「猫とお墓に入れる寺」で猫写真展、ブームの裏にある捨て猫問題に一石投じる

2019年2月22日 9:00更新

東京ウォーカー(全国版) 国分洋平

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近年、“猫ブーム”が続き、多くのメディアで可愛い猫の特集が行われる。特に2月22日の「猫の日」前後には、猫に関連するイベントの開催や商品が取り上げられ、2019年にはTwitterが「猫の日」キャンペーンを開催するなど、日本人の猫への注目度は高い。そんな中、千葉県袖ケ浦市にある曹洞宗真光寺で、 写真家の亀井拓也さんによる猫の写真展「地域猫作品展」が開催されている。何故、猫の写真展の会場にお寺を選んだのか。その理由を亀井さん本人に聞くと、愛玩動物としてもてはやされる一方で、依然解消されない捨て猫問題へ一石を投じる意図があった。飼い主のいない”地域猫”が抱える問題とは。

小さな命を大切にする「猫とお墓に入れるお寺」で写真展を

写真展の会場となる千葉県袖ケ浦市の曹洞宗真光寺

写真家の傍ら、飼い主のいない猫を管理し減らすことを目的とした地域猫活動を行っている亀井さん。真光寺を知ったのは、個展を訪れたライターとの会話からだという。

「昨年(2018年)、私の個展にいつも応援いただいているライターさんが来てくださった際、『千葉県に猫とお墓に入れる珍しいお寺がある』というお話を聞きました。お寺の皆さんは小さな命に対してとてもお優しいとも聞き、昨年11月、真光寺様にお伺いしました」

墓石の代わりに樹木を墓標とする樹木葬を行っている真光寺。この寺では人間だけでなく、人生の伴侶としてペットの埋葬も受け付けており、動物と暮らす人たちの中で話題となったこともある。

真光寺を訪れた亀井さんは、事務局スタッフへ自身の取り組みや活動を紹介した際、伽藍での作品展示の提案を受け、今回の開催実現に至った。

猫ブームに感じた“違和感”、その裏にある”捨て猫”問題

【捨て猫写真】ビニール傘の下で眠る無垢な猫(C)亀井拓也

関東を中心に、東北地方や南は八重山諸島まで取材のため足を運び、地域猫を撮影しているという亀井さん。そんな亀井さんが地域猫活動をはじめるきっかけとなったのは、一匹の飼い主のいない猫との出会いだ。

「5年ほど前、冬が近づく埼玉県のとある公園で、ベンチに座っていた私の膝に猫が乗ってきました。その当時はまだ地域猫という言葉も耳カット(不妊去勢済みのしるし)の意味さえも知りませんでした。その子は寒さに身を縮め、私が立ち上がろうとすると、行かないでほしいと言わんばかりに爪を立てるのです。

ちょうどその頃、世間では猫ブームが加速し始めたタイミングでした。そのブームと、目の前の光景とのギャップになんともいえぬ違和感を覚え、猫のためになにかできることはないかと考えたことが活動のきっかけです」

「かわいい」「いやされる」ともてはやされる一方で、過酷な環境の中を生きる野良猫や捨て猫が見過ごされていることに気づいた亀井さんは、現在では地域猫の撮影の傍ら、ボランティア活動や地域・行政への取材も継続的に行っているという。

捨て猫80匹の公園が「猫の聖地」と呼ばれ…地域猫問題のジレンマ

“この子が追いかけていくのはいつもここまでです またやさしい誰かがやってくるのを しずかに待ちます” (C)亀井拓也

今回の地域猫写真展では、飼い主のいない猫の四季折々の姿を写した作品約20点が展示されている。そのうちの約半数ほどは、千葉県内で撮影されたものだ。

昨今、捨て猫の絶えない公園は各地に数多くある。そのような中、撮影地の詳細については普段から積極的に公言することはないという。「“あそこに捨てれば世話をしてもらえるのでは”と考えた者たちが、新たに猫を遺棄することに繋がりかねない」という懸念からだ。

千葉県内では、飼い主のいない猫が80匹以上暮らす公園もある。そうした公園では、現在も多くの遺棄が発生し続けているなど、現場の事態は深刻だ。SNSやブログでは有志が「#僕らの居場所は言わにゃいで」のハッシュタグを使い、猫の撮影場所を公開しないよう呼びかけも行われている一方、飼い主のいない猫の多い場所を“猫の聖地”として取り上げる人も少なくない。地域猫活動には、情報発信が事態を悪化させるかもしれないというジレンマがつきまとっている。

「猫」はかわいい、でもそれだけじゃない

猫をはじめ、伴侶動物と呼ばれる生きものたちが、その容姿や仕草で人間にいやしをもたらすことを否定はできない。亀井さん自身、猫のかわいらしさにいやされることもあると話す。

「猫の写真やイベントで気分転換したり、パッと笑顔にさせてもらったりすることもあります。それらも猫の魅力を描写するひとつの方向性ですし、そういった催しを特に否定をするつもりもないのです。私の視点や表現するものとは相違している部分もあるかもしれませんが、いろいろな切り口や目線があってもいいのではと感じています」

同写真展の会期は2月9日(土)から3月10日(日)まで。最終日の3月10日(日)には、会場の真光寺にて地域猫をめぐる勉強会・フォーラムも開催される。

「今回の展示作品が、外で暮らさざるを得ない猫たちについてほんのわずかでも考えるきっかけになれば幸いです」と話す亀井さん。里山に佇む禅寺に展示された猫の写真は、「かわいい」の裏側にあるものへの問いかけのようだ。

“早朝、樹上で目を覚ました子がこちらを見つめます”(C)亀井拓也

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