ヨックモックの50年支える“お菓子と会話”の力

東京ウォーカー(全国版)

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製菓メーカーのヨックモックが今年で50周年を迎える。一度は食べたことがあるといわれる葉巻型クッキー「シガール」がお土産の定番品として親しまれる裏で、包装フィルムの切れやすさにこだわるなど徹底した品質管理で事業を拡大。現在はグループで年商200億円に迫るなど、老舗菓子メーカーとして盤石の地位を築いている。「シガール」のヒットの理由や50周年の取り組みについて同社代表取締役 藤縄武士社長へ話を聞くと、現在は「社長室でおやつタイム」というユニークな試みを行っていることがわかった。製菓メーカーとして、また社風としても、忙しい仕事の現場こそ“おやつの時間にコミュニケーション”を大事にしているようだ。

ヨックモック50周年事業第1弾である新社内福利制度「ま、フィーカ!」のお披露目会が実施された


50周年事業は…まさかの「社長室で雑談おやつタイム」


葉巻状クッキー「シガール」を代表とする洋菓子を製造販売するヨックモックは、設立50周年を迎え、設立以来初めてのことに挑戦する“ヨックモック50周年事業”をスタートさせる。

ヨックモックの看板商品といえば、くるくると巻かれた形状が特徴的な葉巻状クッキー「シガール」写真はイメージ


その第1弾として、初めての社内福利制度「ま、フィーカ!」を2月15日より導入。ヨックモックの社名はスウェーデンの地名が由来となっているということで、スウェーデン発祥の“おやつ時間”フィーカにちなみ、月に1度、15時にフィーカの時間を設けるという。

具体的には、月に1度社長室を解放し、ここで社長が“いま気になっているお菓子”などを用意。“おやつ時間”を設けて社員同士に語らい合ってもらうそうだ。ときには失敗しても「ま、フィーカ!(いいか)」、仕事に追われているけど「ま、フィーカ!(いいか)」、上司に怒られたけど「ま、フィーカ!(いいか)」と、ホッと一息ついてもらい、気持ちにゆとりを生み出して、次へのモチベーションへつなげてもらおうという考えだ。労働生産力の向上・社内コミュニケーションの活性化を見込む狙いがあるという。

製菓メーカーだからこその信念、「ビジネス現場におやつでガス抜きを」


今回並べられたのはヨックモック代表取締役 藤縄武士社長が現地で買ってきたスウェーデンのお菓子


藤縄社長に「ま、フィーカ!」では、どのような効果を期待しているのか詳しく聞いてみた。

藤縄:会社の業績が向上していくにしたがって、仕事の難易度も上がってきていると思うのですが、そういう時は、仕事のストレスも溜まってくるのではないかと思うんです。そこで、そのストレスを解放する場になればと。お菓子を媒介しながら、情報交換であったり、ガス抜きができる場になればいいなと思っています。自分もそうですが、ストレスが溜まってきたときというのはどうしても閉じこもりがちになるので。何かを使って外に発信することによって、それをリセットさせられるかもと。会社の中でストレスを抱えている人たちに、「ま、フィーカ!」の制度を通じて、仕事のやる気ややりがいを感じてもらいたいと思っています。

あと、人から話を聞くというのは、いろいろな学びがあると思うので、話を聞いて自分に生かしていただければ。改まった席でなくても意見交換が行われるような、そんな空間を目指しています。

――「ま、フィーカ!」では、例えばどんなテーマで語らい合う予定ですか?

藤縄:これまでも、自分が出張時に感じたことのシェアなどはなるべくするようにしてきたのですが、「ま、フィーカ!」のように社員が一堂に会したりする場では、より情報のシェアが進むと思うので、そういった話ができればと思っています。テーマは特に設けなくていいかなと思っています。

もともと週一の朝礼では、テーマを決めずに担当の人に話をしてもらっているのですが、地元の紹介や本の話も出たりしていて。「ま、フィーカ!」も自由に語らう場にできればと。

――第一回目となった今回の“雑談”は成功ですか?

