映画も歴代最高大ヒット!アニメ「プリキュア」シリーズのプロデューサーとディレクターが語る映画・テレビシリーズ秘話
関西ウォーカー
15周年記念イヤーを迎えたアニメ プリキュアシリーズ。「映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」は、歴代55人ものプリキュアが登場。「アニメに登場する最も多いマジカル戦士の数」としてギネス世界記録(R)にも正式に認定された。
映画でプロデューサーを務めた神木優さんを始め、プリキュアシリーズの生みの親の鷲尾天さん、「ふたりはプリキュア」と「ふたりはプリキュアMax Heart」のシリーズディレクターを務めた、西尾大介さんにインタビュー。今回の映画の見どころや、プリキュアシリーズへのこだわりなどを聞いた。

ギネス世界登録のきっかけ
ーー今回こんなにも多くのマジカル戦士を登場させようと思った、理由を聞かせてください。
神木:プリキュア15周年の作品というのが軸なんですが、上司(鷲尾プロデューサー)から「そういうこともやってはどうか。」というお話をいただいたこともあります。現場的にも、15周年を盛り上げたいというのもありましたし。
今回はこの15周年だけしかできないことってって何だろうというのをあらためて考えてみたというのもきっかけでした。

ーーギネスには最初から申請するつもりでいらっしゃったんですか。
神木:55人って結構すごいことですよね。お客様にもそのボリューム感というか、人数の「迫力」をわかりやすくお伝えする手法として、ギネス世界記録など目指せるかな、という話は出ていたんですけど、まさか本当に樹立できるとは。途中何度か「本当にできるかな。」と思ったんですけど、やってよかったなと思います。
ーー今回の映画にこめた思いなどあれば、教えてください。
神木:今回の主人公が「HUGっと!プリキュア」という作品の、野乃はなちゃん(キュアエール)という子なんですね。実は全体の構成を考える一番最初のところで、キュアエールがハグをしている絵というのが、スタッフみんなの中にあったんです。
そこからどういうふうに作品を形作っていくか、「HUGっと!プリキュア」のもっている「らしさ」だったりとか、その作品で大切にしていることを、どう映画にも生かすかという話の中で、根本のところからそういうお話を考えていました。

想い出を奪うを具現化したミデンというキャラ
ーーミデンというキャラクターについて聞かせてください。
神木:今回、想い出を奪っちゃうという内容なんですけど、これが子どもには少し理解が難しいなと思っていました。その中で出てきたのが、カメラや写真というアイテム。あと、途中プリキュアがちっちゃくなるっていう展開があるんですが、その辺りも、お子様向けに、少しでもそういう感覚が伝わらないかなという落とし込みだったりするんです。

そもそも、情念というか、もうちょっと抽象的なものが正体っていうのも、考えたりしたんですけど、(ミデンが)何を考えているのかがもう少し伝わるように、という事で、モチーフをもうけるようにしました。

ーーゲスト声優として今回、山本美月さんと宮野真守さんをキャスティングされた理由があれば教えてください。
神木:山本さんは、お芝居の経験などもあるんですけど、プリキュアも相当お好きでよくご存知だと伺っていたので、そういうところも含めて、心を込めて演じていただけるかなと思い、今回お願いしました。お話を聞けば聞くほど、私よりもプリキュア詳しいんじゃないかってくらい。すごく愛を込めてくださってます。
宮野さんの場合は、今回ミデンっていうキャラクターが、演じるのに難しいキャラクターなのかなって我々の中で話をしていて。プリキュアを取り込んで、一人称さえも変わるし、性格の切り替えをたくさん彼の中でするんです。
しかし、そんな中でも最初から最後まで感情が繋がっている、統一性があるところを演じていただける方を探している中で、幅のある演技をされている宮野さんなら、演じてくださるのではないかと。宮野さん自身の声が暖かみのあるお声なので、そのあたりもミデンを表現する上で、とても助けられました。
初代「ふたりはプリキュア」へのこだわり
ーー西尾監督は今回「ふたりはプリキュア」のシリーズ・ディレクターとして本作を監修されたとのことですが、どういう形で作品に関わられたんですか。
神木:今回「ふたりはプリキュア」の2人が登場するので、シリーズディレクターを務められていた西尾さんに、彼女たちの普段の様子とかお芝居の流れなどを、アフレコにも立ち合っていただいて、ご監修いただきました。

