なぜタイに?ジブリ公認「メイのレストラン」誕生秘話が“運命のいたずら”すぎた
東京ウォーカー(全国版)
深い緑に囲まれ、やわらかな黄色の室内が見える2階建ての家屋。ここは世界のスタジオジブリファン必見のスポットだ。「どういう経緯で?」「なぜジブリがタイのバンコクに?」、ここが世界初のスタジオジブリ公認レストランだと初めて耳にした人は、そう疑問に思うだろう。しかも、コンセプトが『となりのトトロ』だというこの店が誕生したきっかけは、手羽先揚げである。いったいどういうことなのか。
ジブリの敏腕プロデューサーでもある代表取締役の鈴木敏夫氏は数年前、イサーン(タイ東北部)のナコンラチャシマ県パクトンチャイ郡で郷愁をそそる田園風景に出会う。『となりのトトロ』の舞台を思わせるその緑豊かな自然に、すっかり心を奪われた。
パクトンチャイでの運命の出会いは続く。とある店の手羽先揚げを食べた鈴木氏は、その味の虜になった。間もなく店主が店をたたむと知り、なんとしてもこの味を残したい、都会の人にも味わってもらいたいという思いに駆られ、ジブリで10年余を共にしたイタリア人のコルピ・フェデリコ氏とともに立ち上がる。やがて、イサーンの田園風景とトトロの世界、パクトンチャイの郷土料理の魅力を併せ持ったタイ料理店が誕生した。

店名は「メイのレストラン」。ジブリファンならトトロに登場するわんぱく少女メイちゃんにちなんだと思うかもしれないが、正解ではない。運命のいたずらか、あの手羽先屋の女性店主の名も「メイ」だったのだ。

メニューは食べやすい一皿料理が中心。味は日本人も馴染みやすいイサーン風だ。趣向を凝らした盛り付けはジブリファンの胸をときめかせる。デザート類は一品ごとに微笑ましいアレンジが施され、食べるのが惜しいくらいだ。

雨上がりの涼しい午後、お腹の虫が騒ぎ始めたのでカオパット・トムヤムクンを注文した。ふわとろオムレツがメイちゃんの麦わら帽子のように広がり、2体のトトロ人形が皿をのぞきこんでいる。

強烈な辛さはなくとも、唐辛子好きのタイ人の胃袋もしっかり掴まれた。トムヤムに欠かせない3、4種類のスパイスが細く刻まれ、しっかり香りが引き出されている。思わず親指を立ててしまった。
デザートに選んだのは「街に猫バスがやってきた」。コーヒーとカラメルを閉じ込めたタイミルクティー味のタルトとお茶のセットだ。ほろ苦さと甘さのバランスがよい。

田舎から上京して20年、年齢的にスイーツやアニメから遠ざかっていた一人の男(私)に、この店は懐かしい思い出をよみがえらせ、心まで満たしてくれた。ふと、ある人への思いがこみ上げたが、これはトトロのせいなのか?
映画を観た人ならお気づきだろう。トトロがメイちゃんの前に現れたのは、お母さんがいない時である。私が最後に母と会ったのはいつだったか。今回のトトロとの出会いで、私はそんなことを考えていた。


タイ特派員
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