軽減税率で注目される「モバイルPOS」、需要増の裏にある本音は
東京ウォーカー(全国版)
2019年10月の消費税増税に伴い、新たに導入される軽減税率制度。今回の制度では、食料品や新聞など特定の品目の消費税課税率が8%に据え置きとなるが、飲食店の場合は同じ商品でも店内飲食と持ち帰りで税率が変わるなど、適用の基準が複雑だという声が消費者・事業者ともに上がっている。

だが、今回の軽減税率制度導入には第三の“主役”がいる。両者の橋渡しとなるPOSレジメーカーやベンダーだ。軽減税率導入により、既存のPOSレジのアップデートや、軽減税率対応機種への買い替えが必要となる。中でも脚光を浴びているのが、スマートフォンやタブレットを使ってPOSシステムを使用できるモバイルPOSだ。来年に控えた軽減税率導入を、レジメーカー側はどのように見ているのだろうか。
「すでにスマレジのシステムは軽減税率に対応できる状態になっています。軽減税率導入後は、商品が軽減税率の対象になるかどうかを店舗側で設定いただく形になります」
そう話すのは、株式会社スマレジ取締役の地引一由氏だ。スマレジでは7年前からiPhoneやiPadなどiOSで使えるPOSシステムアプリを提供している。軽減税率導入が決定し、モバイルPOSの問い合わせも増えているという。
「事業者側が一番大変なのは商品の設定の段階になります。ですが、設定をし終えれば商品に応じて適切な選択肢が画面に表示されますので、レジを操作する側が軽減税率を適用すべきかどうか迷うことはほとんどないと思います」


実際に、軽減税率の設定をしたスマレジの動作を見せてもらった。テイクアウトとイートインで税率が変わるカウンターコーヒーのケースでは、レジ担当者がコーヒーの品目を選択すると自動的に「テイクアウト」か「イートイン」を選択するポップアップが表示される。レジ担当者は、その旨を客に確認して選択するだけで済む。また、レシートにも軽減税率適用商品を区別するマークや適用商品の金額が個別に印字されるように設定できる。煩雑なイメージが先行している軽減税率だが、実際の販売場面では思いのほか戸惑うことなくレジ対応ができそうだ。購入者側もスムーズに買い物ができるだろう。

従来の専用筐体を使ったPOSレジに比べ、導入コストが比較的安価となるのがモバイルPOSの大きなメリットだ。スマレジの場合、中心となるアプリは無料プランがあり、アプリに対応したスマートフォンやタブレット、さらに連動機能を有するレシートプリンターやキャッシュドロアなどの備品を購入すればすぐに使用することが可能だ。さらにシステムはクラウドでアップデートされるため、メンテナンスに関する費用や時間も節約できる。軽減税率導入を機に買い替え・乗り換え需要が到来する形となるが、レジメーカーにとって軽減税率導入は決して“我が世の春”というわけではない。その理由は、軽減税率補助金申請制度にある。

この制度は、複数税率対応POSシステムなどの消費税軽減税率に対応する設備投資費用を国が補助するというもの。もともと低コストなモバイルPOSシステムを、補助金によってさらに負担を少なく導入することができる。だが、軽減税率対策補助金の審査はかなり複雑で、かつ厳格に行われていると地引氏は言う。
「弊社では指定サービスベンダーとして、レジ導入が本当に補助金の適用に合致しているかを確認し、申請書を代理で作成する業務を行っています。モバイルPOSレジシステムの販売に加え、現在は各種申請書類の作成業務が付随するようになったため、弊社では専門チームも導入しました。事業者に代わって申請をする以上、間違いがないよう慎重な手続きが求められます。かかる責任やコストは広く重くなったというのが実情です」
消費者にとっては導入後が心配される軽減税率だが、事業者、そしてPOSレジメーカー側にとっては準備期間の今が正念場と言えそうだ。
国分洋平
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