「ムーンライト」に続く崇高な愛の物語。イケメンちょい役陣も豪華です!<連載/ウワサの映画 Vol.72>
東海ウォーカー
バリー・ジェンキンス監督による「ムーンライト」以来の最新作です、「ビール・ストリートの恋人たち」。1970年代のニューヨークを舞台に、若きカップルに降りかかる不条理な運命と揺るぎない愛を描き、アカデミー賞では3部門候補となっていますね。”美しき魂”を写し取る映像表現で巧みに気付かせる、差別問題の愚かさ…。監督独自の作風がよりロマンチックに進化してました。

舞台は1970年代のニューヨーク。19歳のティッシュ(キキ・レイン)は、幼い頃から共に育ち愛を育んだ、22歳の恋人ファニー(ステファン・ジェームズ)の子供を身ごもります。しかしファニーは無実の罪で収監中の身。小さな諍いから白人警官(エド・スクライン)の怒りを買った彼は、強姦の罪を着せられてしまったのです。被害者の女性はすでに故郷のプエルトリコに帰国し、アリバイを証言できる友人ダニエル(ブライアン・タイリー・ヘンリー)は逮捕されていて証言できない…。ファニーを助け出すためにティッシュと家族は奔走しますが、そこには多くの困難が待ち受けていたのでした…。

原題「If Beale Street Could Talk」は、「ビール・ストリートが話せたらなぁ、真実を伝えられるのに」ってな意味合いですかね。邦題がフツウすぎ(笑)。アフリカ系アメリカ人の心の故郷として語られるこの「通り」は、本作の舞台となる1970年代も、それ以前も、そして現在に至るまで何も語れず、繰り返される理不尽を見守り続けているわけです…。

恋人たちが歩いている冒頭シーンから、映像と音楽のマジックに酔わされますねぇ。「ムーンライト」と同じく展開がゆ~っくりで、飽きる寸前まで引っぱる(笑)長回しは好みが別れるところ。ジェンキンス監督は、物語以前に「人間」を撮りたいのだろうな。瞳や仕草から沸き立つ感情こそが作品を動かす事を証明してます。ジャジーな音楽と、柔らかな光やタバコの煙のスローモーションが相まって、実に詩的で官能的な世界観!

注目キャストは、やっぱり、アカデミー助演女優賞候補となっているティッシュの母親役のレジーナ・キング。被害者の女性に会うために飛んだプエルトリコで、屈強な愛で蓋をしていた脆さが露わになる一幕が圧巻でした。「愛を信じるならうろたえないで」という娘への言葉は、観客をも勇気付けてくれるのよね。もう一人、ファニーの親友役のブライアン君もお気に入り。他愛もない話題の最中に、いきなり”絶望の底”(過去の逮捕で傷付いてます)へと連れて行く…。ファニーの核心にも迫る会話劇が味わい深かった。


本作で軸となるのは”家族の愛”。人種差別に加え、”ハイクラスなファニーの家族VS庶民派のティッシュの家族”というハーレムでの格差も描いています。両家の女性陣総出のイヤミ爆裂バトルは前半最大の見どころ。それでも両家の絆を守ろうとするタフで温かいパパ&ママが包み込むティッシュの家庭は、重いテーマを照らす”光”の象徴。ラストでは、黒人全体が一つの家族に思えてきます。

ファニーの友人であるラテン系のレストラン店員、住まい探しに窮した2人に部屋を貸してくれるユダヤ人、白人警官を撃退するイタリア系のおばあちゃん…。大好きなディエゴ・ルナ、デイヴ・フランコらをちょい役で贅沢に使い、黒人以外のマイノリティーにも眼差しを向けたのも印象的。彼らの繋がりと抵抗は、ささやかだけど確かな”希望”だった!【東海ウォーカー】
【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします! 最近のお気に入りは「グリーンブック」(3月1日公開)のヴィゴ・モーテンセン!
おおまえ
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