2018年マイベスト・ホラー! あらがえない”継承されし運命”。絶望しかない...<連載/ウワサの映画 Vol.61>
東海ウォーカー
2018年のマイベスト・ホラー映画(まだ早い?)として激オシします、サンダンス映画祭でも絶賛された「へレディタリー/継承」! 尺取りすぎな怒涛の終盤約15分では、正気も崩壊して笑いたい気分にすらなったトラウマ級の1本です。「怖っ」を超えて来る「おもしれー!」な展開は完成度が高く、現代ホラーのひとつの到達点と言えそうですよー。

舞台は、女家長・エレンを亡くしたばかりのグラハム家。エレンの娘・アニー(トニ・コレット)は、過去の出来事が原因で母に愛憎入り交じる感情を抱いていました。アニーと夫のスティーブン(ガブリエル・バーン)、高校生の息子・ピーター(アレックス・ウォルフ)、人付き合いが苦手な娘・チャーリー(ミリー・シャピロ)は、エレンから忌まわしい“何か”を受け継いでいたことに気づかぬまま喪失感を乗り越えようとしています…。やがて、不思議な光が部屋を走る、誰かの話し声や気配がするなど奇妙な現象が頻発。祖母に溺愛されていたチャーリーは、彼女が遺した“何か”を感じているのか、不気味な表情で異常行動を取り始めます。そして最悪な出来事が起こり、修復不能なまでに崩壊する一家。さらに想像を絶する恐怖が彼女たちを襲うのでした。“受け継いだら死ぬ”…、果たして、祖母が家族に遺したものとは!?

タイトルの「hereditary」(=遺伝的な、代々の)の通り、”先祖代々受け継がれたもの”の謎を追う本作。主人公のアニーは昔から夢遊病を患っていて、母の死でさらに精神バランスを崩しちゃうんですね。そんな中、ピーターがパーティーに妹を連れて行ったことから、一家は地獄へ一直線!...とあいなります 。アーティストであるアニーは、”我が人生の苦悩の場面”をミニチュア&ドールハウスに投影して不安を紛らわせていますが...。皮肉にも、その作品群は「君たちは人形のように操られる役割だ」という暗示。絶望的な運命から逃れられない…、この事実こそが本作の恐怖の根源なのです。


長編デビュー作ながら、ホラーの伝統を小気味よく打破して見せたのは新鋭アリ・アスター監督。全シーンが伏線と言えそうなサプライズの連続で、「エクソシスト」など1960~70年代の傑作ホラー級の高評価を得たのも納得です。憑依系から心理系まで多様なホラーの手法を融合させたプロットはやや難解ですが、ある家族が辿る”苦難との対峙”と”崩壊”のドラマを恐怖描写によって際立たせた手腕は見事。自然現象なのか超常現象なのかが判然としなくなる画(ほぼ裸の人々がニヤついてるとか...)もヤバいし、ドリー・ショットも美しい!

アニー役のトニ・コレットのド迫力の怪演には、ぜひともオスカーをあげてほしいですねぇ(下馬評ではアカデミー主演女優賞ノミネート確実!)。ただでさえ派手な造りの顔を極限まで歪ませたり突然真顔になったりと、「なんだかあなたが一番怖いよ!?」的な発狂ぶりが最高! あと、ピーター役のアレックス・ウォルフ君が魅せるすり減って茫然自失になっちゃう過程も、今後が楽しみな好演でした。


青白くうごめく光、セラピーで出会ったおばさん、怪しいマークや本、”チャーリー”という男子の名前…。マジで伏線だらけ。特に「母は秘密主義で、母だけの儀式があり、母だけの友人がいた」とアニーが語る冒頭の葬式シーンには物語のカギが密集してますよ~。”アニーは面識がない参列者”などなど…、終盤では、思わぬリンクに連続ガッツポーズです! 【東海ウォーカー】
【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします! 最近のお気に入りは「暁に祈れ」(12月8日より順次公開)のジョー・コール!
おおまえ
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