狂気に目覚めていく主人公が衝撃の映画「銃」! 主演・村上虹郎が撮影の日々を振り返る
関西ウォーカー
「悪と仮面のルール」や「去年の冬、きみと別れ」など話題作を発表し続ける芥川賞作家・中村文則の処女作「銃」が待望の実写映画化。拳銃を拾った大学生がその存在に魅了され、やがて狂気に目覚めていく姿を独自の映像表現で描いている。銃に魅せられていく主人公を熱演するのが村上虹郎。撮影時、まだ20歳だった村上がこの難役にどう向き合ったのかを深く探ってみた。

映画「銃」は大学生・西川トオルが拳銃を拾ったところから物語が始まる。銃に魅せられたトオルの日常は狂い始め、次第に理性が崩壊。やがて刑事に追い詰められたトオルが最後にとった行動とは。主人公・西川トオルを村上が、ヒロイン・ヨシカワユウコには広瀬アリスが演じている。トオルを追い込む刑事をリリー・フランキーが怪演し、他にも日南響子、新垣里沙、岡山天音などが出演。また村上の父親でもある村上淳も出演している。
監督は「百円の恋」「嘘八百」の武正晴が担当。第31回東京国際映画祭では日本映画スプラッシュ部門の監督賞を武が受賞、村上は東京ジェムストーン賞を受賞した。

ー原作と脚本を読んだときの印象は?
普段は原作を読まないタイプですが、台本が完成するまでの間に待ちきれなくて先に原作を読みました。原作の一人称は「私」ですが、映画では「俺」や「僕」に置き換えて、トオルという人物をより立ち上げて、そのトオルを客観視できるような表現になっています。中村さんがすごく大事にしているデビュー作で、脚本は武監督が中村さんと細かいところまで詰めてくださったと聞いています。特に後半のヨシカワユウコのセリフは原作にはなくて、映画的なカタルシスを作った方がいいんじゃないかと中村さんが映画のために書き起こしてくれたところなんです。
ー原作を読んだことで、これまでと違った役へのアプローチなどはありましたか?
原作を演じるわけではないので、基本的には脚本がメインです。実は武監督と中村さんが同郷で小学校や住んでいた場所も近かったみたいで。監督と原作者がリンクしているんです。僕はトオルとして現場にいましたが、武監督ももう一人のトオルとして現場にいてくれました。だからこそ、こういう風に芝居をしようとかわかりやすい演出ではなく、「こっちに動くんじゃない?」と細かい感覚でのすり合わせを武監督とすることができました。

ー役作りに関して取り組んだことはありますか?
トオルは自宅のシーンが多くて、撮影の2日前ぐらいから撮影で使った部屋に住みました。トオルが家の中でどういう動きをしていたのか、どういう角度で座るのかとか体に馴染ませないと違和感が出るので。住んだものの、お風呂がなかったので、3駅先の銭湯に行っていました(笑)
ー村上さん自身とトオルの共通点はありますか?
全然違います。この役をやるとなったとき、周りからは「ぴったりだね」と言われたのですが「複雑だな〜」って(笑)まず、両親に関しては全く違います。僕は両親がちゃんといて、ちゃんとぶつかって、その上でお互い親離れ子離れをして仲良くなりました。トオルの場合、両親はいない。彼が連絡を取るのは養父で、その養父に対して嘘はつくし、実の父親に会ったときも最低な態度をとる。でも、とらざるを得なかったとも思うんです。トオルがこんな風に育ってしまったのは彼のせいではない。環境のせいもある。僕もいろんなことから逃げた時期があるので、そういう部分は共通しているようにも思えます。
ー心理描写も含め、若者特有の「危うさ」を表現されているのが印象的でした。
「若者の危うさ」って、自分でもわかっていないわけではありませんが、それを出そうとしているわけでもないんです。でも、今はそれが自分にとっての強みだと思っています。

ーリリー・フランキーさんの共演はいかがでしたか?
リリーさんはあのままでした。本当に摑みどころがない。本読みの際は「本読みやりたくない」って顔に書いてあるんです(笑)。リリーさんの中で相手を活かすためにどうするのか考えているのかもしれないですが、こっちは「どうくるんだろう?」と、安心できない部分がありました。リリーさんが演じた刑事も悪魔なのか天使なのかよくわからない。僕にとってリリーさんの存在自体がある意味幻想のようで、トオルが作り出した存在のようにも感じる。こういう最強の敵が欲しかったみたいなイメージですね。
ートオルにとって重要なシーンで共演しているのが村上淳さんですね。実の父親と共演して、何か変化などはありましたか?
僕から見た親父はさほど変りません。どちらかというと親父から見た僕が変わっているんじゃないかな。僕から見た親父はずっと先輩でベテランですが、親父から見た僕は素人から一人の俳優に変わったと思います。
ーアドバイスなどはあったんでしょうか?
演技の話はしないですが、その人物の覚悟や生き方、言葉遣いに関しては言ってくれました。俳優たるものこういう立ち振る舞いをするんだって背中で語ってくれた気がします。カメラ位置を見て自分がどう映るかとかスタッフさんに対する接し方とか。

ー先日開催された第31回東京国際映画祭では新人賞ともいえる「東京ジェムストーン賞」を受賞されましたが、心境はいかがですか?
東京国際映画祭は海外の人たちも大勢観に来てくれているので受賞は嬉しかったです。でも、それ以上に武監督が「監督賞」を受賞された方が嬉しかったですね。映画として認められた気がします。
■映画「銃」
テアトル梅田、シネマート心斎橋、T・ジョイ京都、シネ・リーブル神戸ほかにて全国公開中
山根翼
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