名優2人の愛すべき珍道中! 極上の”泣き笑い”で映画賞を席巻する実話ドラマ<連載/ウワサの映画 Vol.74>
東海ウォーカー
アカデミー賞で作品賞・主演男優賞・助演男優賞など5部門にノミネートされている話題作「グリーンブック」。1960年代のアメリカ南部(ゴリゴリの差別社会!)を旅した”高貴な黒人と、彼に雇われたチンピラ風白人庶民”の実話です。南部では”逆転の図”な2人が、ギャップしかない道中で友情を育んでいく姿は永遠に見ていられる(笑)。破天荒なヴィゴ・モーテンセンと孤高のマハーシャラ・アリは、私史上最高のバディだっ!

1962年、NY。一流ナイトクラブ・コパカバーナの用心棒トニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、ガサツで無学ながら、得意のハッタリと腕っぷしの強さで家族や周囲から頼りにされています。黒人に偏見を持つ家庭で育ったトニーでしたが、コパカバーナが改装のため閉店となる2ヵ月間、黒人ピアニストであるドクター・ドナルド・シャーリー(マハーシャラ・アリ)のコンサートツアーの運転手として雇われることに! 雇い主は、大金持ちで、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才。だか彼は、なぜか差別が色濃く危険な南部を目指しており、2人は黒人用旅行ガイド〈グリーンブック〉を頼りに出発します。衝突ばかりの日々を経て、トニーはドクター・シャーリーの美しい音楽に魅せられ、ドクター・シャーリーはどんなトラブルも解決するトニーに信頼を寄せるように。そして、笑いが絶えなくなった旅も終盤を迎え、2人はツアーの最後の街へ。しかしそのコンサート会場は、悪名高い歴史を持つレストランだったのでした…。


”男気”にホレちゃったよ、ヴィゴ! 口が達者ゆえに「リップ」と呼ばれるイタリア系の男に扮し、3度目のアカデミー賞主演男優賞ノミネートです。14kg増量してお腹ぽっこりでも、頼れる王様・アラゴルンの面影は十分(笑)。セレブ&マフィア御用達のコパカバーナで問題を起こす客をボコり、黒人が使ったコップを捨てたりと粗野全開ですが、痛快なまでの素直さとユーモアで「友達になりたい」と思わせちゃう名演技です。父ちゃんの教えだという「常に100%の力を出せ、食う時も最後の食事と思え」っつう生き方が潔い~。

ドクター・シャーリー役は、「ムーンライト」でアカデミー助演男優賞を受賞し、本作でも同賞にノミネートされたマハーシャラ・アリ。9歳でレニングラード音楽院に入学し、ケネディ家とも親交のある超エリートな天才を演じてます。その上品で威厳に満ちた佇まいが意外性抜群でかっこいいわぁ。お高くとまっているけれど、黒人の生活も文化も知らないコンプレックスと孤独はずっしり重い…。複雑な”殻”がトニーとの化学反応によって破られていく過程が繊細で、苦難しかない南部ツアーを決行した真意に胸を打たれます。

極上の笑いに妙味をもたらすのが、黒人の虐げられぶりを目の当たりにした2人の心境と関係性の変化。南部では、VIPであっても黒人は黒人専用の安宿にしか泊まれず、日没後には外出もできない…。「ドクター・シャーリーを守ろう」とトニーの心に火が付く中で、正反対の2人が”お互いにないもの”を与え合うようになっていくのです。彼らが逮捕されるシーンに代表される"緊張感"もいい具合に効いてます。


傑作ラブコメ「メリーに首ったけ」などで知られるファレリー兄弟。そのお兄ちゃん、ピーター・ファレリー監督が初めて”マジメなコメディ”を撮り上げました。おバカに徹して(でも、意外と深い)磨き抜いた”笑い”は、今作で、尊厳を勝ち取る爽快な武器になっていた。「あー、ず~っと2人と旅していたかったなぁ…」。そんな淋しい気持ちを味わわせた直後の、クリスマスの夜にご期待を。あのラスト、素敵すぎる。【東海ウォーカー】
【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします! 最近のお気に入りは「バンブルビー」(3月22日公開)のトラヴィス・ナイト監督!
おおまえ
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