北海道・旭川で染められた大漁旗は、北の漁師の絆の証だった

2018年10月14日 20:00更新

北海道ウォーカー 井上裕信

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北海道・旭川市。人気の旭山動物園や富良野・美瑛、流氷観光の網走、最北端・稚内などへ観光する際、ほぼ通ることになる交通の要衝で札幌に続く北海道第2の都市だ。観光地として見ると、周りの観光地の輝きに対しやや地味な印象なのだが、長らくモノとヒトが集まってきた街だけにじつはキラリと光るものがたくさんある。

紺地に白で文字を抜かれたのれんが目を引く近藤染工場

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さて今回、訪れたのは「近藤染工場」。創業は明治31年。旭川に屯田兵が入植したのが明治26年だから、かなりの老舗といえる。今でこそ店舗はビルになっているが、もともとの店は北海道の歴史的建築物を集めた「北海道開拓の村」に移築展示されているほどの歴史がある店だ。

今ここで作られているのは、漁船を飾り立てる大漁旗。“○○丸”と船名がかかれ、色鮮やかでポップなデザインが特徴のあの旗だ。ほとんどがオーダーメイドで、この世にひとつしかないもの。1枚1枚、職人が手染めしているのだという。

工房をご案内いただいた常務の近藤耕介さん

「大漁旗というのは新しく船ができたとき、お祝いとして漁師から仲間の漁師へと贈られるものなんです。そして旗を贈られたら、仲間の新造船が出来たときに贈り返す。一隻の船に何枚もの大漁旗が立つ姿は、海の男たちの心意気というか、絆というか、そういう連帯感の表れなんですよ」と話すのは、常務の近藤耕介さん。

刷毛引き本染めに使われる道具。微妙に違う色を使い分けている

大漁旗といえば、カラフルなデザインが目を引くが、デザインのパターンは150ほどあるという。注文に応じ好みで色を変えたりポイントになる図柄を変えたりと、どんどんパターンが増えていくのだとか。

「このカニをウニに変えてとか、漁師さんの仕事や好みでデザインを変えています。流行なんかもあって、一時は黒い地色の旗が人気だったこともありますね」

職人さんの力加減で線は力強くも繊細にもなる

奥の工房を案内していただいた。6人ほどの職人さんたちが「のり置き」という作業をしている。旗に描かれた下絵に沿って、のりの入ったしぼり袋を繊細に操っている。

「1枚の旗には20~30の色が使われます。その色が混じらないよう、ノリを塗っているんです。だから旗の絵柄って色と色の間が白くなっているんですよ」

なるほど、そう言われてよく見ればそうである。そして、それが大漁旗のデザインを引き立たせていることに気がついた。

筒状になっているのがのり置きの道具。すべて手作業で行われている

染めの作業は2日間。1日目はこののり置きの作業。のりを乾かして2日目が刷毛で布をを染めていく「染め」。6名ほどの職人が、すべて違うデザインの旗を毎日手作りしている。北海道と東北からの注文が多く、この工房で年間で数百枚作るという。

「新造船1隻に20~30枚ほどの旗が贈られていると思います。注文は特に3~9月が多いんですよ」

こうやって、近藤染工場では海の男たちの願いや心意気を1枚1枚染め続けているというわけだ。ただの染工場ではない、ここは北の海の文化を支えている場所なのだ。

工房の一角。ここは聖地のにおいがする

店では染めの技術を活かし、一般向けに手ぬぐいや風呂敷なども販売している。大漁旗の伝統を感じられる染製品、なかなか魅力的ではないか。

■近藤染工場 住所:北海道旭川市1条通3丁目右1号 電話:0166・22・2255 【北海道ウォーカー編集部】

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