シリーズディレクター・西尾大介さん(以下 西尾):今回は珍しくブラックとホワイトが、わりとまんべんなく出てきたので、セリフなり扱い方のチェックを神木さんから依頼されて。シナリオ段階では、ほぼ頭からおしまいまで読んだ上で、ブラックとホワイトの扱い方を、打ち合わせさせていただきました。
神木:例えば、一番最初ブラックとホワイトとルミナスが空から現れるシーンのポーズだったり、予備動作などを監修いただきました。3人が現れるっていう短いシーンですけど、そのあたりのことを、ご助言いただいた内容を反映させることによって、最初のカットから、昔見ていただいていたお客様が「キター!」ってなるように。ブラックとホワイトの蹴り方の姿勢が違ったりとか、そういうところも。
西尾:違うっていうか、パターンがあるわけじゃないんだけど。「それ、誰がやっても同じポーズでしょ。」ってならないように。ブラックとホワイトだけを見てても、その前後の文脈の脈略の中で出てくるキャラクターだったりセリフだったりを見て、多少意見を言わせてもらったりしながら、もとあるストーリーとなるべく矛盾しないように、ブラックとホワイトを監修したという感じですね。
僕らにとってはブラックとホワイトは戦士ではなくて、あくまで中学2年生なので。注意する部分といえば、敵をやっつけるための表情とか言動はしない。そのために予備動作から含めて、扱いは難しいだろうなということですね。

ーー初代プリキュアの企画コンセプトが「女の子だって暴れたい!」ですが、15年の間にプリキュアはどう変化していきましたか。
プロデューサー・鷲尾天さん(以下 鷲尾):まさか15年も暴れると思っていなかったので(笑)、ちょっとびっくりしています。西尾さんと一緒に「立ち上げましょう。」っていう話をして、まぁ1年で終わるはずだったんですよ。やりたいようにやって、解散しようかという話をしていたんですが、まさかこんなに受け入れられると思っていなかったので。
初代は当然最初の通りのコンセプトがありますし、その後のシリーズも当然、その時期に合わせたイメージがそれぞれにあっていいと思います。それで今回みたいに55人集まった時に、それぞれ違う人たちなんだよっていうところが、ちゃんと描けていれば、それでいいんじゃないかと。
(シリーズによって)立ち向かって行くときの、言い方、ポーズ、姿勢、全部違うはずなんですよね。だからそれがちゃんと描けていれば、それはきっと見ている方も「自分たちが見ていた世代ってこうだった!」と思ってくれるんじゃないかと。そこは相当苦心したと思いますけどね。

プリキュアシリーズの挑戦!
ーープリキュアを製作するにあたって、ブレないように気をつけているところなどはありますか?
神木:明確に「これはこうしなければならない」という決まりがあるわけではなくて。自分もアシスタントの時からプリキュアシリーズの現場にいるのですが、シリーズの中で共通点があるとすれば、みんなそれぞれのシリーズに、目の前にある作品に必死で踏ん張っているというところです。
いい意味で、1年や2年で変わって行く。「今年何する?今年何に挑戦する?」という土壌がすでにあるというところが、プリキュアらしさに繋がっているのではないかと思います。過去の作品を好きな気持ち、「今考えてもそれって大切だよね。」というところに関しては、(今の作品にも)反映したりしていますね。すごくいい機会を与えていただいているなと思います。
鷲尾:神木は去年「キラキラ⭐︎プリキュアアラモード」のテレビシリーズの担当をしていました。その時にスイーツをモチーフにしたんです。食べ物をアクションに使うと粗末にするイメージが出ちゃうから、やってなかったんですが「やる」って言い出して。去年のシリーズ監督と一緒にずいぶん考えたらしいんですよ。
私がずっと15年間同じ現場にいたら、やらなかったと思う。だけど新しい人が来て、自分たちの中で考えるという事ができているので、それもあって15年続けられたのではないかと思います。

