橋本愛「自分が読んでいた好きな小説の映画に関われることがうれしかった」
東京ウォーカー(全国版)
映画「ここは退屈迎えに来て」に出演

12年に山内マリコさんが発表した小説「ここは退屈迎えに来て」。詩的なタイトルが印象的なこの作品が、「ナミヤ雑貨店の奇跡」などを手がけた廣木隆一監督によって映画化され、10月19日(金)に公開される。その作品で橋本愛さんは、何者かになりたくて東京に出たものの、10年が経過し、地元に帰ってフリーライターをしている「私」を演じている。そんな橋本さんに、本作への思いと見どころを語ってもらった。

―この作品への出演が決まった時の気持ちを聞かせてください。
「原作の小説が発売された当時、まだ16歳くらいだったと思いますが、買ってお風呂の中で読んだのを覚えています。素敵なタイトルだなと思って手に取った作品でしたが、内容もすごくいいなと思いました。そんなふうに自分が読んでいた好きな小説の映画に関われることがうれしかったです。お話をいただいてから原作を読んで『すごく好き!』ということはこれまでにたくさんありましたけど、先に読んでいたというのはあまりありませんでした。それと、廣木(隆一)監督の現場にも興味がありましたので、それも楽しみでしたね」

―原作を読まれた時から何年か経ちましたが、作品の印象は変わったりしましたか?
「読んでから時間が経ったので内容は忘れていましたが、読み返してみて『こんな感じだった!』と読んだ時の思いがよみがえってきました。当時は一つ一つの景色が単体で見えていた感じだったのが、今はもう少し客観的にとらえられるようになったので、小説の構成にも驚いたり、それぞれの景色がつながる瞬間の感動も感じられたので、また違った印象を受けました。でも、読んだ当時、今回自分が演じた“私”ではなくて、門脇麦ちゃんが演じた“あたし”が一番心に残りました」
―“あたし”を演じたかったという気持ちが。
「ちょっとありました(笑)。」

―廣木監督の現場に興味があったということですが、撮影時に監督と何か話されたり、演技についてアドバイスなどがあったりしましたか?
「初日に、私が何と聞いたのかは忘れましたが、監督から『“私”という人は『迎えに来て』と言う人じゃないから』と言われました。待つよりは、能動的に動く人だと言われ、自分の中で“私”のイメージが整った気がしました。でも、それ以外はほとんど何も言われなくて。廣木監督の映画を観て、特に女優さんがすごく輝いている姿を観てきましたので、『私も魔法をかけられちゃうかも』と思っていたので心の肩透かし感がありました(笑)。柳ゆり菜ちゃんや渡辺大知くんには『今はどんな気持ちでいたの?』とか話しかけたりしていて、演出らしい演出があったので『いいなぁ』って思いながら、でもこれでいいのかもしれないとも思いました。無言のコミュニケーションみたいなものがあったような気がしますから。何も言われないことに対して、『見捨てられてる』とか不安になるわけでも、逆に『問題がないから何も言われないんだ』と自信を持つわけでもなくて、その中間の『わからない』という感覚を共有している感覚でした。役者側を試しているのか何なのか、それを聞いてしまうのはつまらないと思ったので、『廣木監督は面白い人だな』というところで終わらせておくことにしました(笑)」
―演じた“私”は東京に憧れて上京し、夢を諦めて地元に戻りましたが、橋本さんにとっての東京はどういう存在なのか教えてください。
「演じた“私”は東京に憧れて上京しましたが、実際の私は逆で、来たくなかったけど連れてこられた感じだったので(笑)。もともと、自分の地元・熊本が好きでしたし、途中、そこまでの愛情がなくなった時期もありましたが、また一周したのか、『熊本ってすごくいいところだなぁ』と思えるようになりました。ですから、最初から憧れとかは抱いていませんでしたが、以前よりは楽しめるようになりましたね。でも、波があって、突然「すごくつまんない」と思う時もありますし、突如『楽しい!』って気分になる時もあります。言えるのは、地元と比べると、東京は“焦せらせる街”だということです」

―上京する前、思い描いていた自分の将来とかはありましたか?
「このお仕事をしているとは全く思っていなかったので、勉強していい大学に進学して、適当に暮らしていくんだろうなと思っていました(笑)。ただ、この仕事をやり始めて、最初のころは25歳になっても続けているかどうかわからないと思っていましたが、今は、おばあちゃんになっても続けているイメージが自分の中にありますね。『腰が悪くなったらどうやって現場に行ったらいいんだろう?』というイメージを普通にしています。かたわら、いつ人生が終わってしまうかわからないという観点も捨てられないので、あまり先のことを考えるよりは、今日や明日のことを考えるという気持ちの方が強いです」
―音楽と主題歌をフジファブリックが担当されています。
「4人のころからずっと好きで聴いてきたバンドなので、今回、劇伴と音楽を担当されるというご縁が重なったことで、大事な映画にしたいという気持ちがより強くなりました。音楽、特に主題歌の『Water Lily Flower』がステキで、この曲を聴くためだけの90分でもあり得ると思ったくらいに素晴らしかったです」

―10月19日(金)に公開されますが、最後にメッセージをお願いします。
「好きな小説の映画化作品に出演することができてすごくうれしかったです。撮影中も一読者の感覚が半分くらいありました。原作の小説は作家さんが0(ゼロ)から作り上げたものです。そして映画は1から始まる創作なので、原作への敬意を持って撮影に臨みました。過去を思い出しながらも、今の自分と会話できるような作品だと思います。映画館で体感していただけますように」
撮影=石塚雅人 取材・文=田中隆信 ヘアメイク=岩田美香(mod’s hair)、スタイリスト=清水奈緒美
ウォーカープラス/週刊東京ウォーカー+編集長 野木原晃一
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