モノを捨てるということは、記憶も捨てること――映画「旅するダンボール」のダンボールアーティスト・島津冬樹が語ったモノへのこだわり

東京ウォーカー(全国版)

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2018年SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト) FILMスポットライト部⾨に正式出品され、世界が注⽬するダンボールアーティスト・島津冬樹の活動に迫ったドキュメンタリー映画「旅するダンボール」は、12月7日の上映開始から、小規模作品ながら全国のシネコンで放映され現在でも上映拡大している。

旅するダンボール


今回は、主役であるダンボールアーティスト・島津冬樹さんのアトリエで行なったインタビューをお届けする。子ども時代の話や、映画にはなかったダンボールエピソードなど、本作をすでに観ている方はもちろん、まだの方にも必見の内容だ。

島津冬樹氏:ダンボールアーティスト。1987年、神奈川県生まれ。2012年多摩美術大学情報デザイン学科卒業。 2015年、広告代理店を経てアーティストへ。 2009年より路上や店先で放置されているダンボールから、財布を作る”Carton”をスタート。現在では国内外での展示やワークショップを開催している。また日本のみならず、30カ国を周りダンボールを集め、コレクションしている。

【写真を見る】島津さんのアトリエには、カラフルなダンボールが並ぶ


ダンボールアーティスト・島津冬樹さん


――島津さんの活動は「アップサイクル(もとの製品よりも価値の高いモノを生み出すこと)」という意味では時代に沿っていますが、昨今の「ミニマリスト」ブームを考えると逆行しているように感じています。ご自身ではどう思われていますか?

島津冬樹さん(以下、島津):僕は、モノを捨てるということは、記憶も捨てちゃうことになるんじゃないかと思っているんですよね。シンプルにするがあまり、想い出がスマホでしか思い出せなくなっちゃっているんじゃないかなって。

例えば、ホテルでもらったwi-fiの紙なんかは捨てちゃえば、仮にそのホテルのことは覚えていても、そのホテルにwi-fiがあったかっていう細かい部分はきっと忘れちゃう。

「ミニマリスト」の人から見たら絶対に捨てちゃうであろうモノでも、質感、その国ごとの質感もそうですし、例えば手書きなのか、それは雑に書かれたのかどうか、みたいな細かい部分も残しておける気がするんです。

モノの多さの割に整理されたアトリエ


Amazonの箱は小物入れ


――でも、意外と、というと失礼かもしれませんが、モノの量の割には片付いていらっしゃって驚きました。

島津:そうなんですよね。実は、ワークショップ用のダンボールがあるからいつもより多いくらい。いつもはもっとさっぱりしています。ガラクタばかりですが、それらの取っておく方法、というか、センスよく取っておくことって出来るんですよね。例えば、Amazonの同じ規格の箱に小物を入れておけば揃って見えますし。そういうところは意識しています。

ダンボールへの想いを語る


――島津さんの子どものころの収集エピソードや、会社員時代のエピソードを見ていると、決して悪い意味ではなく、「変わった子」や「変わった人」と思われていたと思います。実際、まわりの方やご両親はどう思われていたんでしょうか。

島津:好きなことしかやりたくない、っていうのは子どものころからそうだったので、まわりの目ってより、自分が楽しいか楽しくないかが全ての判断基準でした。確かに、小学校のころは友だちも少ない、内気な少年だったかもしれません。でも、中学校に入ってマジックをはじめてから、人からのリアクションが楽しいと思うようになって、人との交流が好きになりました。それに、マジックをはじめてからは「変わったやつ」というよりかは「面白いやつ」と思ってもらえるようになってきたので、「変わったやつ」と思われていた時期は意外と短かったです。

そして両親は、いろいろな部分でサポートしてくれていました。例えば、貝にはまっていたときは貝の図鑑を買ってくれたり、気になったキノコを一緒に調べてくれたり。成績は良くなかったんですけどね(笑)。

――そんなご両親ですが、いまの活動についてはどう思われていらっしゃるんでしょうか。

島津:僕の父親はエンジニアだからものづくりが好きですし、母親も絵が上手かったりしたので、僕がクリエイティブなことをしているのは面白がってくれていますね。この前親父がワークショップに参加したいっていうから、実家で「ダンボール財布」のワークショップをしてあげましたよ(笑)。

――「旅するダンボール」では、デザインやフォント、書かれた情報を読み解いたり、ストーリーを想像したりしているシーンもありましたが、全てのダンボールに等しく行っているんでしょうか。

島津:強弱というか、いまは忙しくなっちゃったので全てのダンボールを一個一個追えていないんですが、一時期はGoogleマップやストリートビューでどこで作られたのか、全部見ていたこともありました。いまでも、変わったダンボールは追っかけたりしています。

いま一番気になっているダンボールは「Kangara」と書かれたもの


――いま気になっている、「里帰り」させたいダンボールはありますか?