藤縄:ちょっとみんなお菓子に集中しすぎかな、と思いましたが(笑)。“お菓子がある場所での会話”がメインになるように、というのはこれからの課題です。ちなみに今回出したスウェーデンのお菓子は、社名の由来になっている国を知る入り口になればと思って出しました。それを感じてもらえれば、ひとまず成功かなと思います。

今後もお菓子のテーマを絞って、買ってくる予定です。テーマのあるお菓子で会話を弾ませたり、お菓子を通して新たな発見をしてもらえたらいいなと思っています。

"おやつの時間"を活用した第1回目の「ま、フィーカ!」を楽しむ社員たち


「シガール」を手土産の定番に押し上げた厳しい品質管理と気配り


風通しのいい職場をつくるべく福利厚生を充実させる一方、仕事に対しては絶対に手を抜かない。そんな姿勢も藤縄社長へのインタビューから見えてきた。

――ヨックモックの商品といえば「シガール」は手土産として定番人気ですが、この“手土産の定番”といういまの地位はどのように築いてきたのでしょうか?

藤縄:ヨックモックのお菓子というのは、個人で召し上がる方もいるのですが、「ギフトとして贈られることが多いですね」といわれるんです。そこで弊社でよく話しているのが、「贈る方の気持ちを代弁できるようなお菓子作りを意識しよう」ということ。

贈られる方の気持ちをのせた体裁というのは大事にしていかないといけないと思っているんです。見た目はもちろん、工場の管理なども含めて。例えば、工場では自動で閉じたパッケージの端に、クッキーの粉が溜まることがあるのですが、空気が漏れたわけではないのに、そういったものは全部はじくんです。“誰かが誰かに贈るためのもの”だということを考えようということです。これは一例なのですが、品質管理というのは、工場での生産の場から非常に気を付けているんです。

食べやすいようにと“フィルムの縦割け性”も計算していますし、お菓子の風味を失わないようにとフィルムの素材にも気を配っており、そこまでフィルムにこだわっている企業はないんじゃないかという自負もあります。そういったことがいまの認知度につながっているのかもしれません。

生かされる女性社員の感性、「文房具」の販売も


プロ意識をもって細かい部分にまでとことんこだわる同社だが、一度議論になれば実にさまざまなアイデアが生まれるそう。

――他の会社とは違う特徴的な“社内文化”はありますか?

藤縄:他のお菓子屋さんの風土はあまり知らないのですが、今回の「ま、フィーカ!」についても、他の企画についても、結構現場や社員から上がってきていて、それをみんなで「いいね!」といって盛り上げて採用していっている感じなんです。こういったやり方は、他のお菓子屋さんではあまりないかもしれませんね。知っている限りでは、昔のお菓子屋さんは、缶のデザインやお菓子の味などは全部社長さんが決められているイメージなんですが、弊社は女性社員も多く、彼女たちの感性というのが生かされた企画も多いんですよ。

最近面白いと思ったのは、詳細はまだ明かせないのですが、文房具の「ヨッ具モッ具」。この企画を聞いたとき、会長は笑いながら「やろう!」「ネーミングもいいね!」と即、採用していました。ヨックモック50周年の企画の一つとして、ブランドが感じられるものを作る予定です。現在デザイン案を考えているところですが、すごくかわいくなると思います。文房具の販売は初めてなんですよ。

――ヨックモックではこれまでにも、他の会社にないような制度を導入したことはありますか?

藤縄:自己啓発制度は充実させていて、利用する人も多いです。とても種類が多くて、5万円のなかで好きなものをやっていただいています。筆ペンや英会話や簿記などですね。

福利厚生では、社員旅行を3年に1回。私も来週シンガポールへ行くんですが、ラスベガスやオーストラリアなどへ行っています。現地では、お店へ行ってヨックモックの商品が並んでいるのをみんなで見に行ったりもしていて。工場は栃木にあって、なかなか海外に行く機会がない方もいるのですが、実際にどこで売られているかを見て、すごく喜んでくれているようです。工場の方、販売の方が集まることというのはなかなかないので、夜は車座になって意見交換をしたり。ここも情報交換の場にもなっています。 

同社が"コミュニケーション"をいかに大事にしているかということが伝わってきた今回のインタビュー。"おやつの時間"を活用した第1回目の「ま、フィーカ!」を楽しんだ社員たちからは笑顔があふれていた。

平井あゆみ

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