映画『食べる女』原作者・筒井ともみが語る女性に願うこと「自分の心と体が食べたいものを感じる女になってほしい」
関西ウォーカー
小泉今日子が主演を務め、沢尻エリカ、前田敦子、鈴木京香ら豪華女優陣の共演でも話題の映画『食べる女』。「食」と「性」をテーマに、年齢も職業も恋愛観も人生観も異なる8人の女性の「今」を描いている。作品誕生のきっかけから女性の食に対する向き合い方まで、原作者・筒井ともみが語ってくれた。
本作は「人はおいしい食事をすると、体が元気になる。いとしいセックスをすると、心が優しくなる」そんなメッセージを込めて筒井が発表した「食べる女 決定版」が原作。筒井は映画化にあたり、企画、脚本、プロデュースも手掛けている
ーーこの作品を書こうと思ったきっかけを教えてください。
最初は、レストランや料亭で起こる男女のラブアフェアの連載小説を書いてもらえないかとお話をいただいたんですが、私そういうのが苦手で(笑)もし書くなら料理は実直なもので、肉じゃが、コロッケ、玉子かけご飯とか。出てくる女性もストレートな方がいいなと思ったら『食べる女』ってタイトルをすぐ思いついて。そこから2.3年連載小説として書きました。
ーータイトルが先だったんですね。その原作を今回なぜ映画にしようと思ったんですか?
原作を出した後に映画化の話をいただいたんですが「セックス・アンド・ザ・シティ」みたいなものをやりたいと言われて、私が望んでる内容と違ったんですよね。そのうち大学院で教えることになって映画の話も立ち消えのようになってしまって。しばらくたって仕事が落ち着いてきたときに、もう一度映画の話を進めてみようかなとプロデューサーに声をかけました。企画の当初から主役は小泉さんがいいと思っていて小泉さんからOKをもらって、完成させた脚本と小泉さん主演で企画を売り込みにいったら、地上波のテレビ局は総ナメのようにダメでした(笑)
ーーなぜダメだったんですか?
「誰がどうなったかが、わかりにくい」って言われて。でも、人生ってそんなわかりやすい結論ばっかりじゃないし、答えが見つからないことってありますよね。
ーーさまざまな困難があって完成した作品だったんですね。映画を観ると原作の細かな設定をうまく集約しているように感じました。映画に落とし込むのは相当難しかったように思えますが?
短編を一本の映画にするって難しいですよね。私の場合、映画の脚本を手掛けるときは「概念」を大事にしていて。本作で言うと、トップシーンの子どもたちが地面に耳をあてるシーンなんです。地球には違った場所がたくさんあるけど、ひとつの水脈で繋がっていて、それが小泉さんが演じるトン子が住んでいる「モチの家」の今は枯れている井戸にも繋がっている。これがこの物語の世界観の始まりだなと思いました。小泉さんが演じるトン子は、雑文筆家にして古本屋の店主。文字を扱う人で、文字も過去から未来へ繋げてくれる。それが決まったとき、原作でどの人物や設定をチョイスしようかはわりとすんなり決まりました。
ーー小泉さんを筆頭にバランスのよい女優陣が揃いましたね。
「8人もいい女優を集めるのは大変だったでしょ?」って言われるんですけど、意外とすぐ決まって。小泉さんが主役だとみんな喜ぶんですよ。女っていい先輩を求めるので。あんな風に生きていいんだって。小泉さんにもトン子にもそう思わせるところがありますよね。
ーー小泉さんが演じるトン子は、筒井さんご自身がモデルのように感じましたが?
職業も似ているし、原作者として生みの親でもあるから責任もありますよね。みんなにご飯を食べさせるのも、私しょっちゅうやるんです。大学院のゼミも自宅でやっていたの。ゼミが終わるとちょうど夜の7時ごろで、お腹の空く時間。だから「先生は終わり。これから私は飯炊きババになるから」って(笑)毎回ではありませんでしたが。
ーー本作ではプロデュースも手掛けていることから、撮影現場に入っていたそうですね。現場の雰囲気はいかがでしたか?
キャスト、スタッフ、誰に聞いてもよかったって言ってくれます。楽しいし、嫌なことがひとつもなかったですね。女優さんたちはみなさん本当にさっぱりした感じで、食べるシーンではカットがかかった後でも食べ続けていました。
ーー劇中で出てくる料理はどれもおいしそうですよね。大皿で出されているのも豪快でおいしそうでした。
ざっくりしたのが好きなんで、私。女優さんたちも「おいしい」より「うまい!」って言って自由に食べてくれました。菜の花の昆布〆めは、箸よりも手で食べた方が美味しそうに見えるから手で食べてもらいました。
ーー劇中の料理は、すべて筒井さんのレシピによるものだそうですね。
材料も作り方もコツも全部レシピに書いて、クッキングスタイリストさんに渡して作ってもらいました。普段の撮影なら料理が出てくるシーンでは冷めたものを出すこともあるかもしれないけれど、今回は熱いものは熱く、炒めるものは炒めた直後に出していました。おいしそうなのがリアルですよね。
ーー筒井さんから見て、今の女性の食に対する向き合い方について、どう感じていますか?
自分の心と体が食べたいものを感じる女になってほしいですね。「自分が今何を食べたいか」がわかることはとても大事。それがわかるようになると、どんな恋愛をしたいか、どんなセックスで抱き合いたいか、それは自分がどんな世界を望んでいるのかに通じていきます。例えば、女って可愛いと思うのは、ちょっと前まで泣いてたのにうまいものを食べるとおいしい!って頬ばってくれる。おいしいことと悲しいことや口惜しいことを共存させられるんです。可愛いだけじゃなく、タフ。ちゃんと食べて自分の心と体で物事や世界を判断できるようになったら、それは素敵なレボリューションだと思うんです。この作品を見終わって何か食べようかなって思ったときに、うどんの一杯でいいから素直においしいって思えるものを食べてほしいですね。
ーー本作の玉子かけご飯を食べるシーンともリンクしますね。
玉子のような満月に引き寄せられるように、奇跡が起こって同じ時間に全然違う場所で女たちが玉子かけご飯を食べているかもしれない。みんなが少しずつ元気になって、ひそやかなレボリューションになっていく…そんな思いをこめたシーンですが、伝えるのがなかなか難しくて。必要ないって言われることもあるんですけど、私にとっては大切なシーンですね。
映画「食べる女」は、全国公開中。
山根翼
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