約200点の貴重なセル画がずらり!ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展スタート
東京ウォーカー(全国版)
三鷹の森ジブリ美術館で11月17日、新企画展示「映画を塗る仕事」展がスタートした。高畑勲監督、宮崎駿監督が目指した豊かな画面づくりを、色彩の面から紐解く同展示。今回は、記者会見に登壇した安西香月館長の解説とともに、展示室の様子をお届けしよう。

見どころは何と言っても、貴重なセル画の数々だ。展示されているセル画の数は、なんと196点。数年前に、常設展示室に展示されているセル画を張り替えようと、久しぶりにセル画の保管箱を開けたという安西館長。すると、そこにはたくさんの手の込んだセル画が眠っていたのだという。
宮崎監督に「一枚ずつ描かせていたんですか?」と尋ねると、当たり前のように「そうだよ」と返事が返ってきたと言い、安西館長は「これを一枚ずつ?」と驚愕したそうだ。
デジタル化以降の作品にも触れられているものの、今回のメインはセル画。色彩設計の責任者を務めていた、故・保田道世さんの手腕をはじめ、両監督の要望に応えてきたスタッフの努力や知恵、工夫を、随所から感じ取ることができる。

なお、スタジオジブリでセル絵の具を用いて製作されたのは、1997年に公開された『もののけ姫』が最後。セル絵の具で彩色していたスタッフも高齢化していくなか、「セル画とはどんなものかを伝えたかった」と安西館長は話す。

それでは、展示の具体的な内容を紹介しよう。展示室はテーマごとにパネルが並んでおり、その中の1つに「時刻によって変わる色」がある。例えば『となりのトトロ』でお馴染みのネコバスの色。多くの人が思い浮かべるのは茶色の車体だが、作中では緑がかった色のネコバスも登場している。それは、バス停でお父さんを待っているサツキとメイのもとに、ネコバスが走ってくるシーン。
暗闇の中、街灯に照らされるネコバスは、全体的に緑がかった色で塗られ、光が当たっている部分、影になっている部分が、細かく塗り分けられている。安西館長は「ちょっとした色の違いで、時間や情景を描き分けるということを、すごく事細かにやっています」と解説する。
なぜ緑色に塗るのか疑問に思うかもしれないが、そこには「画面を暗くするのではなく、夜を色で表現したい。透明感を常に持っていたい」という両監督のこだわりがあるそうだ。

この緑がかったネコバスには「街灯色」という名前が付けられており、他にも基本色となる「黄昏色」に加え、「夕方色」の色指定も展示。刻々と変わる自然光の変化が、いかに細かく表現されているかがよくわかる。

この他にも、両監督のこだわりが特に光る、水や光の表現に対する彩色のテクニックを紹介する展示など、見どころ満載。安西館長は「手の込んだセルで表現しているものを、出来る限りたくさん並べました。なかなかの枚数があります。全部見るとけっこう疲れると思います(笑)」と自信をのぞかせた。

監督からの細かい要望に応え、色を決め、多くの手数をかけて完成するセル画だが、映画の中でそのシーンが登場するのは、ほんのわずかな時間。セルに色を塗る“仕上げ”と呼ばれる仕事をしていた人々の情熱が、セル画1枚1枚から伝わってくる。
プロの仕事に胸を打たれ、そして、美術館を後にする頃には、お気に入りのジブリ作品をもう一度観直したくなっていることだろう。「映画を塗る仕事」展は、2019年11月まで開催予定。
※三鷹の森ジブリ美術館の入場は、日時指定の予約制。チケットは全国のローソンにて、毎月10日午前10時から、翌月入場分のチケットを販売
水梨かおる
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