島津:いまは海外へ「里帰り」させたいと思っています。特に、いま気になっているのはこれですね。「Kangara」って書いてあるんですけど、これ実はオレンジの箱なんですよね。でも、オレンジのことなんて一切書かれていない(笑)。大草原にカンガルー、しかも表裏で6匹もいる。こんなにオーストラリアしか主張していないダンボールあるのかっていう(笑)。

――このダンボールに対して、島津さん的にどういうストーリーを思い浮かべるんでしょうか。

島津:オレンジ以外、例えば他のフルーツや野菜も詰みこむためにあえて汎用性のあるデザインにしているのかな、とは考えています。でもやっぱり想像でしかないので、機会があればぜひ追ってみたいですね。

ワークショップでも使用されているボタンなどが並ぶ


――日本はもちろん、世界でも「ダンボール財布」のワークショップを行っていますが、印象に残ったエピソードなどあったら教えてください。

島津:どこの国の人も、どの年代の人も、ボタンを付けて自分の「ダンボール財布」が出来上がった瞬間は大喜びしてくれますね。でも、手順に国民性がすごく現れます。例えば、アメリカ人は説明も聞かずに勝手にはじめちゃうし、終わり際にはじめる人もいるんです。本当に自由で(笑)。日本人は、次の手順を、みんなが終わって僕が次の手順を説明してくれるまでちゃんと待っていてくれる。そういうところは面白いですね。

――劇中で「ペヤング」のダンボールで「ダンボール財布」を作って喜んでいるアメリカ人が出てきていましたが、日本語のダンボールはやっぱり人気なんでしょうか?

島津:そうですね。ひらがな、カタカナ、漢字、と日本語はすごくクールに感じてもらえるので、ワークショップ用に日本のダンボールを持っていくとみんな喜んでくれます。

――ワークショップには、親子で参加される方もいらっしゃるんでしょうか?

島津:はい。親子で参加されて、小さい子にカッターは危ないので親御さんにやってもらって。でも、切り終わったらあとは折って貼るだけなんで、お子さんでも楽しんでもらえています。

――島津さん的に、お子さんに「ダンボール財布」やワークショップを通して知ってもらいこと、感じてもらいたいことはありますか?

島津:子どもたちには、どんなことでも突き詰めると自分にとって楽しいことが待っている、ということを知ってほしいなと思っています。ガラクタ集めだって、突き詰めれば仕事になるんだぞっていう。

最終的には「ダンボールミュージアム」を作って、僕のコレクションを収蔵していきたい


――今後作りたいと思っているものや、将来的に挑戦したいものがあれば教えてください。

島津:「ダンボール財布」は、いまは長財布が主になっているんですが、いろんな需要があるので、ライフスタイルにあわせていろんなタイプを作っていきたいと思っています。

あとは、ダンボールでインテリアを作りたいです。ダンボールで作られたインテリアってすでにたくさんあるので、僕の仕事じゃないかなって思っていたのですが、ダンボールをそのまま活かしているものはないので、生活に溶け込む家具を作っていきたいです。そしてその先には、すごくおしゃれなダンボールの家を作って、最終的には「ダンボールミュージアム」を作って、僕のコレクションを収蔵していきたいです。

映画を観る前と観た後では、ダンボールへの見方が180度変わる映画。それは身の回りのあらゆるものへの見方すら変え、本当に世界が広がって見えるので、ぜひ年末年始の休みに観に行ってみては。

なお、新宿ピカデリーでは、3DAYSイベントを開催予定。

12月25日(火)11時10分〜:クリスマスプレゼント抽選会&直筆サイン入りポストカードプレゼント(入場者全員)島津冬樹より「段ボール長財布」(1万800円相当)を抽選で1名さまにプレゼント。

12月26日(水)11時25分〜:直筆サイン入りポストカードプレゼント(入場者全員)

12月27日(木)11時〜:スペシャルプレゼント抽選会&直筆サイン入りポストカードプレゼント(入場者全員)島津冬樹より「段ボール折財布」(7800円相当)を抽選で1名さまにプレゼント。

大原絵理香

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