西尾:作品にも共通しているんだよね。それまで女児ものは、自らパンチ・キックするアクションをやらなかったのを、この人(鷲尾プロデューサー)がやりたいって。実を言うと鷲尾くんとは、金田一(金田一少年の事件簿)をやっていた時から、ちょこちょことそういう会話はしていたんですけど、やっぱり先入観を含めて、女の子のキャラクターに対する扱いに、2人ともすごく疑問を感じてましたね。
鷲尾くんが「女児でアクションできるかな。」って言い出したときに、自分は女児ものやってなかったけど、立ち回りとして成立させることには、挑戦するに値するし、自分の理想はそういう中から、ジェンダーの枠をとっぱらうってことにもつながるんじゃないかと。そこはやってみる価値はあるし、子どもたちに見せても、恥ずかしくないものになるんじゃないかなって。
子どもたちに向けて「男の子はこうあるべし、女の子はこうあるべし」って言うべきではないと僕は思うので、だったらそういうキャラクター像を作って、いろんな可能性の幅もあるよっていうのを見せたい。今まで「女児ものとはこういうもの」っていう事に、悶々としていたと思うんですよ。
鷲尾:業界的には、そういう刷り込みみたいなものはあると思います。皆さん子どもの頃から、そうやって刷り込まれてきていると思いますよ。だから、もしかしたら、プリキュアを観てきた子たちが大人になったら、何か違う刷り込みが起きるかもしれないって気がしますよね。
ーーエンディングでこだわった部分を教えてください。
神木:後半のアクションの部分は、メドレーで音楽中心に繋ごうっていうのを決めていて。短い中で一瞬でも「懐かしい」とか「これこれ」って思ってもらうにはどうしたらいいか、っていうのは話し合いの中でありました。
シリーズ毎に同じ見せ方を、あえてしていないんです。短い尺の中でどうすればいいか話し合いましたね。
大きい見せ場では、CG的にもいろんなエフェクトをつかったりとか。小さいミデンは一番入ってるカットで270万1カットに居るんです。プリキュア55人と戦わなきゃいけない敵も大変ですよね。そこはカッコいいアクションを、どうやって見せるかというところも含めて、シナリオ上がってすぐに、音楽家さんに曲の相談をしました。

ーー最後にファンのみなさんにメッセージをお願いします。
神木:今回、プリキュア55人が出る事が、映画の魅力のひとつなのですが、それって、ただ人数をそのまま出すっていう事じゃないんですよね。今まで1つ1つのシリーズが必死になって繋いで来た、プリキュアの流れだったりとか、それぞれにお客様自身の記憶があるってことが大前提になってこの映画ができているんです。
ギネス世界記録に挑戦するというところも、条件がいくつかあって「そのキャラクターに名前があること」「戦っていること」「セリフがあること」などだったのですが、物理的な条件を達成できたから記録を得られたわけではないと思っています。「いまなぜこの映画が存在しているか」ということにこそ、その価値があって、各シリーズの作り手やそれを支えてくれたお客様がひとつひとつつないできた記憶によって形作られた作品であったことが「ギネス世界記録」に値する作品であったのだと思います。
この作品を見ていただいた方、ちょっとでもプリキュアを見たことあるとか、覚えているという方にも、私たちが込めようとしたことは伝わっているのかなと反響を見ながら思います。それはきっと皆さん自身がそもそも持っていた大切な「想い出」があったから。そんな皆さまへの感謝の気持ちが、少しでも伝わればとても嬉しいです。 (了)
©2018 映画HUGっと!プリキュア製作委員会
■映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ
梅田ブルク7ほか全国にて 大ヒット上映中
二木繁美
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