人が揃っているからこそ。ひとり欠けるだけで、世界観は変わってしまいますよね。全員がキャリアを順調に積んでタッグを組める、というのは奇跡の確率だと思います。

大衆とベストコンディションで寄り添えるチャンスは、そうそうやってこない。我々の人生も同じで、「今、いかないと、やらないと」というタイミングは絶対ある。それを逃してはいけないと思います。

元毎日放送プロデューサーの影山教授

【ナビゲーター】影山貴彦/同志社女子大学 学芸学部 メディア創造学科教授。元毎日放送プロデューサー(「MBSヤングタウン」など)。早稲田大学政経学部卒、関西学院大学大学院文学修士。「カンテレ通信」コメンテーター、ABCラジオ番組審議会委員長、上方漫才大賞審査員、GAORA番組審議委員、日本笑い学会理事。著書に「テレビのゆくえ」(世界思想社)など。

【インタビュアー】田中稲/ライター。昭和歌謡、都市伝説、刑事ドラマ、世代研究、懐かしのアイドルを中心に執筆。「昭和歌謡[出る単]1008語」(誠文堂新光社)。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」連載。

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