修学旅行の行き先は保護者への説明のしやすさも大事?~みんなの修学旅行~
東京ウォーカー(全国版)
誰もが経験する修学旅行を、より深く理解するための連載「みんなの修学旅行」。
前回は、交通の便、そしてお金の問題が修学旅行先の選定に大きく絡むことが判明した。今回は、実際に“選ばれているエリア”の理由について、公益財団法人 日本修学旅行協会の竹内秀一理事長に伺い、今後の展望・修学旅行の未来を考察してみたい。

修学旅行先を聞けば、学生時代を過ごしたエリアが分かる?
友人や会社の人などに修学旅行の行き先を尋ねると、学生時代を過ごしたエリアがなんとなく分かるように、ある種偏りがあるように感じたことはないだろうか。では、実際に統計ではどのような結果が出ているのか…。

「一部例外はありますが、中学校の場合は大まかに、北海道は東北、東北は関東、関東甲信越は近畿、東海・近畿も関東、中国四国・九州は近畿地方へ…などが旅行先となっている傾向があります。そして、高校の場合は7割以上の学校が航空機を利用しているためエリアが分散していますが、北海道・東北は近畿圏へ、関東・中部は沖縄、中国四国・九州は関東へ行くことが多いようです。また、各地域いずれも旅行先が中学校よりも遠距離になることが多いですね」
こうした傾向が見られるのには何か理由があるのだろうか──。
さらに竹内氏に尋ねると、「学校が目標とする活動がちゃんと遂行できるのかが最も大切ですが、交通の便で考えると、公立の場合は自治体により日数や金額の上限が決められていることが多いです。中学校の場合は2泊、高校は3泊が一般的ですね。そこで、航空機が使えないとなると、発地によっては当然行ける範囲が限られてきます。そのため、中学校の場合は近距離、高校の場合は遠距離という傾向が見られるのだと思います」
修学旅行先の偏りは、学びやすいかどうかで決まる?
日本修学旅行協会が行っている全国の中学校・高校を対象とした抽出調査結果(2016年)では、中学校・高校とも修学旅行先に選ばれる都道府県の上位にそう大きな変動はない。また、中学校では京都と奈良で38%超、高校の場合は沖縄、東京、京都で35%超とかなり偏っている。この理由について、竹内氏に分析してもらった。
「まずは“学校が目標とする活動ができる素材があるかどうか”というのは大きいでしょう。日本史は小中高とみなさん学ばれると思いますが、学んだものを実際に自分の目で確認するという点で、やはり学びやすい京都や奈良、沖縄などの場所が選ばれているといえます」
高校では沖縄が1位であるが、戦争の平和学習という意味であれば広島がもっと上位に来てよさそうに思えるのだが……。
「沖縄は生徒たちのイメージが他よりも全然いいんでしょうね。行きたいという生徒の気持ちが非常に強いので、保護者に説明するときも沖縄だったらまず文句は出ません(笑)。それに沖縄は勉強できるものも本当にたくさんありますが、自然体験やマリンスポーツなどがいろいろできるというのはこの土地ならでは。広島や長崎では平和学習はできても、その他の要素が沖縄と比べると弱いというのも要因の一つかもしれません」
海外も増加傾向!人気は意外にも……
近年は修学旅行先に海外を選ぶ学校も増えてきている。では、その実情・人気ランキングはどうなっているのだろうか?
「圧倒的に台湾ですね。文部科学省が2年に1度行っている全国調査では米国が1位なのですが、その中にはハワイやグアム、それにアメリカ本土も含まれています。でも、それぞれを細分化したほうが分かりやすいと思いますので、そうなると台湾になるのです」

では、台湾が人気の理由は?
「元々は中国や韓国が訪問先として数値を伸ばしていました。特に九州北部あたりになると韓国はすぐそこ、目と鼻の先ですからね。でも国際的な問題があったりしてやや人気が落ちてしまいました。海外への修学旅行の場合は、国内よりもまず安全面が考慮されますからね。そこで同じぐらいの金額・日程で行ける場所として、台湾が上がってきました。
台湾の場合、基本的に全土を回るわけではなく、台北エリアのみですので行動範囲が狭くて済みます。これは京都や奈良が選ばれるのと同じ理由ですね。また、海外への修学旅行の場合、ほぼ必ず現地の学校との交流をやらなければいけないのですが、これも親日といわれる台湾だと比較的スムーズに実施ができます。班別の行動もしやすい、安全性も高い、親日である、と、いろいろな要素が絡んでいるのです」
今後は旅行先の選択肢として海外が選ばれることが増えるのだろうか?
「これについては、ただ行きたいからという理由では難しいでしょう。学校にはそれぞれ教育目標があるので、その中に国際交流や異文化親交などを謳っている学校は、各地域の教育委員会からも認めてもらいやすいと思いますよ。あとは姉妹都市提携を結んでいる地域ももちろん行きやすいですね。
それに、最近は日本修学旅行協会にも海外の学校から問い合わせが来ているんです。そこで、こちらからも情報交換を行って、みなさんと情報を共有していきたいと考えています」
修学旅行先に選ばれるエリアについて深掘りした今回のみんなの修学旅行。次回は、修学旅行の本丸ともいえる修学旅行を行う目的に迫りたい。
安藤康之
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