5年ぶりの新作も完全オリジナル。ロックでカオスな三木 聡ワールドが炸裂!<連載/ウワサの映画 Vol.53>
東海ウォーカー
5年ぶりとなる三木 聡の監督・脚本最新作です、「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」。タイトル、長っ。“声帯ドーピング”っていうさすがの着想のもと、マリリン・マンソンばりの阿部サダヲ&吉岡里帆がハイテンションに大暴走! 鮮血噴き出すロックなコメディなのに時々ジーンときちゃう、おふざけ×まじめのカオス…。置いてけぼりをくらう人も多発しそうな(笑)、生産者の顔が丸見えの”三木ワールド”が進化を遂げてますっ!

4オクターブの音域と圧倒的な声量をもつ世界的ロックスター、シン(阿部サダヲ)。なんと、そのカリスマ的な歌声は“声帯ドーピング”というオキテ破りの方法によって作られていた...! 長年にわたる声帯ドーピングのやりすぎにより彼の喉は崩壊寸前。そんなある日、恐怖に怯えるシンと出会っちゃったのは、異様に声が小さすぎるストリートミュージシャン・ふうか(吉岡里帆)。正反対ゆえに反目し合う2人でしたが、ふうかが偶然、シンの“声帯ドーピング”の秘密を知ってしまったことで事態は一変。やがてシンの”最後の歌声”を巡る大騒動が勃発し、2人は謎の組織から追われるハメに! …、というお話です。

「イン・ザ・プール」~「俺俺」にわたる映画作品から、「時効警察」「熱海の捜査官」などのテレビドラマまで、独自の無秩序路線をひた走る三木監督。自身もバンドをやっていたという彼が「すべてをやりきった」と言い切る、集大成的な1本に仕上がっています。セリフの内容がバレる程度に「ピー」をかぶせたり、こんな画にあんな音楽を合わせたり…ってな具合に主張が激しいパーツがごっちゃごちゃ。でも、強引かつミラクルにまとめてある(笑)。

なにより、期待を裏切らない男・阿部サダヲの”絶叫する堕天使(シンの愛称)”ぶりが最高! 真顔で笑わせてきます。「グループ魂」のボーカル・破壊としても活躍しているだけあって、歌声もシャウトもホンモノ! 彼が歌う主題歌「人類滅亡の歓び」もかっこいいし(作曲がHYDEと聞くと格別にかっこいいから不思議。ちなみに作詞はいしわたり淳治)。ある理由で大きな声が出せないふうか役の吉岡里穂ちゃんも、殻を破る過程をひょうひょうと演じ、猛特訓したギター&歌唱で驚かせてくれますよ。そんな意外性抜群のバディによる○○シーンがね、これまた長っ!で衝撃的。

当然ですが、脇キャラもパンチ効きすぎ。監督に「この2人の組み合わせはマストでほしい」と言わしめた、ふせえり&松尾スズキ(ふうかの親戚のおばさん&おじさん役)が特に! もうね、松尾さんが黒目を寄せてユルめに連発するギャグの中毒です、私。主要どころでは、レコード会社のシン担当・坂口を演じる千葉雄大くんもオシ。セリフがいちいち意味深で、時にセクシーに新境地を開いてますよ。そして一部マニアのニヤニヤを誘うのが、三木作品常連組のちょい役陣! 「よろこびソバ」という黒い麺×赤いスープのラーメンを売る森下能幸、レコードが売れず無料で配った経緯のある「無料レコード」社長役の若松 了…。ムダに細かいキャラ設定には敬意しかないわぁ(大げさ)。


ビジュアルも、キャラも、音楽も図抜けて濃く、シリアス調からコント調まで忙しく演じ分ける役者陣の巧さもあって見応え十分でしたねー。いつも以上に。毒たっぷりのバカバカしさに押されつつも、ガツンとほとばしる愛とパワー。シンの「やらない理由を探すな!」ってセリフがジワジワ効いてくるぅ…。こんな”ガチなオリジナル”、ほんとに希少!【東海ウォーカー】

【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします! 最近のお気に入りは「アンダー・ザ・シルバーレイク」(10月13日公開)のアンドリュー・ガーフィールド!
おおまえ
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