休日は観光列車に乗って ~大人旅・列車と船で優雅なひとときを~ 特急『A列車で行こう』
九州ウォーカー
大人の女性とよくいうけれど。大人ってなんだろう。
身なりも少しよくなって。メイクも少し上達して。仕事も人付き合いも器用になったけれど、何かにワクワクしたりときめいたりはなくなったかも。そんなとき、ふとラジオから聞こえてきたJAZZ。
曲名は「A列車で行こう」。
軽快な旋律が、今までになかった音色で心にこだまする。この高揚感って何かしら?何だが妙にお出かけ気分。“JAZZと列車”。ムーディーな大人旅の予感に胸が高鳴る。
さあ、出発。大人になった自分をたしかめる旅へ!
車内に流れるJAZZが大人の扉をノックする。特急「A列車で行こう」

黒と金色のシックな車体。熊本駅から天草の玄関口である三角駅までを結ぶ特急「A列車で行こう」は、JAZZの名曲「A列車で行こう」にちなんで名付けられた。しっとりと落ち着いたたたずまいは、上質を知る大人の雰囲気。乗り込む自分もちょっと優雅に、しゃなりしゃなり。



「16世紀に天草に伝わった南蛮文化」をテーマにデザインされた2両編成の客車は、クラシカルな情緒にあふれる。随所に温かみのある色合いのインテリアが配され、ゆったりとした座席シートはSo Rich! 色鮮やかなステンドグラスやマリア像の置物などがヨーロピアンな風情を際立たせている。車内に流れるのは、もちろんJAZZの名曲「A列車で行こう」。自由闊達で優雅な旋律が大人の扉をノックするようだ。
風光明媚な海景色を眺めながらの列車旅

熊本駅を出発して、宇土(うと)駅を過ぎると、列車は「あまくさみすみ線」へ。ほどなくして、車窓の外に海景色が広がりはじめる。
「あ、海!」
にわかに声が上ずる。「ついはしゃいじゃった」と照れ笑い。日の光に照らされる海はキラキラと輝き、流れる車窓にしばし見入る。街中では味わえない、やわらかさを含んだ風も心地よい。
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見どころは「御輿来(おこしき)海岸」。宇土半島北岸に位置するこの海岸は、その昔、景行天皇が九州遠征の際、あまりの美しさにしばし御輿をとめて見とれたという伝説からその名がついたとされている。干潮時には、砂紋(砂干潟)が現れるなど「日本の渚百選」・「日本の夕日百選」にも選ばれた景勝地だ。よく晴れた日は有明海を挟んだ対岸の長崎県雲仙普賢岳を望むこともできる。
旧きよき街角のバーを思わせる「A-TRAIN BAR」



特急「A列車で行こう」に乗った際、ぜひとも利用しておきたいのが1号車にある「A-TRAIN BAR」。まるで本当のバーにいるような雰囲気漂う空間で、車内にサーバーを備えるハイボールやおつまみ、天草の塩を使ったJR九州限定チョコレートなどを味わえる。カウンターで客室乗務員と談笑したり、フリースペースのソファに腰掛け、車窓を眺めながら語らうのもいい。JAZZの流れる車内で、ゆったり寛ぎながらハイボール。「背伸びせずに楽しめる私、ちょっと大人かも」。





JAZZの音色とおいしいお酒にほろ酔い気分。優雅なひとときは、ゆっくり流れるようでいて、気が付けばあっという間に過ぎていく。特急「A列車で行こう」の運行時間は40分ほど。きれいな景色に見とれて記念フォトや記念乗車証をGETするのもお忘れなく。

降り立った先は、特急「A列車に行こう」の運行開始とともにリニューアルした「三角(みすみ)駅」。教会をイメージした駅舎は、南蛮文化が色濃く残る天草の地にピッタリの風情。駅舎をカメラに収めたら、次は天草観光へ。本日快晴、絶好の旅日和!
「三角駅」から徒歩2分!三角港から爽快クルーズ。新名所「リゾラテラス天草」へ


「三角駅」を一歩出ると、そこはもう海風薫る港町。駅から歩いてすぐの三角港へと向かい、ここから「天草宝島ライン」のビスタボニータ号に乗船して上天草の前島(松島)港を目指す。天草五橋や雲仙普賢岳、海に浮かぶ小さな島々を眺めながらの絶景クルーズを楽しむこと約17分。前島(松島)港に着いて、お楽しみのランチといこう。




2015年にオープンした「リゾラテラス天草」は、テラスを備えるレストランのほか、数々のおみやげがそろうショップや天草の塩を使った多彩な塩パンが名物の「天草塩パンラボ」などを併設。年間約70万人が訪れるなど、天草の新たな観光名所として注目されている。




レストランは全席オーシャンビュー。天草五橋の1つ「前島橋」や有明海を望みながら、天草の食材をふんだんに使ったシーフードカレーやパスタ、プレートランチ、本場さながらのナポリピッツァなどが味わえる。
[リゾラテラス天草]熊本県上天草市松島町合津字北前島6215-16 / 0969-56-3450 / 9:00~17:00(レストラン11:00~LO20:00、土日祝は10:30~) / 年末年始休


絶景と天草の恵みを堪能したら、再び船旅へ。前島港から今回の旅のお楽しみ「イルカウォッチング」だ。このあたりは、野生のミナミバンドウイルカが約200頭生息。イルカがいる場所はその日によってバラバラだが、熟練のキャプテンが豊富な経験と勘でイルカがいるスポットを見つけてくれる。ほとんどの場合でかわいいイルカたちに出会うことができる。




イルカたちは野生とは思えないほど人懐っこく、船と並走したり、船が起こす波に乗ってまるでサーフィンするように遊んだり。この日は機嫌がよかったのか、豪快なジャンプも見せてくれた。この時ばかりは“大人の女性”を忘れて、少女のように思いっきりはしゃごう。
[㈱シークルーズ]熊本県上天草市松島町合津6215-22 / 乗船料金(前島港~三角港間大人900円、イルカウォッチング大人4500円 / 0969-56-2458 / 8:30~17:30 / 無休
イルカたちとの別れを惜しみつつ、港へ戻る。帰りの列車までは少し時間もあり、三角駅で旅の思い出に浸っていると、またJAZZが聞きたくなった。軽快なリズムを頭の中でリピートしていると、足取りも軽やか。
「ちょっと大人になったのかな」
特急「A列車で行こう」とJAZZが好きになれた自分が、ちょっとうれしい。
体力は落ちたけれど。お肌のハリはちょっとなくなってきたけれど。
「明日の私は、今日の私よりきっとイイ女!」
よしっ!と小さく拳を握り、帰路に着く。
特急『A列車で行こう』

[特急A列車で行こう]【熊本~三角】運行日:要問い合わせ / 1日2~3往復(全席指定) / 大人片道1880円、子ども940円
【九州ウォーカー編集部/文=前田健志(パンフィールド)/撮影=福島啓和/提供=九州旅客鉄道株式会社】
前田健志
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